品質がよく低コストなIKEAの商品に、洗練されたデザインを加えるビジネスが注目を浴びている。3年前にコペンハーゲンで設立された「リフォーム社」の取り組みにフォーカス

BY TIM MCKEOUGH, PHOTOGRAPHS BY DANNY GHITIS, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 デザイナーのアルサン・キーオは2016年の秋、ある若い独身男性のためにソーホーのロフトをリノベーションすることになった。彼女はその男性を案内して、マンハッタンにあるキッチン・デザインのショー・ルームを見て巡った。イタリアのボッフィ、ドイツのポーゲンポールやブルトハウプなどの有名どころだ。

 二人は、シルクのように滑らかな引き出しの動きに感心したり、カウンターを手で撫で回したり、デザインの細かいディテールをひとつひとつ吟味したりした。「『これいいね』と彼が言うので、『これは10万ドルのキッチンよ』と言ってあげたの。料理をしない男性には、ちょっとばかり高すぎるわね」と、ヌスラ・デザインのオーナーであるキーオは回想する。

画像: デザイン会社リフォーム社を創立した、マイケル・アンデルセン(左)とジェッペ・クリステンセン(右)。ブルックリンのショールームにて。彼らは、手頃でベーシックでもなく、破産するほど高額でもない、ちょうどその間にあったキッチン・マーケットのすき間を狙っている

デザイン会社リフォーム社を創立した、マイケル・アンデルセン(左)とジェッペ・クリステンセン(右)。ブルックリンのショールームにて。彼らは、手頃でベーシックでもなく、破産するほど高額でもない、ちょうどその間にあったキッチン・マーケットのすき間を狙っている

 クライアントの男性が躊躇したので、キーオはほかの選択肢がないか探し始めた。ネットで彼女が見つけたのが、リフォーム社だった。設立して間もないデンマークの会社で、コストを抑えるための創意に富んだ解決策を提案していた。比較的安価なIKEAのキッチン本体を、世界のおもだった建築家がデザインしたキャビネットのドアやパネルやカウンターで覆ってリフォームするという方法だ。リフォーム社は、プレミアムな仕上がりのデザイナー・キッチンを、通常の価格の数分の1で作れると謳っていた。

 例えば、ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)によるシートベルトのような取っ手のついたオーク材のキャビネット・ドア、ヘニング・ラーセン・アーキテクツ社による木材と厚手の銅片でできたドア、そしてノーム・アーキテクツ社のスモーク・オーク材のドアや、古色を加えたブロンズ製のドアなど。費用は、ドアや引き出しのフロント部分1枚が、だいたい100ドルから300ドル程度だ。

 キーオはIKEAのホーム・プランナー向けツールを使って、オンライン上で130平方フィートのキッチンの基本イメージをデザインした。さらに、ブルックリンのレッド・フックにあるIKEAの店舗を訪れ、必要な素材がすべて揃っているかを確認した。キャビネット・ボックスや金物類をオーダーした総経費は、電動オープナーや内蔵照明を含めておよそ1,600ドルになった。

 彼女はリフォーム社にキッチンのデザイン・イメージを送り、最も高価なオプションを選ぶことにした。ノーム・アーキテクツ社による前述のブロンズのドアと、それに合わせたコンクリートのカウンターだ。カウンターは端が湾曲したデザインで、シンクが埋め込まれている。キャビネットの前面と蹴り込み板、ビルトイン冷蔵庫の引き出しと食洗機のためのパネルの合計は約5,000ドル。キャビネットとアイランド・カウンターにとりつける天板は約8,500ドルだ。
 こうした結果、ほかの高級なデザイナーズ・キッチンに見劣りしないキッチンが完成した。しかも費用の面では「とんでもない差があったわ」とキーオは語る。他社からの見積もりはだいたい4万~8万ドルだったからだ。

 リフォーム社は、IKEAの商品をDIYでリメイクし、本来とは違う機能を持たせる“IKEAハッキング”というシステムのみならず、IKEAの商品を最高級なものにアップグレードさせる“IKEAブリング”と呼ばれるシステムにも力を入れている。IKEAの商品に、より多様な美しさと魅力を付加することを考え、それをビジネスにしようとしている会社は今やたくさんある。リフォーム社もその一つだ。リフォーム社のようなビッグネームとのコラボレーションはないものの、IKEAのキッチン用のドアを提供している会社としては、セミハンドメイド社、ダンスミュア・キャビネット社、コキーナ社などがある。家具類では、スウェーデンのベムズ社のような企業が、イケアのソファーや椅子のために、デザイナー品質の生地を使った美しいカバーを製作している。

 

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