BY YUKI SATO
正統派のフラメンコ・ファンだけでなく、日本の女性誌やCM界からも熱視線を浴びせられていたフラメンコ界の貴公子といえば、ホアキン・コルテス。今、そのコルテスの玉座を継承する存在として注目されているのが、ファン・デ・ファンだ。16歳でのプロデビュー当時は、日本のアイドル顔負けの愛らしさでファンを魅了していたが、40歳になった現在は、ひげをたくわえ成熟した男のオーラを放っている。月日の流れの速さには驚くしかない。
「25歳で自分の舞踊団を立ち上げるまでには、多くの偉大な先達たちの影響を受けながら自分のフラメンコを探求していきました。もちろん、僕を日本にお披露目してくれたアントニオ・カナーレスへの恩は忘れることはできません。彼からは、フラメンコ・ダンサーとしてのあらゆること学び、計り知れないほどの影響を受けました」
そのカナーレスのみならず、ファン・デ・ファンは影響を受けたフラメンコ・ダンサーとして、フラメンコ界のレジェンドとも言えるカルメン・アマジャをはじめとして、マヌエラ・カラスコ、アンヘリータ・バルガスなどの女性ダンサーたちの名前を挙げるのもユニークだ。単なる踊りの型だけを受け継ぐのではなく、性別を超えて“フラメンコの心”をこそ、自分の踊りに取り入れたいと願う証左だろう。
「フラメンコは踊りだけではなく、音楽がとても重要であることは言うまでもありません。ふつうは音楽が先にあって、メロディやリズムに踊りを振り付けていくと思われがちですが、僕の場合はさまざまなアプローチの仕方があって、頭の中に流れる音楽に即興のように合わせることもあります。先日手がけた新プロジェクトでは、バッハ、ベートーベン、モーツァルトやショパンなどのクラシック音楽や、チャーリー・パーカー、マイルス・デイビスのようなジャズを混ぜてみたりもしました。フラメンコ音楽の原点は当然ながら大切にしつつ、あらゆる音楽、楽曲を断片的に、モチーフとして取り込んで、新しい魅力を探っていきたいと思っています」
そんなファン・デ・ファンの新たな挑戦が、日本人フラメンコ・ダンサー、Sirocoとコラボレートした新作『舞台フラメンコ~私の地アンダルシア』だ。フラメンコ発祥の地といわれるアンダルシア地方のセビリアに生まれ育ち、「フラメンコを習うきっかけが何だったかなんて覚えていない」と言うくらい小さな頃から、ごく自然にフラメンコを踊っていたファン・デ・ファン。そして、単身訪れたスペインのアンダルシアで「自分の人生がガツンと決定づけられた」と語るSiroco。ふたりは、尊敬するカルメン・アマジャの名を冠したフラメンンコ・フェスティバルで出会ったのがきっかけで、親しくなったという。「それはバルセロナで開催されたイベントでした。僕と彼はそこからアンダルシアへ一緒に帰ることになり、道中いろいろ語り合ううちに『La Voz del Baile(踊りの声)』という作品を一緒に作ろうと意気投合するくらい、仲良くなってしまったんです」
そうした経緯を経て、再び実現したコラボレーション作品が、今回上演される『舞台フラメンコ〜私の地アンダルシア』だ。ファン・デ・ファンは「剣豪・宮本武蔵をモチーフにしたナンバーもあるんですよ」と楽しそうに語ってくれた。想像してみるに、スペインの剣を使った舞なども素敵だろうし、彼とSirocoによる武蔵と小次郎のデュエットだとしたら、本当にエキサイティングなものになるに違いない。
「自分自身のフラメンコを突き詰めつつ、僕はコンテンポラリーダンスやクラシックバレエ、タップダンスなど他の踊りも学んでいますし、その分野の最高峰と呼べるダンサーたちとも共演しています。フラメンコは、いうまでもなくスペインの文化ですが、日本の人たちがこよなく愛してくれているように、さまざまな文化と交流して進化していってもいい。僕はそう確信しているんです!」
『舞台フラメンコ~私の地アンダルシア』
<東京>
会期:2019年11月9日(土)、10日(日)
場所:東京国際フォーラム ホールC
住所:東京都千代田区丸の内3-5-1
<大阪>
会期:2019年11月11日(月)
場所:梅田芸術劇場シアター ドラマシティ
住所:大阪府大阪市北区茶屋町19-1
料金:S席¥12,000、A席¥9,000、B席¥6,000、VIP席¥28,000※(すべて税込)
※ VIP席特典:座席位置:中央ブロック5列目以内保証、 SIROCO・JUAN DE JUANとのミート&グリート(終演後)、出演者サイン入りプログラム
※ 東京公演のVIP席は、キョードー東京電話のみ、大阪公演はイープラスのみで販売
※ 5歳未満入場不可
公式サイト