BY MASANOBU MATSUMOTO
『村上隆 – スーパーフラットドラえもん』|ペロタン東京
日本では久しぶりとなる村上隆の個展は、国民的アニメ「ドラえもん」がテーマだ。村上は、過去2002年に開かれたグループ展『THE ドラえもん展 依頼:あなたのドラえもんをつくってください』、また2017年より全国を巡回中の第二弾『THE ドラえもん展』に参加。ドラえもんに登場するキャラクターと、自身のシグネチャー的モチーフ「お花」を融合させた平面作品を発表している。
今回の個展では、新たな“ドラえもん絵画”がお披露目されているが、タイトルに、村上独自の芸術理論である「スーパーフラット」を改めて掲げていることも特筆すべきだろう。
村上は、東京芸術大学で日本画を専攻。同大学の日本画科ではじめて博士号を取得した人物でもある。保守的で閉鎖的とも言われる日本画の世界に直面して、彼がある種、戦略として掲げたのがこの「スーパーフラット」理論であった。そこで村上は、平面的で奥行きのない伝統的な日本画とアニメや漫画の造形的な類似性を説き、アニメやオタク的なものに絵画の新しい画題を探ったのである。
ドラえもんとコラボレーションすることは、村上にとって「スーパーフラット」の実践である。ただ村上が巧みなのは、この作品に日本の美術的要素を盛り込んでいることだ。たとえば、作品中の“どこでもドア”の向こう側に描かれているのは、日本のオーセンティックな市松模様。歌舞伎役者の衣装や桂離宮などの“襖(まさに日本のドア!)”にも使われている柄だ。ひとつの画面にキャラクターが複数存在する様子は、絵巻物に見られる異時同図法(ひとつの構図のなかに異なる時間を書き込む)を連想させる。
また“シェイプド・キャンバス(従来の四角形ではないキャンバス)”の作品も見られる。これは、戦後アメリカのミニマル・アートの潮流を切り開いた画家フランク・ステラの手法で、いわばドラえもんを現代美術の文法で描いたもの。本展に並ぶ“ドラえもん絵画”は、タイムマシンで時空を行き交うように、過去の美術史の断片を覗かせてくれるのである。
ちなみに2020年は、ドラえもんの漫画連載スタート50周年にあたるランドマークイヤー。本展はその前夜祭的エキシビションとしても楽しめる。
『村上隆 – スーパーフラットドラえもん』
会期:〜2020年1月25日(土)
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
開廊時間:11:00~19:00
休廊日:日・月曜、祝日、12月31日、2020年1月1日 ※年始は2日より開廊
電話:03(6721)0687
公式サイト