BY YUMIKO TAKAYAMA, PHOTOGRAPHS BY TETSUYA ITO
夕食は新潟産の食材にこだわり、「雪国GASTRONOMY」と称して里山の恵みを生かしたフルコース。例えば、日本海の天然太刀魚は根菜の細切りをたっぷり入れた郷土料理、「沢煮椀」に。「雪国とせ」は雪室で熟成させた保存食の盛り合わせだ。ずいきやふきの塩漬けや、菊花のおひたしなど滋味深いものばかり。メインディッシュは地元では「立て焼き」と呼ばれる「囲炉裏の炭焼き」でA5ランクの新潟牛を炙ったもの。脂が甘くてやわらかく、旨味たっぷり。
そして特別栽培のコシヒカリのおいしさは、「さすが魚沼!」と思わず声をあげたくなるほど。ピンとたった米粒はつやつやで、噛むと甘く、旨味が口のなかに広がっていく。
ここでは、四季を通して雪国文化に触れられるよう、さまざまなアクティビティを用意している。今回、体験したのは「GASTRONOMYワークショップ」。地元のお母さんに雪国の伝統的な家庭料理を教わりながら、冬の時期のための保存食や、四季の食材について学べるのは稀有な体験だ。
今回、テーブルに並んだもののなかには「あけびのつるのおひたし」のような珍しいものも。シャキシャキとした食感で柔らかく、独特の苦味があり後を引く。あけびの新芽の収穫に、時間と労力がかかることから、今では地元でもめったに食べられない貴重ものだとか。
また、「ryugon」のユニークな試みは、宿の中だけでなく、周辺地域の自然や文化、そして地元企業や商店と連携し、地元の人たちと接しながら魚沼の魅力をより知ることができることだ。たとえば、歩くだけでご利益があるという「雲洞庵」を専門のガイドとともにまわったり、「八海山」で有名な「八海醸造」の日本酒ができるまでの工程を見学したり、正岡子規に愛された老舗「今成漬物店」を訪ねて、漬物を試食しながら女将さんの話に耳を傾けたり――。
ローカルを知ることでその土地に愛着がわき、「ryugon」の滞在をより特別なものにしてくれる。高級温泉リゾートでありながら、日本人の心の故郷にもなりそうな、新しいスタイルの宿の誕生だ。
ryugon
住所:新潟県南魚沼市坂戸1-6
料金:¥22,700〜(Villa Suite<離れ>露天風呂付和洋室 1名2食付(夕食・朝食)、サービス料込、消費税・入湯税別 )
電話:︎025(772)3470
公式サイト