白黒の独創的な絵によって、米国のアーティストや批評家からも高い評価を得ているアーティスト五木田智央

BY TAKA KAWACHI, PHOTOGRAPHS BY YASUYUKI TAKAGI, EDITED BY JUN ISHIDA

 東京から送られてきた五木田のドローイングは、あまり宣伝せずともすぐにほぼ完売した。続けて同ギャ ラリーでの個展が決まったものの、心中では「これまでのイラスト路線でいいのか、描くことにもっと情熱をもって立ち向かわないといけないのではないか」と、その後の進むべき方向性に深く悩んでいたという。そんな暗中模索の状況の中、「たまたま手もとにあった画材でさっと描いてみたら、思いのほかよくできてしまって......」と、彼はカンバスに白と黒のみのグワッシュで描いた作品の誕生を振り返る。この偶然に生まれたスタイルにより五木田は「結果的にイラストレータ ーとしての自分に決別する覚悟ができた」と言う。

 その後の彼のトレードマークとなっていく、モノクロのグラデーションが特徴のシュールな絵は、どこか不気味なオーラが漂い、暗さや残酷さ、そして奇抜な発想で満ちていた。「古い雑誌などからイメージを引用しながらも、一気に即興で描いていきました」。こうして生まれた五木田の作品は大きな評判を呼び、以降、ニューヨーク、ロサンゼルス、東京と展示を続け、そしてついにはニューヨーク屈指の現代アートギャラリーのオーナーであるメアリー・ブーンの目にとまることになる。

画像: 2016年9月に開催されたメアリー・ブーンでの個展 『OUT OF SIGHT』で発表された最新作。30年代のハリウッドスター たちをイメージソースとしている “SWEET SOUL”(2016) © TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

2016年9月に開催されたメアリー・ブーンでの個展 『OUT OF SIGHT』で発表された最新作。30年代のハリウッドスター たちをイメージソースとしている
“SWEET SOUL”(2016)
© TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

 ブーンは、80年代初頭に一世を風靡した「ニューペインティング」を代表するジュリアン・シュナーベル やデヴィッド・サーレらを世に送り出した著名なギャラリストだ。以前から五木田の熱心なファンだったアーティストのKAWSを介して紹介されると、彼女は五木田の絵をひと目で気に入り、2014年初頭にチェルシーの彼女のギャラリーで個展を開催する。五木田の知名度は一躍ニューヨークのアートシーンに広まっていき、この9月には二度目となる個展を開催した。「抽象だった顔を今回はあえてしっかりと描いてみた」と、 30~50年代のハリウッドの銀幕スターたちを題材にした12点の力作で来場者を魅了した。

画像: “I DON’T LIKE KARAOKE”(2016) © TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

“I DON’T LIKE KARAOKE”(2016)
© TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

画像: “PERFECT PAIR”(2016) © TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

“PERFECT PAIR”(2016)
© TOMOO GOKITA / MARY BOONE GALLERY, NEW YORK

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