世界中の“新しい音楽”を堪能できる「ボンクリ・フェス」。手がける作曲家・藤倉 大の破天荒かつハッピーな創造のエネルギーはどのように波及し、共鳴するのか?

BY MAKIKO HARAGA, PHOTOGRAPHS BY KIKUKO USUYAMA

 作曲家という仕事の魅力を問うと、藤倉 大さんは間髪をいれずに答えた。「人の言うことを聞かなくていい。それがいちばん」

 幼い頃に曲をつくり始めたのも、同じ思いからだった。ハイドンもベートーヴェンも、嫌いなところはすっ飛ばしたり変えたりして好き勝手に弾くので、いつもピアノの先生に叱られた。「譜面と鳴っている音が違うから、間違いだと言われる。『だったら、自分で曲を作れば、誰にも怒られない』と思ってやってみたら、そっちのほうがおもしろくなっちゃって」。藤倉さんは楽しそうに振り返る。大変だと思うことはあっても、作曲を苦痛と感じたことは、一度もないそうだ。

画像: 藤倉 大(DAI FUJIKURA) 1977年大阪生まれ。ロンドン在住。セロツキ国際作曲コンクールを当時最年少で優勝したほか、ロイヤル・フィルハーモニック作曲賞、国際ウィーン作曲賞、尾高賞、芥川作曲賞など、権威ある賞を多数受賞。ザルツブルグ音楽祭、BBCプロムス、シカゴ響、シモン・ボリバル響など、世界中から作品を委嘱されている。また、ブーレーズ、ドゥダメル、諏訪内晶子、小菅優などの世界的な指揮者やソリストによって、作品が初演・演奏されている。実験的なポップス、ジャズ、即興のアーティストとのコラボレーションも多い。音楽レーベルMinabel Recordsを主宰

藤倉 大(DAI FUJIKURA)
1977年大阪生まれ。ロンドン在住。セロツキ国際作曲コンクールを当時最年少で優勝したほか、ロイヤル・フィルハーモニック作曲賞、国際ウィーン作曲賞、尾高賞、芥川作曲賞など、権威ある賞を多数受賞。ザルツブルグ音楽祭、BBCプロムス、シカゴ響、シモン・ボリバル響など、世界中から作品を委嘱されている。また、ブーレーズ、ドゥダメル、諏訪内晶子、小菅優などの世界的な指揮者やソリストによって、作品が初演・演奏されている。実験的なポップス、ジャズ、即興のアーティストとのコラボレーションも多い。音楽レーベルMinabel Recordsを主宰

 冒頭の言葉は創造の自由を指しているのであって、藤倉さんは孤高の作曲家どころか、世界中にいる多くの音楽仲間から信頼されている。演奏者が決まっている委嘱曲を書くときは、二小節だけ書いたものを相手に送り、それを演奏したものを録音して送り返してもらい、それをもとにビデオ通話で話し合う、という作業を繰り返す。こうして、演奏者が無理なく最高のパフォーマンスができる方法を考え抜くのだ。「舞台に立ち、相当な緊張のなかでやる演奏家を、心配させたくない」と藤倉さんは言う。「ベストを尽くしたのに、変に弾きにくく書かれているから失敗したら、演奏家は二度とその作品を弾きたくない。それだと、初演で終わっちゃうじゃないですか」

 藤倉さんは、ひとつの質問に対して実に多くの言葉と情報を語り、その口調は早く、熱い。
「関西人ですから、『人を楽しませなくちゃ』という思いが強くて」と藤倉さんは言うが、それだけではないだろう。熱量も好奇心も想像力も、子ども時代と変わらないから、新しい音楽を生み出すことができるのではないか。

 今年で3回目を迎える「“Born Creative” Festival(略称ボンクリ・フェス)」(2019年9月28日、東京芸術劇場)は、藤倉さんがアーティスティック・ディレクターを務めている。‘Born Creative’とは「人間はみんな、生まれつきクリエイティブ」という意味だ。コンサートホールで開催されるスペシャル・コンサートのほかに、電子楽器の工作教室や、アーティストたちによるワークショップやライブ(一部は無料)など、赤ちゃんから参加できる盛りだくさんの音楽イベントだ。

 子どもの頃は、誰でも新しい音(子どもは「変な音」と表現する)を組み合わせておもしろい曲を作る。だが、学年があがるにつれて自由な発想で書けなくなる様子を、2013年から福島県相馬市で定期的に開催する子どものための作曲教室で見てきた。「こんな変なもの、音楽なのかな? 友だちにどう思われるかな?」などと気にし始めるせいではないか、と藤倉さんは残念がる。「ボンクリ・フェス」では大人たちに、新しい音楽に触れて子どもの頃の感性が呼び覚まされる体験をしてもらいたいのだという。

画像: 世界中からラブコールが引きも切らない。15歳から博士課程修了まで英国で作曲を学んだが、「実は、和声も対位法も習ったことがない」と言う

世界中からラブコールが引きも切らない。15歳から博士課程修了まで英国で作曲を学んだが、「実は、和声も対位法も習ったことがない」と言う

 藤倉さんの“国際的なお友だちパワー”が発揮されるスペシャル・コンサートは、箏、三味線、ホルン、エレクトロニクスと、多彩な楽器が登場する。楽曲は、坂本龍一さんの三味線ソロのための日本初演作品や、大友良英さんの新作など、“初もの”づくしだ。藤倉さんの作品も、「ホルン協奏曲第2番」は、世界初演となるアンサンブル全編版。さらに、映画『蜜蜂と遠雷』(原作は恩田陸さんの同名小説)の劇中音楽である「春と修羅」が、映画の公開(2019年10月4日)に先駆けて演奏される。『蜜蜂と遠雷』は、ピアノコンクールが舞台の物語。「春と修羅」は、その課題曲のひとつで、架空のものだ。即興で弾くカデンツァが含まれるので、藤倉さんは登場人物の演奏描写に合わせて、4つのバージョンを書き分けた。「ボンクリ」でどれが披露されるかは、ピアニストの萩原麻未さんに委ねているので、藤倉さんもわからない。当日のお楽しみだ。

 ノルウェーから参加するアーティストたちは、即興ライブを披露する。ヤン・バングとエリック・オノレは、同国の即興音楽祭「プンクト」の設立者だ。楽譜はいっさい使わない。というか、読まない。「すごく耳がよくて、たとえば赤ちゃんが泣いたら、その場でそれも音楽にしてしまう。彼らと仕事をして、自分がいかに楽譜にとらわれているかわかりました」と藤倉さんは言う。「自分とは反対のことをしている人が、好きなんですよ」。この言葉に、藤倉さんのインスピレーションの源が垣間見えた気がした。

『“Born Creative” Festival 2019』
日時:2019年9月28日(土)
場所:東京芸術劇場 コンサートホール 他
住所:東京都豊島区西池袋1-8-1
※プログラム内容および時間は公式サイトを参照
料金:S席¥3,000、A席¥2,000、U25(25歳以下/S席、A席共通)¥1,000、スクリームチケット¥2,000

 

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