BY YUKA OKADA
ギルトフリーの料理とカクテルを対照的なインテリアで味わう
「シックスセンシズ ダクストン」
一方、デザイナーズホテルを愛好する旅人なら、「シックスセンシズ マックスウェル」に先駆けて2018年4月に開業、大通りのタンジョンパガーロードを挟んだエリアにある「シックスセンシズ ダクストン」をおすすめしたい。
こちらは1970年代後半から持ち前のフュージョンテイストを打ち出し、各国でホテルを手がけてきたロンドンの女性インテリアデザイナーで、ガルシアよりも年上の大ベテラン、アヌシュカ・ヘンペルが担当。ネオンも華やかなチャイナタウン界隈のホテルらしい、大胆でエキゾチックなインテリアが出迎えてくれる。
ここ「シックスセンシズ ダクストン」で体験したいのは、6月にレストラン業界のアカデミー賞こと「World’s 50 Best Restaurants」のアワードセレモニーがアジアで初めて開催され、美食の国としても一層注目を集めるシンガポールのガストロノミー。シックスセンシズでは国を問わず、六感で味わう“Eat With Six Senses”を掲げ、できる限りオーガニック、かつサスティナビリティに配慮して調達した食材を使用している。
こちらのレストラン&バー「Yellow Pot(イエロー ポット)」では、脂っこさとは無縁のギフトフリーなモダンチャイニーズ料理を提供。シェフのセバスチャン・ゴーは、フェアモント シンガポールのクラシックなダイニング「セチュアン コート&キッチン」で四川料理と広東料理を習得。農業を営んでいた祖父母と暮らした少年時代、畑から直送された食材の力とサステイナブルを実体験していたというだけあって、必要な食材だけをなるべく農家から直接仕入れ、本来の風味を最大限引き出すレパートリーを揃えている。
実際に食してみると、確かに中華料理とは思えない軽やかさで、プレゼンテーションもいたってシンプル。どの皿にも野菜とハーブの存在感を効かせている。シナモンとクローブのエッセンスで49時間煮込むことで食べやすくヘルシーに仕上げた春巻きの鴨、ヒッコリーの薪を使ってオーブンで焼くことでクリスピーな食感を引き出したローストダックなどの肉料理も印象的だった。
オーダーメイドのステンドグラスが天井と壁面に配された併設のバーエリアは、アジアを代表する名高いバーをいくつも擁するシンガポールのナイトカルチャーを体現する存在感。中国のハーブとボタニカルをアクセントにした個性的なカクテルが充実している。滞在は「シックスセンシズ マックスウェル」でも、夕方に「シックスセンシズ ダクストン」でカクテルを一杯という使い方も粋。そんなふうに、必要に応じて行ったり来たりしながら両方のホテルのいいとこ取りをするのが、「シックスセンシズ シンガポール」にステイする醍醐味ともいえる。
「イエロー ポット」でのディナーの翌朝は、もれなく爽やかな空腹を感じて起きることになるので、「シックスセンシズ マックスウェル」の通りを挟んですぐ隣、タンジョンパガー地区のランドマークでもある庶民の台所、 “ホーカー”(いわゆる屋台村)の「マックスウェル フードセンター」に繰り出してみても。ギルトフリーなチャイニーズの翌日にがっつり屋台飯も気が引けなくもないが、部屋のデスクに置かれたホテルからのウェルカムレターには「Recommended:Lunch at the local MaxwellMarket – Opposite the Six Senses Maxwell」としっかり書いてあった。ミシュランスターの店だけでないサジェスチョンに、ラグジュアリー一辺倒ではないコンシェルジュのセンスが垣間見えた。
もしもあなたがインスタグラマーなら、そんな滞在中の写真を「#sixsensessingapore」とハッシュタグを付けて、投稿してみるといい。ほどなく界隈のレストランが「いいね」をしてくるだろう。「うちのレストランにもぜひ食べに来てください」と言わんばかりのアピールは、ガストロノミーにおけるシンガポールの勢いを肌で感じさせてくれるはずである。