BY HAYLEY KRISCHER, PHOTOGRAPHS BY RENAUD PHILIPE, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)
「新しくスポーツや趣味を始める人もいる。人生を大きく変えるために、どこか新しい場所に引っ越す人もいる」とディオンのマネージメントチームのデイブ・プラテルは言う。「セリーヌは、以前からファッションに強い関心をもち、研究してきた。このところ、その愛がいっそう強まってきたように見えるね。ファッションは、彼女が自分自身を解放することのできる世界なんだ」
「彼女はプラダのような高級ブランドを目指しているわけではない」。旅行カバンとハンドバッグを販売するブガッティ・グループのCEO、アンドリュー・ハッテムは言う。今回のラインは、彼らがディオンとコラボして立ち上げたものだ。「ファンの手が届くような価格帯じゃないといけないからね」
アメリカの大型百貨店チェーンであるノードストロームで販売予定のバッグの中心価格帯は、149〜299ドル。ショルダーバッグなど、100ドル以下のものもある。イタリア製の限定コレクションに関しては、600〜1,500ドルという価格帯だ。

「私は自分をささげようと思ったら、惜しみなくすべてをささげるの」とディオンは言う
ディオンはこの夏、チケットが完売となったヨーロッパツアーの途中、パリのル ロイヤル モンソー ホテルに宿泊していた。滞在の間、彼女が正面玄関を通り抜けるなにげない光景は、まるでひとりの女性によるファッションショーのように見えた。ある日はビアンカ・ジャガーを彷彿させるラルフ&ルッソの白いパンツスーツに、ケープとハットを合わせた。別の日には、ジバンシィのレザーのオーバーオールに身を包み、足元にはカニエ・ウェストがデザインを手がけたジュゼッペ・ザノッティ。真珠が散りばめられたヒールだ。
「もうすぐ50歳。今まではずっと私を支えてくれるような人がいたけれど、今はもう昔とは違うのよ」
2ヶ月間の滞在を終えてホテルを発つとき、スタッフたちが並んで彼女を見送った。ディオンと双子の息子たちは、別れ際、大量の銀色の紙吹雪に包まれてホテルを後にした。
「私にとって何が変わったかといえば、自分自身のために強くありたいと思うようになったこと。自分が強くあれば、子どもたちも強くなれるはず」と彼女は言う。「いつだって、思い通りにいくとは限らないものよ。ときに人生は試練を自分に課すのだから」