BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MIDORI YAMASHITA
アジフライ。明治以降の洋食メニューだが、一般には和食と思われているほど日本のソウルフードのひとつだ。ご飯にもお酒にも合うし、どこでも食べられる料理だからこそ、とびきりのアジフライを食べたい!と探していたら……。
出合ったのは、広尾「日日の料理 びおら」。衣はさくさく、アジはふわふわ。醤油やタルタルソースをつけなくても素晴らしい風味が口中に広がる。添えられたキャベツのせん切りをいただけば、すぐにさっぱり。ずっと食べ続けられるループに入ってしまう。キャベツのせん切りは大葉入りなので、爽やかな香りと味でさらに食欲が増す仕掛けに。
その日最高の新鮮なアジを仕入れ、パン粉専門店で吟味した生パン粉を使う。太白ごま油でかりっと揚がったお馴染みの味に、「おいしい」安心感と満足がしみじみ深まる。
こちらは、料理研究家の後藤加寿子先生と、次女のすみれさんが開いた家庭料理のお店だ。茶道の武者小路千家のお家元の娘として生まれた加寿子先生。懐石料理の第一人者だった母の千澄子さんの薫陶を受け、京料理や茶懐石に造詣が深く、現代の家庭で作りやすいレシピや設えを提案し続けてきた。これまで伝えてきた日本の食文化を、これからの時代へ向けてさらに発信する場所にと、昨夏、この店をオープンした。
「最上の食材を使って『ケ』の料理をお出しするのがうちのコンセプトです。食材や調味料は、いままで私が使ってきた中から、これはというものを選んでいます。家庭料理のお店ですが、焼き魚と筑前煮といった昔ながらの組み合わせではなく、いまのスタイルに合ったものをお出ししています。ご飯に合うものをと思い、アジフライのような洋食もお出ししたかったのです」
締めくくりのお楽しみは、炊きたてのご飯にお汁、日本料理には欠かせない香のもの。お料理の進み具合を計りつつ、お客様ごとに小さな釜で炊き上げる。きちんととった出汁と旬の食材のお汁に、「香のものは必ず添えます」と加寿子先生。夜のおまかせコースの最後のご飯は、お腹いっぱいでもおかわりしてしまう。
「お茶事の料理は最後のお濃茶をおいしくいただくためのもの。油ものや香辛料は避け、お茶の味を感じていただけるように料理を組み立てます。また、お客様に喜んでいただけるよう、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくお出しし、設えも整えます。この心遣いは家庭料理でも同じですね」と加寿子先生。
茶懐石も家庭料理も、根底に流れる、相手を思い遣る心は同じ。揚げたてのアジフライのような「極上のケ」の料理を、温かいサービスと心地よい空間でいただける幸せを「日日の料理びおら」で感じてほしい。
日日の料理 びおら
住所:東京都港区南麻布4の12の4プラチナコート広尾1F
営業時間 : 11:00~14:00(L.O.)、~16:00(喫茶)、18:00~21:30(L.O.)(※コースは20:00(L.O.)
定休日:日・祝日・月曜(昼の部と喫茶のみ休み)
TEL.03-6277-3522
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