BY MASANOBU MATSUMOTO

香港のCHATで開催中の『須藤玲子の仕事-NUNOのテキスタイルができるまで』の展示風景から。「折り紙プリーツ」は、生地を立体的に織り込んだ状態で熱を加え、プリーツを施したもの。プロジェクションマッピングによって、布が生き物のように見えるのも面白い
© CHAT, HONG KONG
香港の紡績工場跡にできたアートセンターCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)では、現在、須藤の布づくりのプロセスに焦点を当てた展覧会が開かれている。会場にはデザインソースになったオブジェや図案、試作段階のサンプルなどが並び、メインの展示室では、工場での制作プロセスを一部再現。熱によって生地が収縮し柄が生まれていく様子、花びらのようなレースができる様子を捉えた映像を、布地にプロジェクションしたり、機械音を交えたりしながら、NUNOの代表的な8つテキスタイルが生まれる“秘密”を明かす。

『須藤玲子の仕事-NUNOのテキスタイルができるまで』の展示風景から。図案や指示書、製品サンプルなども並ぶ
© CHAT, HONG KONG

『須藤玲子の仕事-NUNOのテキスタイルができるまで』の展示風景から。熱収縮性の高い素材を、ポリエステル地に貼り付け、オーブン熱によるシュリンクで柄を表現する「ジェリーフィッシュ」
PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO
また別の展示室では、NUNOのテキスタイルを生産する工場の現場を捉えたショートムービーを上映。映像の最後には須藤も登場するが、主役は工場の機械や職人たちだ。「私たちが新商品のためのサンプルを作ったあと、まず持っていくのが工場や職人さんのところ。生産ラインにのせること、生産性をあげることも重要ですから。また、工場とのコミュニケーションが、アイデアを生むこともあります」。実際に、本展でも紹介されている「ジェリーフィッシュ」は、工場から聞いた、熱収縮性の高いビールの濾過(ろか)布がアイデアになったという。
NUNOの“秘密”、須藤のいう「布の可能性」は、彼女の開かれた感性が支えになっているようだ。そう伝えると、須藤は「そんな大げさなことではないですよ」と言い、こう続けた。「ただ、新しい素材が開発されたとか、技術が確立したという情報に関しては、いつも注目しています。それを私たちの布づくりにどう活かせるのか、と。新しい素材や技術は、いろいろな分野で生まれていると思うので、その出会いは大事にしたい。何でも布につなげて考えて、楽しんでみる。それは、私たちNUNOがずっと行なってきたことです」

『須藤玲子の仕事-NUNOのテキスタイルができるまで』の展示風景から。CHATがある文化とビジネスの複合施設商業施設The Millsの中庭には、須藤がデザインした《こいのぼり》が宙を舞う
© CHAT, HONG KONG
『須藤玲子の仕事―NUNO のテキスタイルができるまで Sudo Reiko: Making NUNO Textiles』
会期:〜2020年2月23日(日)
会場:CHATならびにThe Mills内The Hall
住所:南豐紗廠,香港荃灣白田壩街45號
時間:11:00〜19:00
休館日:火曜日
入場料:無料
公式サイト