犯罪者、あるいは容疑者と対峙したときの社会、そして人間のあり方を掘り下げる2本の映画が公開される。どちらも実在の人物や事件をモデルに描かれ、もし自分だったらどう行動するかを深く考えさせられる作品だ

BY REIKO KUBO

『ディア・ドクター』や『永い言い訳』など、今や日本映画界を代表する西川美和監督の5年ぶりの新作『すばらしき世界』がいよいよ公開となる。佐木隆三が実在の人物をモデルに描いた1990年刊行の小説「身分帳」を原案に、舞台を現代に移し、殺人の罪で刑務所に13年服役していた男が上京し更生の道を歩もうとする物語だ。西川監督が元ヤクザの主人公・三上を託したのは、映画を志した時から憧れだったという役所広司。身元引受人となる弁護士に橋爪功、その妻に梶芽衣子、三上と懇意になるスーパーマーケットの店長に六角精児など、芸達者が顔を揃えて三上の再スタートを支える群像を形成する。

画像: “元殺人犯”である三上(役所広司)にとまどいながら対峙する、若いテレビマンを仲野太賀(左)が好演。役所広司は、今作でシカゴ国際映画祭インターナショナルコンペティション部門の最優秀演技賞を受賞するなど公開前から評判を呼んでいる © 佐木隆三 / 2021「すばらしき世界」製作委員会

“元殺人犯”である三上(役所広司)にとまどいながら対峙する、若いテレビマンを仲野太賀(左)が好演。役所広司は、今作でシカゴ国際映画祭インターナショナルコンペティション部門の最優秀演技賞を受賞するなど公開前から評判を呼んでいる
© 佐木隆三 / 2021「すばらしき世界」製作委員会

 さらに三上についてのテレビ企画を携えて近づいてくるのが、長澤まさみ演じるテレビプロデューサーと、彼女の指示のもと三上に張り付く青年・津乃田。仲野太賀扮するこの青年は、殺人犯というレッテルにもがき苦しむ三上に恐る恐る近づき、不器用に七転び八起きする姿に心くすぐられ、孤独な心を少しずつ理解して寄り添ってゆく。そんな津乃田の視線が、元殺人犯を前にした観客の視線と重なる。日本という社会は一度失敗した人間に不寛容になりがちだが、できるところからでも手を差し伸べれば何かが変わるかもしれないのに―― そんな西川監督の境地が、役所広司が可笑しく色っぽく演じるダメ男の奮闘物語から溢れ出し、切ないラストは涙で霞む。

画像: 映画『すばらしき世界』本予告 編 配給:ワーナー・ブラザース映画 youtu.be

映画『すばらしき世界』本予告 編
配給:ワーナー・ブラザース映画

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『すばらしき世界』
2021年2月11日(木・祝)より全国公開
公式サイト

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