効率化とスピード重視の時代、人やものとじっくり向き合う「茶の湯」の文化が若いリーダーや海外の人たちから再評価されはじめている。全3回特集の最終回は、注目の若き茶人が伝統文化を通して日本と世界をつなぐ展望を語る

BY NOBUYUKI HAYASHI, PHOTOGRAPHS BY TAMEKI OSHIRO

Vol.1、2はこちら>

茶の湯の文化を世界に広め、未来につなぐZ世代の茶人

画像: 1997年生まれ、裏千家茶道準教授の若き茶人、岩本宗涼(本名・岩本涼)。21歳でTeaRoomを創業。日本文化発信の功績を認められ、「Forbes 30 Under 30 Asia 2023」にも選ばれるなど活躍中

1997年生まれ、裏千家茶道準教授の若き茶人、岩本宗涼(本名・岩本涼)。21歳でTeaRoomを創業。日本文化発信の功績を認められ、「Forbes 30 Under 30 Asia 2023」にも選ばれるなど活躍中

「茶の湯の魅力は『向き合う』という精神性を保持していること。それによって新しい視点が獲得できること。自己と向き合う内省、他者との対話、特定多数の人との茶会、モノに対する見立て。形はさまざまだが、今の社会では、この『向き合う』という行為が必要とされている。茶の湯にはどの対象とも向き合える構造が用意されている。体験した人は獲得した新たな視点を通してもう一度社会を見つめ直すことができる」

 そう語るのは今、大きな注目を集めているZ 世代の茶人、岩本涼(26歳)。裏千家の茶道家、岩本宗涼(そうりょう)としても知られている。21歳のときにお茶の生産・販売・事業プロデュース等を手がける株式会社TeaRoomを創業。日本文化を海外の人にわかりやすく伝えられる才を認められ、世界経済フォーラム(ダボス会議)が任命する「Global Shapers(グローバルシェイパーズ)」に選出されたり、日本政府がASEANで行う会議に呼ばれたり、若手実業家が集まる会議でお点前をすることも多い。

画像: 2022年8 月にオープンしたTeaRoomの新オフィスに設けられた茶室は、四方から簾(すだれ)を下ろしただけのシンプルなつくり。常にカスタマイズを続けているという

2022年8 月にオープンしたTeaRoomの新オフィスに設けられた茶室は、四方から簾(すだれ)を下ろしただけのシンプルなつくり。常にカスタマイズを続けているという

 お茶会を通し多くの起業家らと対峙してきた岩本。世の中が着実にグローバル化し、起業ブームも蓋を開けてみたら結局、マネーゲームだったと多くの人が気づき始めた今、改めて原点に回帰し、自らのアイデンティティや思想の源を探る人たちが増えた実感があるという。

 それは成功した起業家だけの話ではない。一般参加を募るお茶会では、募集開始直後から2〜3 日は20〜30代の応募が非常に多く、これらの世代もお茶の文化に「触れたい」思いが強いと言う岩本。その理由は「文化の相対化が進んだこと」。インバウンド客に触れたり、さまざまなメディアで日本の魅力を伝える外国人を目にしたりする機会が増えたことで、改めて、自分たちの魅力が何かを考えることが多くなっているからだ。

画像: オフィスの一室に設けられた茶室では石を敷き詰め「露地」をつくっている

オフィスの一室に設けられた茶室では石を敷き詰め「露地」をつくっている

 岩本は、お茶に興味がある人は実際にはもっと多いと考えている。若年層は「何が行われるかわからないと怖くて体験ができない」ということに気づき、最近では募集時にお茶の席の式次第をこと細かく書くようにしたところ、さらに応募が増えたという。

 また、お茶に興味をもつ層をさらに広げるために、水タバコ(シーシャ)の機構を応用し、日本茶の茶葉のみを使用した「吸うお茶」を取り入れたり、感覚を研ぎ澄ますために暗闇の中でろうそくを立ててお茶会を開くなど、さまざまな工夫を続けている。八面六臂の活躍を続ける岩本だが、お茶を通して日本の思想やアイデンティティを築く社会的教育インフラをつくることが大きなミッションだという。それを果たすべく、現在、日本各地で、世界で活躍するクリエイターらを対象にお茶の思想を伝え続けている。

画像: 茶器は現代アーティストの作品や海外の市場で見つけたものを好む

茶器は現代アーティストの作品や海外の市場で見つけたものを好む

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