ブルゴーニュの銘醸ワイン”レ・ザムルーズ”の名手「ドメーヌ・ロベール・グロフィエ」当主のニコラ・グロフィエ氏が昨年11月に来日。独自の理論で造られる最高峰の“レ・ザムルーズ”、「シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ ザルジル」の美しさの秘密を聞いた

BY KIMIKO ANZAI

 ワイン愛好家垂涎のワインのひとつがブルゴーニュの“レ・ザムルーズ”(プルミエ・クリュ/1級畑)だ。華やかなアロマとシルキーな飲み心地、「恋人たち」というロマンティックな名を持つこのワインは、コート・ド・ニュイ地区シャンボール・ミジュニー村で生まれる。

画像: 「ロベール・グロフィエ シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ ザルジル 2022」。フランス・ブルゴーニュ地方。ピノ・ノワール100%。フランボワーズ、チェリー、スミレ、リコリスなど複雑な香り。ふっくら、豊かな果実味とピュアな酸味、シルキーなタンニンで、まさしく“夢のような味” 750ml ¥242,000 COURTESY OF ROBERT GROFFIER

「ロベール・グロフィエ シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ ザルジル 2022」。フランス・ブルゴーニュ地方。ピノ・ノワール100%。フランボワーズ、チェリー、スミレ、リコリスなど複雑な香り。ふっくら、豊かな果実味とピュアな酸味、シルキーなタンニンで、まさしく“夢のような味”
750ml ¥242,000

COURTESY OF ROBERT GROFFIER

“レ・ザムルーズ”の畑の総面積は5.4ヘクタールで、このうち、最大の1.2ヘクタールを所有するのが「ドメーヌ・ロベール・グロフィエ」だ。ブドウ栽培農家として200年以上の歴史を持ち、“レ・ザムルーズ”の畑は1933年に入手し、丹精込めて育てた上質なブドウをネゴシアン(ワインの仲卸業者)に売っていたという。だが。ロベール・グロフィエ氏が1973年からワイン造りを始めてからその評価は年々高まり、“レ・ザムルーズ”のトップ生産者のひとつとなった。

 現在、ドメーヌを率いるのはロベール氏の孫に当たるニコラ・グロフィエ氏だ。
「所有している畑は全部で8ヘクタール。この200年間、代々の畑を祖先と同じように地道に守っています。でも、同じ畑といえども天候は毎年違うので、ブドウの出来も違う。今も畑のことを理解しようと、試行錯誤の日々です」とにこやかに語る。継承されてきたドメーヌのスタイルをきちんと守り、自分たちのワインを愛してくれる人々に届ける。それが自分の役割だと話す。
「私が受け継いだのは、いわば“ブルゴーニュワインの伝統”。それを大切にしたいと思っています」。
 その言葉通り、「ロベール・グロフィエ シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ ザルジル 2022」は、繊細な果実味透明感に満ちた酸味で、タンニンは絹のようになめらか。すっと体に馴染むような優しい飲み口ながら、ブーケのような華やかな香りと儚く美しい味わいが心に長い余韻を残す。

画像: 「ロベール・グロフィエ」4代目当主のニコラ・クロフィエ氏。「テロワールをいかに美しく証言するかが自分の使命」と語る。日本文化にも興味を持ち、日本の食材で一番好きなのはなんとワサビ。「おろしたてのワサビに興味があります(笑)」 COURTESY OF ROBERT GROFFIER

「ロベール・グロフィエ」4代目当主のニコラ・クロフィエ氏。「テロワールをいかに美しく証言するかが自分の使命」と語る。日本文化にも興味を持ち、日本の食材で一番好きなのはなんとワサビ。「おろしたてのワサビに興味があります(笑)」

COURTESY OF ROBERT GROFFIER

「ロベール・グロフィエ」のワイン造りの特徴は、ほかの生産者とはひと味違った全房発酵を用いていることだろう。全房発酵とは、多くの生産者が発酵前にブドウの梗を取り除き、果実だけを発酵させるところを、あえて茎がついたブドウの房を丸ごと醸すことで独特の風味がワインに生まれるという。また、全房発酵を行う生産者の多くは、「ブドウの出来がよい年に行う」というが、グロフィエ氏はこれとは真逆の理論で全房発酵を行う。
「全房発酵というのは、私にとってはエッセンスのようなもの。ブドウの出来がパーフェクトであれば、ブドウのパワーだけで素晴らしいワインができるから、全房発酵など行う必要はありません。ですが、『何かが足りない』と思った時は、ほんの少しだけ“香水をつける感覚”で全房発酵を取り入れます。ですから、全房発酵を行うか行わないか、年によって違います。また、行うとしても、全体のブドウの何パーセントを全房発酵にするかも毎年変わります」とグロフィエ氏。すべては自身の感覚が頼りだという。ちなみに、「ロベール・グロフィエ シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ザムルーズ ザルジル 2022」は全体の1/3を全房発酵で仕上げたという。

 彼は続ける。
「全房発酵は、通常梗が茶色になったブドウを使いますが、私はあえて梗の青いブドウを使います。なぜなら、青い梗には樹液が生きているから。『青い茎は完熟しておらず、青っぽい香りがつく』と考えられていますが、私の考えは違う。ブドウの実にない要素を梗で補うことで、フローラルで軽やかになると考えています」。
 

画像: 「ラ・グラース・デ・ザルジル」の畑は粘土質で急斜面。濃縮感がありながらも、滑らかで早めに飲めるスタイルのワインができるという PHOTOGRAPH BY NICOLAS GROFFIER

「ラ・グラース・デ・ザルジル」の畑は粘土質で急斜面。濃縮感がありながらも、滑らかで早めに飲めるスタイルのワインができるという

PHOTOGRAPH BY NICOLAS GROFFIER

 ワイン造りの理論は生産者によって違うが、グロフィエ氏の斬新な理論には新鮮な驚きを感じる。だが、彼の言葉通り、香りはアロマティックで、味わいはこの上なく優美で官能的。“レ・ザムルーズ”の真骨頂といっても過言ではない。
 特別な畑、信念に基づいて造られた美しいワインは唯一無二の存在感を放つ。特別な日、そして大切な人々と過ごす時間のために、このワインは覚えておきたい。

問い合わせ
ラック・コーポレーション
TEL: 03-3586-7501

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