品質がよく低コストなIKEAの商品に、洗練されたデザインを加えるビジネスが注目を浴びている。3年前にコペンハーゲンで設立された「リフォーム社」の取り組みにフォーカス

BY TIM MCKEOUGH, PHOTOGRAPHS BY DANNY GHITIS, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 これまでのところ、リフォーム社の創業者たちは、自分たちからIKEAにコンタクトしたことはない。しかしIKEAの弁護士からは一通の手紙を受け取っている。
「それは、IKEAの弁護士からの最高に親切な手紙だった。そこには『あなた方の事業には、何ら問題はありません。好きにやっていただいて結構です。ただし、私たちが登録商標を持っていることだけは忘れないでください』と書かれていたよ」とクリステンセンは語る(リフォーム社のウェブサイトには現在、人目につきにくい深い階層に、IKEAとは業務提携していない旨の注意書きがある)。

 実のところ、IKEAは自社の基幹コレクションをさらに拡張するために、他社による商品開発を積極的に奨励しているように見える。
 IKEAの広報部長であるマーティ・マーストンによると「他社がIKEAのコンセプトや製品群をもとにビジネスをするということは、われわれが提供する製品の強みを証明し、パーソナライズされたものを求める顧客の要望に応えることでもあります。われわれは、こういった形の“共同創作”を歓迎しています。IKEAが提示するビジョンをより豊かにしてくれるのですから」とのことだ。

画像: リフォーム社は、イケアの商品を再加工したり、アップグレードすることに注力する多くの企業の1つだ

リフォーム社は、イケアの商品を再加工したり、アップグレードすることに注力する多くの企業の1つだ

 2017年4月にIKEAは『デイラクティグ』という商品を発表した。イギリス人デザイナーのトム・ディクソンによるそのコンセプトは、“変形するベッド・ソファ”だ。付属品の制作には外部の会社を招いた。試作品として、IKEAはベムズ社と提携し、黒茶色をしたアイスランドの長毛種の羊革を使って、非常に毛足の長いソファカバーを制作した。
 ベムズ社の創設者であるレスリー・ペニントンは、『デイラクティグ』のカバーを“オートクチュール”に例えた。彼女の会社は300種類以上の生地を扱っており、そこにはイギリスのデザイナーズ・ギルド社やロモ社のものなど、プロのインテリア・デザイナーが使う生地も含まれている。ベムズ社では、100種類以上のIKEAの家具のカバーをオーダーすることができるのだ。ソファカバーは99ドルから1,000ドルを超すものまで揃っている。

「私たちのお客様は、マス・マーケットの家具を手に入れ、それを自分だけのユニークなものに作り変えることができるのです」。ペニントンはまた、ベムズ社は世界42か国の顧客に毎月3,000から5,000ものカバーを売っていると付け加えた。「私たちは素晴らしいコットン、リネン、ベルベットの生地をとり揃えています。実際、ベムズ社のカバーが目的でIKEAのソファーを初めて買ったという方が何人もいるようですよ」

 2016年の会計年度には350億ユーロ(約420億ドル)以上を売り上げたと報告されたIKEAの商品は、どこにでもあるあたりまえの存在になりつつある。そういった意味で、リフォーム社やベムズ社のような企業の出現と、iPhoneアプリを開発する企業が台頭している現象には類似点があるとペニントンは見ている。

「IKEAの製品を取り巻くこうした“生態系”は、家具産業においてはかなり珍しいことだと思います。けれども、テクノロジー業界ではすでに長いあいだ、このような関係が築かれてきました」とペニントンは言う。彼女はベムズ社を設立する前はApple社で働いていた。
 アプリ開発者がiPhoneに新しい機能を付加しているのと同じように、これらの企業は実用本位なIKEA製品に、手の届く価格で、思いがけず洗練されたスタイルを付与してくれるのだ。
「高級なスタイルと低コストの組み合わせは、デザインの未来にひとつのヒントを与えてくれているのです」

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