さまざまな分野で日本の知の世界を引っ張る4人の女性たち。研究への熱意と自信に満ちた彼女たちの姿は輝いている

PHOTOGRAPHS BY YASUTOMO EBISU, STYLED BY NAOKO SHIINA, EDITED BY JUN ISHIDA

画像: ディオール初の女性アーティスティック ディレクター、マリア・グラツィア・キウリによるバージャケット。 「黒はよほどいいものを着ないと地味になってしまうのですが、さすがディオール、ラインも美しい」と中室さん。 ジャケット ¥430,000、Tシャツ ¥97,000、パンツ ¥170,000、イヤリング ¥48,000 クリスチャン ディオール (ディオール) フリーダイヤル: 0120-02-1947 HAIR BY KOTARO AT SENSE OF HUMOUR, MAKEUP BY FUSAKO AT OTA OFFICE

ディオール初の女性アーティスティック ディレクター、マリア・グラツィア・キウリによるバージャケット。
「黒はよほどいいものを着ないと地味になってしまうのですが、さすがディオール、ラインも美しい」と中室さん。
ジャケット ¥430,000、Tシャツ ¥97,000、パンツ ¥170,000、イヤリング ¥48,000
クリスチャン ディオール
(ディオール)
フリーダイヤル: 0120-02-1947
HAIR BY KOTARO AT SENSE OF HUMOUR, MAKEUP BY FUSAKO AT OTA OFFICE

 教育に経済学の手法を持ち込み、世の中で“定石”とされる教育方法に対して、データに基づく異議を唱えた著書『「学力」の経済学』がベストセラーとなった中室牧子さん。気鋭の教育経済学者は、大学卒業後、日本銀行、世界銀行でのキャリアを経て、研究者への道に進んだ。教育に興味を持ち始めたのは世界銀行時代。教育や医療分野への関心の高い欧州・中央アジア地域を担当したのがきっかけだった。

「教育にお金を使えば成果が上がるという一般認識がありましたが、実際のデータを見るとそうでもない。お金を使うならば有効活用したほうがいいし、どうすれば成果を実現できるかを考えるようになりました。そんなときに国際開発の現場で注目されたのが、使ったお金の効果を検証する“効果測定”という考え方でした」。日本の教育の現状に対しては、「期待された効果がきちんと検証されず、うまくいかなければまた次の政策と、流行のようにまわって終わるのが残念。もっとアカデミックな知識が政策決定の場でも活かされてほしい」と述べる。

現在、教壇に立つ大学へはキャンパスでも目立つファッショナブルな装いで通う。「ファッションが大好き(笑)。好きな仕事をして、好きな服を着て生きていっていい、そんな姿が学生のロールモデルになればとも思います」

中室牧子
教育経済学者
なかむろ まきこ●1998年慶應義塾大学卒業。学生時代は竹中平蔵氏に学ぶ。日本銀行を経て、夫の転勤に伴いニューヨークに移り住む。世界銀行で働いたのち、コロンビア大学で博士号を取得。2013年より慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任。著書に『「学力」の経済学』(2015)、近著に医師で医療政策学者の津川友介氏とともに執筆した『「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』(2017)

画像: 表参道で生まれ育ち、ギャルソンのお店の前もよく通ったという森さん。「最初、リボンはどうかしらと思ったのですが、実際に着用してみると格好いいですね。コム デ ギャルソンの服はリボンやフリルでも強い。ずっと第一線で活躍されている方の魂の入った服だと思います」 ジャケット¥119,000 コム デ ギャルソン (コム デ ギャルソン) TEL: 03(3486)7611 その他/本人私物

表参道で生まれ育ち、ギャルソンのお店の前もよく通ったという森さん。「最初、リボンはどうかしらと思ったのですが、実際に着用してみると格好いいですね。コム デ ギャルソンの服はリボンやフリルでも強い。ずっと第一線で活躍されている方の魂の入った服だと思います」
ジャケット¥119,000
コム デ ギャルソン
(コム デ ギャルソン)
TEL: 03(3486)7611
その他/本人私物

 パリ郊外の移民が集まり住む地区の実態をテーマにした著作『排除と抵抗の郊外―フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』で大佛次郎論壇賞を受賞した社会学者の森千香子さん。気鋭の研究者は好奇心旺盛で明るい笑顔が印象的だ。

「学生時代にパリへ旅したとき、空港から市内へ向かう電車から見た景色に驚きました。団地が立ち並び、白人の姿はほとんど見られない。多くの人々に『危ないから行かないほうがいい』とも言われ、興味を抱きました」。実際に郊外に住み、フィールドワークを行なったところ「中に入ると、外からは見えないものが見えてきた。携帯を落としても地元の人の連絡先が入っていれば戻ってくるし、学校でケンカが起きても生徒同士で解決できる。しっかりとしたコミュニティがそこにはある。移民が増えたから問題が起きたわけではなく、原因はフランス社会が何十年にもわたってつくり上げてきた差別の構造にあることに気がつきました」。

昨年は、ニューヨークのブルックリン地区の移民研究にも取り組んだ。「さまざまな人種、宗教が交ざり合う地域で、人々はどうやって調整しながら生きているか。日本でも多民族、多文化は進み始めています。これらの地域の現状や問題点を見ることは、日本のこれからを考えるうえでも大事なのです」

森 千香子
社会学者
もり ちかこ●一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了後、国際交流基金海外専門調査員として渡仏。フランス社会科学高等研究院博士課程修了。南山大学准教授を経て、2012年より一橋大学大学院法学研究科にて准教授を務める。初の著作『排除と抵抗の郊外―フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(2016)で第33回渋沢・クローデル賞、第16回大佛次郎論壇賞を受賞。共著に『国境政策のパラドクス』など

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