美しい造形美に、快適な座り心地......。たった一脚でも、住まいを洗練の空間へと昇華させてくれる「名作」と呼ばれる美しき椅子を厳選紹介。今回は、日本のデザイン界を代表する巨匠たちが手がけた名作椅子をピックアップ

BY EMI ARITA

剣持勇の「Chair(S-5007)」

画像: 「Chair(S-5007)」¥115,500〜/天童木工 COURTESY OF TENDO MOKKO

「Chair(S-5007)」¥115,500〜/天童木工

COURTESY OF TENDO MOKKO

 戦後間もない1950年代初頭にアメリカへ渡り、イームズ夫妻と交流を深めるなど、当時最先端のアメリカのモダンデザインを研究。帰国後は、自身のデザイン研究所を立ち上げ、ホテルの内装や家具など幅広い分野でデザインを手掛けてきた剣持勇。
 1961年にデザインしたこちらの「Chair(S-5007)」は、当時3次元カーブの成形合板の実現に果敢にチャレンジしていた天童木工と共に作り上げた椅子。丹下健三が設計した「戸塚カントリークラブ クラブハウス」用にデザインされたものが原型で、1950年に発表されたイームズの「シェルチェア」へのリスペクトも感じられる作品となっている。大きくカーブした背もたれは、腰回りをサポートしながら、すっぽりと体を包み込む快適な座り心地を実現。張り地は、ファブリックかビニールレザーから素材をセレクトできる上、それぞれ豊富なカラーバリエーションが揃うのも魅力。

天童木工 
TEL. 0120-01-3121
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渡辺力の「トリイスツール」

「トリイスツール」¥121,000/メトロクス

COURTESY OF METROCS

 ベルリンの「馬蹄型集合住宅」など、20世紀を代表するドイツの近代建築家、ブルーノ・タウトに師事し、ジャパニーズモダンの黎明期を牽引した渡辺力。1949年自身のデザイン事務所を設立した後、1952年には「ヒモイス」を発表。戦後からまだ7年と物資が不足する中で、いかにローコストで機能美を持ち合わせた椅子を作るかという課題を見事にクリアしただけなく、日本における椅子文化の浸透を促すことにもつながった椅子として知られている。
 その「ヒモイス」の誕生から4年後の1956年にデザインしたのが、こちらの「トリイスツール」。しなやかで優しくたわむ籐素材の性質を見抜き、完璧な形で作品化させたことが高く評価され、1957年のミラノトリエンナーレで、日本人初の金賞を受賞。渡辺力が名付けたわけでないが、真正面から見ると鳥居に似ていることから、「トリイスツール」の愛称で親しまれるようになったというエピソードも面白い。カラーはナチュラルとダークブラウンの2種。

COURTESY OF METROCS

メトロクス
TEL. 03-5777-5866
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菅澤光政の「ロッキングチェア」

「ロッキングチェア」¥108,900〜/天童木工

COURTESY OF TENDO MOKKO

 1940年の創業当時から家具における「デザイン」の価値を打ち出してきた木工家具メーカー「天童木工」に、1963年から2005年まで在籍したインハウスデザイナー、菅澤光政。天童木工で40種以上の作品を手掛け、数多くの名作を生み出してきたが、中でも代表的なのが、1966年にデザインした「ロッキングチェア」。
 特徴は肘掛け部分以外継ぎ目のない一体成形のサイドフレーム。これにより、高いデザイン性と堅牢性を見事に両立。また肘掛けのカーブには、局所的に厚みを変える「不等厚成形」の技術が用いられており、美しい見た目と快適な座り心地を叶えた。その完璧な構造から、建築家やデザイナーに愛好者も多く、彫刻家、イサム・ノグチがアトリエで愛用していたことでも知られている。張り地はファブリックやビニールレザー、重厚感のある天然皮革など豊富な素材とカラーからセレクトできる。

画像: 別売りの「オットマン」との合わせ使いもおすすめ。「オットマン」¥47,300〜/天童木工 COURTESY OF TENDO MOKKO

別売りの「オットマン」との合わせ使いもおすすめ。「オットマン」¥47,300〜/天童木工

COURTESY OF TENDO MOKKO

天童木工 
TEL. 0120-01-3121
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長大作の「パーシモンチェア」

画像: 「パーシモンチェア トリエンナーレモデル」¥86,900/メトロクス COURTESY OF METROCS

「パーシモンチェア トリエンナーレモデル」¥86,900/メトロクス

COURTESY OF METROCS

 国際文化会館の家具デザインを手がけたことでも知られる長大作は、1947年に坂倉準三建築研究所に入所。1972年に自身の事務所を設立後は住宅設計に携わるなど、晩年まで現役建築家・デザイナーとして活躍した。そんな長大作のライフワークともなっていたのが、こちらの「パーシモンチェア」=「小椅子」のリ・デザイン。
 ラケット構造(駒入れ加工)を施した初期モデルは、1960年のミラノトリエンナーレで坂倉準三建築研究所から発表された「小椅子」。当時所員だった長大作がデザインを手がけたもので、日本初のラケット構造(駒入れ加工)を用いた革新的な椅子として注目を集めた。この「小椅子」を長大作自ら半世紀をかけて何度も改良重ね、2006年、最後のリ・デザイン版として発表したのがこちらの「パーシモンチェア」である。
 有機的なフォルムのバックシートは、柿の実を切った形から着想を得てデザインが特徴で、厚みのある弾力のあるクッションと日本の住宅にマッチするサイズ感も魅力。張り地は豊富なカラーが揃うファブリックやレザーのほか、トリエンナーレに出品した初期モデルのカラーリーングを再現した「トリエンナーレモデル」がラインナップ。

画像: PHOTOGRAPH BY MASATOSHI TAKAHASHI, STYLING BY YUMI NAKATA, COOPERATION BY STUDIO NOI

PHOTOGRAPH BY MASATOSHI TAKAHASHI, STYLING BY YUMI NAKATA, COOPERATION BY STUDIO NOI

メトロクス
TEL. 03-5777-5866
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柳宗理の「シェルチェア」

「シェルチェア」¥115,500〜/天童木工

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 ミラノ・トリエンナーレ金賞を受賞した「バタフライスツール」や世界初の完全一体型の成形プラスチックスツールとなった「エレファント スツール」など、今なお世界中で愛される名作を数多く手掛けた柳宗理。
 そんな柳宗理が晩年デザインし、隠れた名作として知られているのが、1998年に発表されたこちらの「シェルチェア」。“紙を折り曲げて輪をつくる”という手遊びをしている中で着想を得たという有機的なフォルムは、天童木工の高度な成形合板技術を用いて1枚の合板から作られており、薄くても丈夫な構造を実現。柔軟性のある合板のしなりにより、腰をかけると体にフィットし、座り心地も快適だ。座面の張り地は、カラー豊富なファブリックから選べる。

画像: COURTESY OF TENDO MOKKO

COURTESY OF TENDO MOKKO

天童木工 
TEL. 0120-01-3121
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