品質がよく低コストなIKEAの商品に、洗練されたデザインを加えるビジネスが注目を浴びている。3年前にコペンハーゲンで設立された「リフォーム社」の取り組みにフォーカス

BY TIM MCKEOUGH, PHOTOGRAPHS BY DANNY GHITIS, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 ジェッペ・クリステンセンとマイケル・アンデルセンは、2014年の秋、コペンハーゲンにリフォーム社を設立した。二人とも、それ以前にもカスタム・キッチンの販売を手掛けており、手頃でベーシックなキッチンと、銀行口座が焦げつくほど高額なキッチンの中間に、マーケットのすき間があることに気がついた。
「キッチンを作ろうとすると、誰しもそこにジレンマを感じるだろう。IKEAは品質がよく、ほかのブランドはデザイン性は高いけれど値が張るんだ」。ニューヨークのリフォーム社のショールームで、そう語るのはアンデルセンだ。グレーと白に塗られたそのショールームは、ブルックリン海軍工廠の近くに2017年5月にオープンした。

 IKEAは、多くの高級キッチン・メーカーと同じく、ブルム社製のヒンジや引き出しのレール、その他の金具類を使っているのだとアンデルセンは付け加えた。
 当然のこととして、とクリステンセンは言う。「われわれはクライアントに言ったんだ。『IKEAの骨組みを使えば予算は半分ですみますよ。あとは外側をデザインすればいいんですから』って。最初のアイディアはそんなふうに生まれたんだ」

画像: シーグル・ラーセンがデザインしたキッチンは、折り重ねたアルミニウムを外装に使用。これもリフォーム社のショールームで見ることができる

シーグル・ラーセンがデザインしたキッチンは、折り重ねたアルミニウムを外装に使用。これもリフォーム社のショールームで見ることができる

 個別のキッチンをいくつもプロデュースするよりも、より大きなビジネス・チャンスがあると確信した彼らは、ビールを1杯やりながらリフォーム社のコンセプトについて話し合った。そして間もなく、コラボレーションのパートナーとして3つの会社をリストアップした。二人が思い描くデンマーク・デザインのドリーム・チームに選ばれたのは、ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)、ヘニング・ラーセン・アーキテクツ社、そしてノーム・アーキテクツ社だった。

「まさか、3社全部がOKしてくれるとは思っていなかったよ」とアンデルセン。
 しかしこの3社は提案を受け入れ、リフォーム社は2015年8月、建築家デザインによるコレクションを初めて発表した(同社は現在、自社デザインによるキッチンも販売している)。 
 2015年に約200件のキッチンを販売。2016年は500件、そして2017年は、20か国以上の顧客に1,000件を売る勢いだとクリステンセンは言う。同社の売り上げの約10%は米国への販売だ。

 リフォーム社は最近、家具の販売にも手を広げている。スウェーデンのアフタールーム社がデザインした、イケアの骨組みに縦溝彫りのガラスドアを取り付けたサイドボードなどだ。キッチンのデザイン・バリエーションもさらに増えている。例えばデンマークのデザイナー、クリス・L・ハルストレムによるデザインには、ドアの高さいっぱいにトネリコ材のハンドルやレールが使用されている。ベルリンを拠点としている建築家のシーグル・ラーセンは、アルミニウムの前板や一体型のハンドルを採用。レストラン経営者であるクラウス・メイヤーとその妻クリスティーナ・マイヤー・ベングトソンがデザインする新しいキッチンも、2017年秋に発表された。

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