BY KYOKO SEKINE
東京・新宿の高層ビル街で、ひときわ目立つレンガ色の建物が「ハイアット リージェンシー 東京」だ。“老舗”と称されるにはもう少し時が必要かもしれないが、1980年9月、光り輝くロビーのシャンデリアとともに「ホテルセンチュリー・ハイアット」として開業。創業38年目を迎えようという堂々たるホテルである。
2007年には名称が変わって「ハイアット リージェンシー 東京」にリブランドされ、さらに飛躍を遂げた。今から6年ほど前、取材に応じてくれたPR担当者の答えが当時の取材ノートに残っている。「ホテル名の変更でもっとも変わったことは?」という質問に、「インテリアも含め、よりグローバルな雰囲気になりました。外国人ゲストも確実に増えています」と。
今回、改めて同じような質問をしたところ、「現在は、世界的なブランドホテルとして外国人ゲストが約8割弱を占め、ゲストの国籍も圧倒的に多様化しています」との答えが返った。すっかりインターナショナルブランドとしての深みも強みも定着している様子だ。客室稼働率の高さはもちろん、各レストランも好調な数字をあげているという。
前述のように、エントランスを入ると広々としたロビーが広がり、吹き抜けの天井には豪華絢爛たるシャンデリアが光り輝いている。そして、壁際に設置されたガラス張りのエレベーターがひっきりなしに上下し、ゲストを客室やレストランへと運ぶ姿が見える。開業当初の80年代、東京のどこにもなかったこうしたゴージャスな内装は、マスコミにも大きくとり上げられ、外国で暮らしていた私自身も、一時帰国の際にはロビー見物に行ったものだ。バブルの華やいだ時代やその後の長い経済低迷時代を乗り越えて、このホテルはコツコツとゲストの信頼を積み重ねてきた。今やこれほど大がかりなロビーを持つ新たなホテルはなく、小規模なプライバシー感が流行りだが、こうした豪華ロビーはかえって斬新にさえ見える。
そんなホテル最強の戦略は、それぞれのレストランで提供される料理にある。「おいしい食事を提供することで、幸福ならぬ“口福(こうふく)”をお届けする」というコンセプトは、食事をすることで元気になり、幸せになってほしいというホテルの願いを表している。たとえばエントランスと同じ階にある「カフェ」は、その料理が人気で予約をとりにくいことも多く、気軽なレストランとして、またカフェ本来のくつろぎの場としてもにぎわっている。
また、フレンチレストラン「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」では、ミシュラン三ツ星のシェフ、トロワグロが創造する美食の世界が展開されている。ディナーだけではなくランチでもバラエティ豊かなメニューが楽しめる中国料理「翡翠宮」。ほかにも酒肴、和食、鮨、ラウンジなど、自慢の食処がずらりと揃う。
国際的なブランドホテルでありながら、メイド・イン・ジャパンの雰囲気の中にどこか安心感を感じるのは、私だけだろうか。
ハイアット リージェンシー 東京(HYATT REGENCY TOKYO)
住所:東京都新宿区西新宿2-7-2
予約電話: 03(3348)1234
客室:全746室
料金:¥34,000~
(ルーム1泊1名の料金。消費税・サービス料別)
※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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