自身が手がけるハンドバッグとアクセサリーのライン

『セリーヌ・ディオン・コレクション』の発売を記念して

モントリオールで開かれたイベントに出席したセリーヌ・ディオン


 アニック・チェナード(38歳)は、セリーヌ・ディオンのコンサートに21回も行った。右肩には、流れるような美しい髪をしたディオンの顔のタトゥーが入っている。先日、彼女にとっての女王様に会えるかもしれないというわずかな希望を抱いて、折りたたみの椅子とポンチョを持参してカナダ・モントリオールの街頭で丸一日を過ごした。


 こんなに長い時間待つことを、チェナードはなんとも思わないのだろうか?「『こんなに待つ』ってどういう意味よ」とチェナードは憤慨したように言う。「20回以上もコンサートで彼女を見てるけど、実際に会ったことは一度もないんだから!」


 その日は、ハンドバッグとアクセサリーのラインである『セリーヌ・ディオン・コレクション』の発表会にディオンが登場することになっていた。チェナードは、その姿を一目見ようと徹夜した1,000人以上のファンのひとりだ。こうした状況をディオンはひどく心配していた。ファンたちがきちんとご飯を食べているのか、小さな子どもがいはしないか、こんなに長い時間、待っていて大丈夫なのか。結局みんな、バッグを口実に、ディオンに会うために待っているのだ。


 ディオンは店頭に目を向けた。窓の向こうからファンがのぞき込んでいる。「みんな、私のことを歌手以上の存在として慕ってくれている」と彼女は言う。「結婚式で私の曲を流し、誰かと別れた時に私の曲を聴き、再婚するときにもまた私の別の曲を流し、私の歌を自分の子供の子守唄に歌ってくれるのよ」


 モントリオールのとてもラッキーな100人のファンは、バッグを入手することができた(ちなみにその売上金は全額、市内の小児科・産科病院に寄付される)。しかしそれ以上にファンが喜んだのは、ディオンとの緊張の30秒間の対面を果せたことだ。抱きつく者もいれば、号泣する者、昏睡状態に陥った時のつらい経験を話す者もいた。順番を待つ店頭の行列は、なかなか進まなかった。



アニック・チェナードは、

セリーヌ・ディオンのコンサートを21回観ていて、

右肩にはディオンのタトゥーを入れている



「これはファンのせいじゃない」とセリーヌのマネージメント・チームの一員である兄のミシェルは、妹を見ながら言った。「セリーヌがひとりひとりに丁寧に対応しているからなんだ」


 こうしたファンとの交流は、たいてい、これからキャリアを積んでいく新人か、ファンを手放したくないと思っているパフォーマーがするものだ。しかし、ディオンの場合はそうではない。


  彼女は、自分のすべてを惜しみなく捧げる。偉そうな口のきき方をするつもりもないし、マザー・テレサのようなことを言うつもりもない。「でも『あまり話しすぎないように』と言われているの。体調を崩すかもしれないからって」と彼女は言う。しかし感情を抑えておとなしくしているというのは、ディオンには至難の業だ。彼女が歌う姿や、公の場で話す様子を見たことがある人なら、それも理解できるだろう。あるいはひたすら頬の涙をぬぐいながら、2005年8月にアメリカ南東部を襲ったハリケーン・カトリーナの被害について語った彼女の姿を知っていれば(このときのインタビュー動画は、2017年8月にハリケーン・ハービーが引き起こしたテキサス州・ヒューストン市での洪水被害を受けて、再び拡散されている)。