BY MIYUKI NAGAYA, PHOTOGRAPHS BY JOHN CHAN
メイク上手はベースづくりにいちばん気を遣う。なぜなら、きれいな肌は、ほかの何よりその人自身の美しさを引き出すから――。それは今も昔も変わらないメイクのセオリーだが、かける時間や手間はだいぶ少なくなった。化粧品が進化して、あれこれ工夫しなくても簡単に美しく仕上がるようになったからだ。同時に美肌への意識も変化した。以前もてはやされたような完璧に整った肌は、見た目も気分的にも重い。
SNSで誰もが“素敵な日常”を発信する昨今は、あくまでさりげなく、素肌感を残しつつ毛穴もシミも見えない肌……「何もしてないけどきれい」な肌が狙いめだ。そんなことは無理? いいえ、答えは否。今のベースメイクは最初からそこを目指しているから、塗るだけでそれがかなうのだ。でも、星の数ほどある新製品からどれを選べばいいのか、は大問題。そこで、例年にも増して新技術や趣向を凝らした注目品が揃った今季から、期待を“裏切らない”カテゴリ別ベストを選んでみた。
まずは、ここ数年でベースメイクの定番としての地位を確立したクッションファンデーションから。手軽に美しく仕上がるのが魅力だが、ともすればシアーすぎて、ちょっと物足りないと感じるときも多かった(もちろんそれならコンシーラーを使えばいいのだが、その手間を惜しんでしまう朝もある)。ランコムの限定クッションは、そんなわがままな願いをかなえる一品。“生クッション”を謳うほどにみずみずしいファンデーションを顔全体にのばしたら、同じパフで、バーム状のコンシーラーを目のまわりにササッとのばすだけ。一見薄づき、でも隠したいところはしっかりカバーできる。
パウダーファンデーションの進化も著しい。クリームをスポンジでのばすとパウダーになる、クレ・ド・ポー ボーテの「タンプードルクレームエクラ」のようなタイプは以前からあった。しかしこれは仕上がりのレベルが違う。気になる部分はしっかりカバーできるのに膜感がなく、あくまでもナチュラル。まさに理想の素肌の色と質感を再現してくれる。
一方、カバー力が自由に調整できるため、プロの多くが愛用するリキッドファンデーションのジャンルでは、ゲランに注目したい。天然由来成分を97%まで引き上げ、肌のバリア機能を強化。ラグジュアリーブランドならではの上質感ある仕上がりと相まって、うっとりするようなうるおい肌を演出してくれる。皮膜感のない心地よさも今っぽい。
ファンデーションだけでなく、美しい仕上がりをサポートするには下地も重要だ。なかでも悩んでいる人の多い大人の毛穴問題に新たな解決策を示したのが、MiMC。従来のようにシリコンなどの素材でパテのように毛穴を埋め込むのではなく、植物由来のセルロースパウダーを採用。毛穴の影を消して表面をつるんと整える一方で、毛穴に詰まりにくく、肌に負担をかけない。今までの毛穴レス下地にはイマイチ納得できなかった人にこそ、使ってほしい一品である。
シミに悩むマチュア世代の必需品であるコンシーラーも、隠すだけでなく根本解決を図れれば、よりうれしい。トランシーノは製薬会社が開発しただけに、コンシーラーというよりは“カバーもできる美白スティック”と呼ぶにふさわしい処方。シミの部分にピタッと密着し、紫外線から守りながら美白成分を角層の奥まで送り込む。色はシミを自然にカバーすることにこだわり厳選した1 色のみだが、膜厚感がないので多少肌色と違っても浮きにくく、初心者でも使いやすい。
ツヤ肌ブームの影響で、使う人が少なくなったフェイスパウダーにも、この春新しい展開が。以前から人気の高かったコスメデコルテのフェイスパウダーがリニューアルし、ノンパールで濡れたようなツヤが出せる新色の00が登場したのだ。従来は、マットな肌にしたくないときはパール入りのパウダーでツヤ感を演出するのが定石だったが、大人の場合、つけすぎると肌が負け、ギラギラして古い印象になる。その点、このパウダーなら自然なツヤをキープしたまま化粧くずれを防ぐことができるので、清潔感のある肌がずっと続く。
一見、ベースメイクには大きなトレンドがないように見えるかもしれない。しかしツヤなどの質感は確実に以前とは違っているし、肌はあからさまな主張をしない割に、面積が大きいパーツ。ここをハズすと、“なんとなく古い人”という印象を与えてしまう。しかし逆に言うと、肌トレンドを押さえれば、それだけで“今っぽく”なるということでもある。だからベースメイクの新作は必ずチェックするに限る。たったそれだけで、よりラクをしてきれいになれるのだから。