暮らしの様々な様式や価値観が変わっていくなかで、日々のたしなみである美容に対しても、われわれの意識は変化の渦中にある。そんな今、“樹木との共生”をテーマにした、スキン&マインドケアブランド「BAUM(バウム)」が登場。新しく生まれたブランドが目指す、これからの時代のビューティについて話を聞いた

BY KANAE HASEGAWA

 この容器をデザインしたのはプロダクトデザイナー、熊野 亘さんだ。木を素材にしたプロダクトを数多く手がけ、木の特性を知り尽くす有識者として、プロジェクトに迎えられた。また、自身もサスティナブルな暮らしを実践していることも、熊野さんが選ばれた理由のひとつだ。化粧品の容器としては異例の木を用いたデザインが生まれたいきさつについて、熊野さんはこう話す。

画像: 熊野 亘(WATARU KUMANO) プロダクトデザイナー。1980年生まれ。2001-’08年、フィンランドへ留学。ヘルシンキ芸術大学(現アールト大学)大学院を卒業後帰国し、「Jasper Morrison Tokyo Studio」でアソシエイトデザイナーを務めるかたわら、2011年、デザインオフィス「kumano」を設立。インテリア、家具、プロダクトデザインやプロジェクトマネージメントを手掛けている。2013年より「Japan Creative」プロジェクトマネージャーに就任。現在は東京と長野の二拠点で活動。長野の自宅では、生ゴミをコンポストで堆肥にして畑の肥料にするなど、自身もサスティナブルな暮らしを実践している PHOTOGRAPH BY SOHEI OYA

熊野 亘(WATARU KUMANO)
プロダクトデザイナー。1980年生まれ。2001-’08年、フィンランドへ留学。ヘルシンキ芸術大学(現アールト大学)大学院を卒業後帰国し、「Jasper Morrison Tokyo Studio」でアソシエイトデザイナーを務めるかたわら、2011年、デザインオフィス「kumano」を設立。インテリア、家具、プロダクトデザインやプロジェクトマネージメントを手掛けている。2013年より「Japan Creative」プロジェクトマネージャーに就任。現在は東京と長野の二拠点で活動。長野の自宅では、生ゴミをコンポストで堆肥にして畑の肥料にするなど、自身もサスティナブルな暮らしを実践している
PHOTOGRAPH BY SOHEI OYA

「エシカルなブランドとして、木を使うことが大前提にありました。さらにレフィル(付け替え)に対応した容器になることも決まっていましたが、デザイン上、どのように木を取り入れるかについては、これまでの自分の経験を活かしつつ、チームで何度も検証しました。木という素材特有の、水に弱く伸縮してしまうという特徴と、液体の入った樹脂ボトルをどのように組み合わせたらよいのか。付け替える際は女性の力でも取り外しやすく、一方で、嵌め合わせがしっかりしていて落としたときも外れないという、いわば二律背反する要素の両立にも腐心しました」

画像: 木枠の首部分をよく見ると古墳のような形になっている。これは樹脂ボトルの首部分と木製パーツの嵌め合わせがロック式に収まるようにするため

木枠の首部分をよく見ると古墳のような形になっている。これは樹脂ボトルの首部分と木製パーツの嵌め合わせがロック式に収まるようにするため

 一見シンプルなデザインの容器には、さらに多くの工夫を凝らしている。「木は空気や水分によっておのずと膨張し曲がっていきます。そのため木枠を作る上で、膨張しない方向に木目を合わせて木のパーツを組み立てています。端材であっても木材をきちんと管理しているカリモクだからこそなせる技だと思います。また、別々に作られたPET樹脂ボトルと木製パーツが一体になったような容器にするためには、木のパーツを高い精度でカットする必要があります。カットするのはコンピュータ制御による機械ですが、何万、何十万もの木のパーツを精密に切り出すためには、刃のメンテナンスがきちんとしていなければできません。BAUMの容器は、カリモクの家具と同じクオリティで作られているんです」。これまで多くの家具のデザインに関わってきた熊野さん自身も、感心するほどだ。

