BY MASANOBU MATSUMOTO
『篠田桃紅展』|東京オペラシティ アートギャラリー
昨年3月に107歳で死去した美術家・篠田桃紅。その70年にわたる創作活動の全貌をつまびらかにする回顧展が東京オペラシティ アートギャラリーで開かれる。首都圏での回顧展は本展が初めてのことになる。
幼少より親しんできた「書」にはじまり、その伝統や「文字」という意味・かたちにとらわれない前衛書、そして抽象的な作品へ。また版画作品、丹下健三ら建築の巨匠たちとコラボレーションし壁書、壁画、陶壁なども展開した。世界的に高い評価を獲得する中で、篠田は感覚を研ぎ澄まして身近な自然や日々のくらしの“森羅万象”に向き合い、それを制作の糧として、晩年まで充実した制作を続けたという。近年、その自立した生き方や人生観に基づいたメッセージがメディアでも紹介され、広く愛されてきた篠田。貴重な作品からは、まだ広く知られていない、篠田桃紅の表現者としての姿をうかがい知ることができる。
『篠田桃紅展』
会期:4月16日(土)〜6月22日(水)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(入場は 18:30 まで)
休館日:月曜、ただし5月2日は開館
入館料:一般 ¥1,200、大学・高校生 ¥800、中学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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ハンネ・ダルボーフェン『Fuchs du hastdie Gans gestohlen / Fox, You Stole the Goose』|TARO NASU
ハンネ・ダルボーフェンは、ドイツ生まれの美術家。ドクメンタやヴェネチア・ビエンナーレの国際展に参加し、2009年に没してからも世界各地で大規模な回顧展が開かれてきた。キャリアの転機は、20代半ばにニューヨークに滞在したこと。そこで当時隆盛していたコンセプチュアルアートやミニマルアートに触れ、以降、2009年に没するまで「時間を描くこと」「時間という概念を体験し、認識すること」を試みた。
たとえば、特定の暦日の数値を別の数値に変換するための独自の計算方法を考案し、その結果をさらに別の数字や形象に置き換え、ビジュアル的に表現した作品。2008年、横浜トリエンナーレでは、五線譜とは異なる独自の楽譜的なものと、演奏音による作品を披露した。本展で紹介される《Fuchs du hast die Gans gestohlen》は、ドイツの有名な民謡「Fuchs, Du Hast Die Gans Gestohlen」が主題。歴史や音楽、物語の時間、様々な形式の時間を視覚化、空間化してきた彼女の思考を体感できる作品である。
ハンネ・ダルボーフェン『Fuchs duhast die Gans gestohlen / Fox, You Stole the Goose』
会期:~5月14日(土)
会場:TARO NASU
住所:東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル4F
時間:11:00〜19:00
休廊日:日・月曜、祝日、4月29日〜5月5日
料金:無料
電話:03(5786)6900
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畠山直哉『津波の木』|PURPLE
PURPLEは、今年3月に京都にオープンした本の販売と展示、イベントを展開するスペース。そのこけら落としとして、写真家・畠山直哉の『津波の木』展が5月8日まで開催中だ。タイトルに用いられた「津波の木」は、畠山が2018年から撮りためてきた、津波の刻印の残る樹木や風景写真のシリーズ。故郷・岩手県陸前高田市で出会った1本のオニグルミの木が、制作のきっかけになったのだという。
海側の半分は死にかけ、陸側の半分は生きている、その「まっぷたつの木」の写真ーー。「あの時から昨日までの時間を留めながら、同時に、生きている“いま”の時間が見える。そこに、喪失を抱きながらも続いていく生の有りようを投影した」とは畠山の弁だ。また、白日夢のように浮かぶ枯木の島や、白く立ち枯れた杉の群れを収めた風景写真は、人間とは異なる時空を思わせ、時間軸や存在についての思考を呼び覚ます。本展では同シリーズの新作も展示する。なお京都では『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022』が開催されており、期間中の4月30日には、FOTOZOFIOセンターにて畠山のトークイベントも開かれる。
畠山直哉『津波の木』
会期:~5月8日(日)
会場:PURPLE
住所:京都府京都市中京区式阿弥町122-1 3F
時間:13:00~20:00(土・日曜は11:00〜19:00)
休廊日:水曜
料金:無料
電話:075(754)8574
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