写真とイメージの問題を問う田口和奈の個展、代表作そして新作も並ぶ名和晃平の古典、タムラサトルによる約1100匹のワニのオブジェがひたすら回転するインスタレーション。今週絶対に見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『A Quiet Sun』 田口和奈展|銀座メゾンエルメス フォーラム

画像: (写真右)《エウリュディケーの眼 #39》 2021年 ゼラチン・シルバー・プリント、14.7x10.5cm (写真左)《Exercise in shape》の習作 2021年 IMAGES:COURTESY OF THE ARTIST

(写真右)《エウリュディケーの眼 #39》 2021年
ゼラチン・シルバー・プリント、14.7x10.5cm
(写真左)《Exercise in shape》の習作 2021年
IMAGES:COURTESY OF THE ARTIST

 たとえば、自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影したり、プリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影したり。田口和奈は、そういった重層的とも言えるモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった形而上の存在を見出そうとする美術家だ。匿名のファウンドフォト(日常のなかに埋もれていた、誰が撮ったのかわからない写真)や雑誌といった既存のイメージを制作に応用しているのもその特徴である。

 銀座メゾンエルメス フォーラムで開かれている『A Quiet Sun』では、本展のために制作した作品群と、田口が収集してきたファウンドフォトを見せる。展示方法も面白い。ギャラリー空間に入る自然光や、展示用に立てた大きな白壁を生かし、印画紙をそのまま壁に入りつけたり、印画紙をくるっと丸めオブジェ的に置いたり。イメージであり物質である写真が空間にどう働きかけるか、写真という存在により空間をどう整えることができるのか。作家の写真に対する問題意識とみずみずしい感性が感じられる展覧会だ。

『A Quiet Sun』 田口和奈展
会期:~9月30日(金)
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1 8/9F
開館時間:11:00~19:00
※入館は閉館時間の30分前まで。
休館日:7月14日(木)、8月17日(水)
※ギャラリーは基本、銀座店の営業に準じる。
料金:無料
電話:03-3569-3300
公式サイトはこちら

『名和晃平 生成する表皮』|十和田市現代美術館

画像: 名和晃平《Biomatrix》2018年 ※参考画像 ミクストメディア、サイズ可変 提供:SCAI THE BATHHOUSE 写真:表恒匡|Sandwich PHOTOGRAPH BY NOBUTADA OMOTE|SANDWICH

名和晃平《Biomatrix》2018年 ※参考画像
ミクストメディア、サイズ可変
提供:SCAI THE BATHHOUSE 写真:表恒匡|Sandwich
PHOTOGRAPH BY NOBUTADA OMOTE|SANDWICH

「セル(細胞・粒)で世界を認識する」という独自の概念を軸に、ガラスや液体などのさまざまな素材や技法を横断しながら、彫刻の新たなあり方を追求してきた美術家・名和晃平。青森県・十和田市現代美術館で始まった本展は、新作を含む名和の多彩な作品を展示し、その活動の遍歴を紹介するものだ。オブジェの表面を透明な球体で覆った名和の代表作「PixCell」シリーズも並ぶ。真珠のような輝きと高い粘度を持つシリコーンオイルの界面に気泡がグリッド状につぎつぎと沸き起こっていく《Biomatrix (W)》と、秒速1センチ程でゆっくりと移動する支持体の上を、粘度を調整した絵の具が雫のようにしたたり落ちる「White Code」シリーズの2種類の新作も見どころだ。

 10月1日より、地域交流センターも会場に加わり、2箇所で展開。地域交流センターは、アートを活用した地域交流の拠点として9月にオープンする新施設で、設計は建築家・藤本壮介が担当。こちらでは、名和の版画や平面作品を展示する予定だ。

『名和晃平 生成する表皮』
会期:〜11月20日(日)
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
開館時間:9:00~17:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日火曜を休館)
入場料:一般 ¥1800、高校生以下無料
電話:0176-20-1127
公式サイトはこちら

『ワニがまわる タムラサトル』展|国立新美術館

画像: 『ワニがまわる タムラサトル』展 2022年 国立新美術館 展示風景 PHOTOGRAPH BY KOZO KANEDA

『ワニがまわる タムラサトル』展 2022年 国立新美術館 展示風景
PHOTOGRAPH BY KOZO KANEDA

 ワニのオブジェがぐるぐると回る。その異様な景観が、美術家・タムラサトルの「まわるワニ」シリーズの醍醐味だ。国立新美術館で開かれている『ワニがまわる タムラサトル』展では、約12メートルの巨大ワニを筆頭に、合計約1100匹のワニが回り続けている。なかには、タムラが教鞭をとる専門学校の生徒がつくったワニ、本展のためにワークショップを開き、参加者がタムラと一緒につくったワニもあるそうだ。

 赤や黄、オレンジ、紫とカラフルな色をまとい、ウレタンやスチロール、ペーパークレイなど素材も大きさもさまざま。それぞれの姿かたちや回転速度も異なる。「何を表しているのだろう?」また「なぜ、ワニがまわるのか?」ーーそんな疑問が誰の頭にも浮かんでくると思うが、実際、タムラ曰く「答えはない」のだそう。そしてこうコメントを続けている。「この大きな疑問を、そのまま疑問として持ち帰ってほしいと思っています」

『ワニがまわる タムラサトル』展
会期:~7月18日(月・祝)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜は20:00まで)
※入場は閉館時間の30分前まで
休館日:火曜
料金:無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイトはこちら

※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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