画像: 「BAUM WOOD UPCYCLING」より カリモクの工場内にBAUM専用の生産ラインが作られ、家具づくりと同じ品質管理のもと木枠が作られていることが見て取れる COURTESY OF SHISEIDO youtu.be

「BAUM WOOD UPCYCLING」より
カリモクの工場内にBAUM専用の生産ラインが作られ、家具づくりと同じ品質管理のもと木枠が作られていることが見て取れる
COURTESY OF SHISEIDO

youtu.be

 化粧品は、服飾品に比べて買い替える頻度が高く、消費後に処分されるガラスや樹脂容器は相当な量になる。BAUMでは可能なアイテムに関して、容器の一部に植物由来のバイオPET樹脂を使用し、できる限りサスティナブルな製品を実現した。オーデコロン、アロマキャンドルなどPET樹脂を使用できない商品にはリサイクルガラスの容器を用いる徹底ぶりだ。

画像: (左より) バウム アロマティック ハンドクリーム 1(全9種) 本体<75g>¥2,700、<150g>¥5,000/レフィル<150g>¥4,000 バウム ハイドロ エッセンスローション(全2種)<150g> 本体¥6,500/レフィル¥5,500 バウム モイスチャライジングオイル(全2種)<60ml> 本体¥8,000/レフィル¥7,000 バウム オーデコロン(1種)<60ml>¥10,000

(左より)
バウム アロマティック ハンドクリーム 1(全9種)
本体<75g>¥2,700、<150g>¥5,000/レフィル<150g>¥4,000
バウム ハイドロ エッセンスローション(全2種)<150g>
本体¥6,500/レフィル¥5,500
バウム モイスチャライジングオイル(全2種)<60ml>
本体¥8,000/レフィル¥7,000
バウム オーデコロン(1種)<60ml>¥10,000

 BAUMのアイテムは、リビングのキャビネットの上に置いて眺めているとうれしくなるから不思議だ。「エシカルなビューティブランドということで商品を手に取ってもらうというより、パッケージのデザインを気に入って購入し、それをきっかけにBAUMの目指す思いを知ってもらう。それにより、これまでそういったことにあまり意識が向いていなかった方たちにも、サスティナブルな選択をすることに共感してもらえたらうれしい」。と西脇さんは語る。

 BAUMのコンセプトは、数年前から時間をかけて作り上げられた。多くの人びとが、自分たちを取り巻く環境や社会の仕組みをかつてないほど意識するようになった、このタイミングに誕生した新ブランドだ。西脇さんは「これをきっかけに、このような考え方のビューティブランドが増えていけばよいなと思います。また、美容業界全体のけん引役になっていけたらという、ミッションも感じています」と、意を強くして言う。

 この6月にオープンした名古屋、横浜、丸の内の店舗では、パッケージの木枠に使用しているのと同じ樹種のオーク(ナラ)の苗木を育てている。ゆくゆくは育った苗木を東北の森に植樹し、消費してきた資源を森に還すという取り組みだ。「お店に来てくださったお客さまの中には、BAUMのこうした理念に共感して商品を購入してくださる方もいます」

画像: 店舗では、資源を大切にするためにも、紙製ショッパーは用意していない。店舗で購入できるBAUMオリジナルの、年輪をモチーフにしたエコバックはデザイン性が高く、ファッションアイテムとして持ち歩きたい PHOTOGRAPHS: COURTESY OF SHISEIDO

店舗では、資源を大切にするためにも、紙製ショッパーは用意していない。店舗で購入できるBAUMオリジナルの、年輪をモチーフにしたエコバックはデザイン性が高く、ファッションアイテムとして持ち歩きたい
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF SHISEIDO

 美しい肌になりたいから、あるいは効果感が高いと評判だから――そんなスキンケア製品を選ぶ理由にも変化が訪れている。日々使うものは、自分を内面からも満たすものであるか。暮らす社会や環境と共存できるものか。自分のなりたい姿も、それを叶えるための手段にも革新的な選択肢が登場している。今、“新たな美の時代”が来ているのかもしれない。

問い合わせ先
BAUMお客さま窓口
フリーダイヤル:0120-332-133
公式サイト

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