せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.16>

New Tokyo Hotel Story “PALACE HOTEL TOKYO”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第16回目は、華麗なる変身で得た信頼と、ジャパンメイドの美意識が光る「パレスホテル東京」

BY KYOKO SEKINE

 東京都心の一等地に立つ「パレスホテル東京」は、外苑のお濠に面した稀有な環境と、醸し出される高級ホテルの品格を満喫できるとあって、厳しい目をもつホテル通の女性客からも大いに支持されている。館内の1階を占めるラウンジエリアは週末でなくともリゾートホテルのようににぎわい、まぶしいほどの陽光が差し込む空間の中、ゲストは開放感に満たされて過ごすことができる。

画像: エントランスのドアを開けるとこの優雅なたたずまい。お濠と緑を感じるメインロビーエリア。宿泊ゲスト用のロビーは通路を隔てて隣接

エントランスのドアを開けるとこの優雅なたたずまい。お濠と緑を感じるメインロビーエリア。宿泊ゲスト用のロビーは通路を隔てて隣接

 そんな「パレスホテル東京」を語るには、ホテルの歴史を少したどる必要があろう。このホテルはそもそも、1947年に創業した国有国営の「ホテルテート」が前身であった。資料には「GHQ (連合軍最高司令部) の命令によりバイヤー専用の国有国営のホテルとして建てられた」と記されている。「パレスホテル」となったのは1961年のこと。創業当時からさまざまな伝説が生まれ、その建築も受賞歴をもつなど、当時から東京を代表するホテルのひとつだった。やがて誰もが知る一大リノベーションが始まったのは、2009年2月1日。

 3年間のホテルクローズを経て、2012年5月17日に美しいホテルが完成、新たな門出を迎えることとなった。以前のパレスホテル時代を知り、若くして総支配人に就任した渡部 勝氏は、「思い切った改革をしないと何も変わらない」と、改装前に熱く議論したことを回想する。未来を見つめたリノベーションをと、誰もが望んだ改装だったのである。「不得意のないホテルにしたい。地道でありたい。不器用でも、じっくりと取り組むことが未来につながる」とは同氏の言葉だ。

画像: ホテル南側の和田倉噴水公園に面するグランドデラックスの客室。バルコニー付きの客室は、都心の高層ホテルでは珍しい

ホテル南側の和田倉噴水公園に面するグランドデラックスの客室。バルコニー付きの客室は、都心の高層ホテルでは珍しい

画像: 1階にあるグランド キッチンのテラス席。春を迎え、お濠の水面を間近に見る席はなんとも快適

1階にあるグランド キッチンのテラス席。春を迎え、お濠の水面を間近に見る席はなんとも快適

 確かに、大がかりなリノベーションはある意味“賭け”でもあろう。長いあいだ培ったもてなしの極意も、それを礎としながら時代に見合うようスキルアップすることも必要だ。日本ならではのキメ細やかさや真摯な対応も、このホテルの魅力である。リノベーションにあたって重要なのは、こうした必須のバランスをいかにうまく舵取りできるか、であった。生まれ変わった「パレスホテル東京」には、スタッフとゲストの両方に、ホテルが積み重ねた歴史とはまた別の、新たな信頼感が生まれているような気がする。       

画像: デラックスルームのひとつ。シンプルモダンで使い勝手のいい客室は高い人気を誇る

デラックスルームのひとつ。シンプルモダンで使い勝手のいい客室は高い人気を誇る

画像: 全館で約700点所蔵するアートコレクションのひとつ。 内海聖史(satoshi uchiumi)作「shikisai no shita」

全館で約700点所蔵するアートコレクションのひとつ。
内海聖史(satoshi uchiumi)作「shikisai no shita」

 全290室が揃う客室のうち、スイートルームは12室。だが、エントリーレベルの部屋<45㎡>でもじゅうぶんに快適だ。さらに、都心の高層ホテルでは珍しいバルコニー付きの客室を予約すれば、気分は爽快、とても新鮮な滞在ができる。どの客室も自然との調和が考えられ、優しいアースカラーや温かみのあるカーキ色のカーペットなど、穏やかな空気感に包まれている。館内にしつらえたアートが約700点というのも美術愛好家にはたまらないだろう。「フォーブス・トラベルガイド」のホテル部門にて3年連続の5つ星を獲得という名誉も、ホテルにとって誇るべきごほうびである。

画像: 食通や旧パレスホテル時代からのファンも通う、キュイジーヌ・モダンのフレンチレストラン「クラウン」 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF PALACE HOTEL TOKYO

食通や旧パレスホテル時代からのファンも通う、キュイジーヌ・モダンのフレンチレストラン「クラウン」
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF PALACE HOTEL TOKYO

 そして忘れてならないのは、夕食はもちろん、昼食にもジャケット着用を促すドレスコードを持つメインダイニング「クラウン」の存在だ。カジュアル志向一辺倒の今の時代に、このレストランを利用するときには背筋が伸びる。やはり高級ホテルには最低限のマナーが必要なのだと実感する。言わずとも自然と発される「クラウン」の潔さは、シェフやソムリエ、サービススタッフなど専門職に敬意を払い、食を愛でることに始まるヨーロッパの伝統を体現したものであろう。希少な高級レストランとして、その伝統を守り続けて欲しい。

パレスホテル東京(PALACE HOTEL TOKYO)

住所:東京都千代田区丸の内1-1-1
予約電話: 03(3211)5211
客室:全290室
料金:¥70,000~
(1泊1室2名の料金。サービス料・消費税別) 
 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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