東京のビストロ好きなら誰でも知っている名店「ラミティエ」。2000年のオープン以来、フレンチラバーはもちろん、ご近所からも広く愛されてきた。キッシュロレーヌ、パテ・ド・カンパーニュ、鴨のコンフィ、ステーキフリット(ステーキとフライドポテト)、アッシパルマンティエ(牛ひき肉とマッシュポテトとチーズの重ねオーブン焼き)……と、どれもビストロ料理の定番。


ラミティエを再訪するお客さまたちの多くはお店へ向かう道すがら、好きな料理を思い浮かべ、「あれもこれも食べたい」と、頭の中はいっぱいに違いない。そのつよーい気持ちが満たされたときの満足感! 定番料理のなせるワザだ。



店内は、フランスのビストロそのもの。

ボルドー色のベンチシート、白いカフェカーテン、背の低いワイングラス……。

本場そのものの雰囲気を醸し出す。お客様に外国人ファミリーもよく見かける



 このお店には、ご紹介したい料理が多すぎて本当に迷う。料理はその日の気分で選ぶことの多い私だが、必ず注文するのは「イルフロッタント」。クレームブリュレと並ぶデザートの定番で、自慢じゃないが、何度訪れてもほかのデザートに浮気したことがない。しっかり甘くて優しい味に加え、東京でこのデザートを定番でいただけるお店をほかに知らないというのも、ここで食べたくなるの理由のひとつ。


 優雅な響きをもつその名は、「浮き島」という意味だそうだ。卵白を泡立てたメレンゲをゆで、アングレーズソース(カスタードソース)に浮かべてキャラメルソースをかけ、スライスアーモンドをたっぷり。メレンゲはふわっふわだが、やわではなく、口の中で溶けるまでしっかりと存在感を放つ。卵とミルクで作られたソースのまろやかな味わいに、苦みのきいたキャラメルソースと、カリリと香ばしいアーモンドが味に重層感を与えている。フランスのカフェやビストロでよく見かけるデザートだが、日本ではなかなかお目にかかれない。



「イル フロッタント」¥550。

ボリューム感もあるが、見た目のわりにはすっとお腹におさまる。

バニラの香りも魅力的



 宮下清志シェフは「オープンからずっと、これだけは切らさないよう作り続けています。昔は、ポール・ボキューズの三ツ星レストランでもこのデザートを出していたんですよ。ほっとする味だから、誰にでも愛されるのでしょう。メレンゲをつくった残りの卵黄とミルクでカスタードソースを作る。そんな無駄のないレシピも大好きなんです」と楽しそうに語ってくれた。


 18年間、配合を少しずつ変えながら作り続けている。でも、「甘さを減らしたことはないんです。お腹がいっぱいのときに、ぼやけた味は美味しくない。だから、きっちり甘くしてます」。

 日本人的にあっさり、さっぱりしたものも大好きだが、この手のデザートは「しっかり甘い派」。そんな私に、救世主のようなお言葉!



宮下清志シェフ。「続けることの難しさを感じています。

少し違うな…もっとこうしたいと、やり続けてここまできました。

うちみたいなお店が少なくなっているいま、定番にこだわるのもいいかなと」



 デザートにここまでパンチがあるということは、料理は推して知るべし。お昼は、前菜にキッシュやお肉のテリーヌ、リエット、サラダ、スープから1品、メインを鴨のコンフィやステーキフリット、アッシパルマンティエ、肉の赤ワイン煮などから1品選んで¥1300。デザートセットは、イルフロッタントを含め5品ほどから選び、コーヒーや紅茶とのセットで¥600。夜はさらに幅広いメニューから前菜とメイン1品ずつをチョイスできて¥2800。


このクオリティーとボリュームでこの値段は、いまの東京で奇跡と言っていいだろう。テーブルの狭い隙間を縫って見事なサービスをしてくれるマダムやスタッフの笑顔も居心地がいい。私はこのお店を「高田馬場の聖地」と呼んでいる。



早稲田通りから入った小さい路地に、店内同様、ボルドー色のたたずまい




L'amitie(ラミティエ)

住所:東京都新宿区高田馬場2-9-12柴原ビル1F

電話: ︎03(5272)5010

営業時間:12:00〜13:30(LO) 18:00〜21:00(LO)

定休日:日曜夜、月曜

※掲載している料金は2018年6月現在のものです




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