造園設計家のジョン・ベイテルが目指す「土地を知り尽くし、そのありのままの姿を活かした」庭づくり。その理想的な景観が、ロングアイランド東部にある

BY MICHELLE SLATALLA, PHOTOGRAPHS BY ERIC STRIFFLER, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

画像: ふんわりとしたヤマモモの灌木と、その下草として植えられたスイッチグラスや在来種のフェスク類

ふんわりとしたヤマモモの灌木と、その下草として植えられたスイッチグラスや在来種のフェスク類

「私は、光で遊ぶのが好きなんだ」と語るベイテルが指さすその先に、依頼主の姿が見えた。家の戸口に立つレインコート姿の彼は、私たちを手招きしている。
 土砂降りだった雨はもう霧雨に変わっていたので、私たちはそこまで走って行くことにした。中に入ると、室内は想像していたよりも大きかった。間仕切りのない開放感のあるリビングとダイニングはシダーウッドの板張りで、天井から床まで全面ガラス張りの窓からはペコニック湾を一望することができた。遠くに密集して見えるロビンス島とシェルター島も、まるで泳いでいけるくらい近くに感じられる。

 景色に誘われて、私たちは屋外へ出た。控えめなテラスが、これまた目立たないデッキに囲まれたプールに続いている。この家のひっそりとした景観をじゃまするものは何もない。

画像: メインの家屋の建設中、依頼主の家族はゲストハウスに滞在していた。ほとんど刈り取られていない原野と砂利の敷かれたダイニング用の中庭とのあいだには、ニューヨーク州北部で採れる自然石で作られた低い擁壁が築かれている

メインの家屋の建設中、依頼主の家族はゲストハウスに滞在していた。ほとんど刈り取られていない原野と砂利の敷かれたダイニング用の中庭とのあいだには、ニューヨーク州北部で採れる自然石で作られた低い擁壁が築かれている

 私たちは、風になびく野生のアメリカ桜に敬意を表しながら、ペコニック湾を眺めようと断崖へぶらぶらと向かった。2012年に襲来したハリケーン・サンディーによって、すでに崩れかけていた断崖は大打撃を受けた。しかし5年経った今、その爪痕すら残っていない。ベイテルが崖に木を植え直したのだ。急勾配の砂地の道は、今ではシロヤマモモや沿岸でも育つビーチ・プラム、自生のニセアカシアやモウズイカで覆われている。「あんなふうに、ごつごつとした岩の海岸の砂地に植物がたくましく生えているさまは最高に美しい」とベイテルは言う。「ロング・アイランド島で育つとは、そういうことなんです」

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