造園設計家のジョン・ベイテルが目指す「土地を知り尽くし、そのありのままの姿を活かした」庭づくり。その理想的な景観が、ロングアイランド東部にある

BY MICHELLE SLATALLA, PHOTOGRAPHS BY ERIC STRIFFLER, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

 ここのような庭はまた、周りの環境にいい影響を与えてくれる。たとえば、海岸沿いに植えられた植物は海の侵食や土の流出を食い止めてくれる。耐寒性の丈夫な多年草は、少しの水があればいい(「それに殺虫剤もいらない」とベイテル)。また、花をつける在来植物は、受粉を助ける蜂などの昆虫を引き寄せる。

 シカや、威勢のよい野生の七面鳥でさえも、この庭では歓迎される。鹿はペニセタム、ネズミガヤ、スティパ・テヌイシマといった草を食べないので、家族が自分たちのために植えたハーブや野菜にだけ近づかないようにしておけばいい。シカを防ぐための柵は、ニセアカシアを手斧で簡単に切った棒で作られている(「かつて祖父がやっていたような、素朴な方法でやりたかったんです」とベイテルは言う)。

画像: 砂利を敷いた細い車道が、土地の外周に沿って続く

砂利を敷いた細い車道が、土地の外周に沿って続く

 来客用の小屋に向かう途中で、雨は止んだ。新しい家を建築していた数ヶ月のあいだ、オーナーの家族はここに寝泊まりをしていたという。私たちは、誇らしげに立つハナミズキの古木に目を奪われて足を止めた。ベイテルは四季を通じてその木を観察し、春になるとその写真をオーナーの家族に送っている(「彼らにも、花が咲いたのを見てほしいからね」)。

 ベイテルは、日々この庭で起こっていることをすべて把握している。庭の手入れのためだけではなく、自分自身のために、しばしばこの場所に立ち寄る。「本当にストレスがたまった時は、ここに立ち寄ることにしているんだ。心が落ち着くから」
「ここは本当に美しいからね」。私も同感だ。
 そして、太陽が現れた。

本記事の著者、ミッチェル・スラタラはGardenista.comの編集長であり、『ガーデニスタ /スタイリッシュな屋外空間の完全ガイド』の著者でもある。

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