長い自粛期間を乗り越えて、ついに映画館に足を運べる日がやってきた。久しぶりの大スクリーンで堪能したいのは、ジム・ジャームッシュが挑むゾンビ映画か、グレタ・ガーウィグが描く不朽の名作か、はたまた?

BY REIKO KUBO

4. スペインの鬼才アルモドバルの自伝的人生賛歌
『ペイン・アンド・グローリー』

 世界的な成功を収めながら、体調不良と孤独から引退同然で引きこもる映画監督サルバドールの元に、30年以上前の監督作をシネマテークで上映するという知らせが舞い込む。絶縁した男優を訪ねると……。バレンシアの洞窟での暮らしや、強烈な性の目覚め、マドリードでの恋人との蜜月と別れ、いまだ立ち直れずにいる母の死……。彼の人となりと芸術を形造った出来事や人間関係が、痛みと酔いの中で蘇り、出逢いを引き寄せる。

『オール・アバウト・マイ・マザー』等で知られるスペイン人監督ペドロ・アルモドバルが、自伝的エピソードとフィクションを織り交ぜ、痛みや悲しみをひっくるめた人生賛歌を鮮やかに奏でる話題作。アルモドバル映画でデビューし、ハリウッドに渡ったアントニオ・バンデラス。貧しい時代を生き抜いた母親役にはペネロペ・クルス。旧知の俳優たちが親密な世界を豊かに押し広げてみせる。

 

画像: 『ペイン・アンド・グローリー』予告編 youtu.be

『ペイン・アンド・グローリー』予告編

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『ペイン・アンド・グローリー』
6月19日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか 全国順次公開
公式サイト

5. 醒めた瞳が観る者を射る、韓国女性監督の鮮烈なデビュー作
『はちどり』 

 ソウルの漢江にかかるソンス大橋が突如崩れ落ちた1994年のソウル。14歳の中学生ウニは、夫婦で餅屋を切り盛りする両親と兄、姉との団地暮らし。厳格な父親は長男ばかりに期待をかけ、兄は進学のストレスから時折、妹に暴力を振るっている。孤独なウニの心の叫びに、忙しい母も姉も、学校の教師も級友も気づこうとしない。他校の男の子とデートしても、幼なじみと万引きしても、クラブで踊っても、癒されない心。ところがある日、漢文塾に一人の女性講師が現れる。物静かで、どこか風変わりな講師とのささやかな会話が、ウニの乾いた心にじんわり染み込み、活きる力を与えていく。

 2016年に発表されたベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公にも通じる、男性優位社会の中で懸命に羽ばたく「はちどり」のような少女ウニ。本作品がデビューとなる女性監督キム・ボラが、パク・ジフ演じる鮮烈なヒロインの成長に、自らの記憶とカタルシスを託して描く。

画像: 『はちどり』予告編 © 2018 EPIPHANY FILMS.ALL RIGHTS RESERVED. youtu.be

『はちどり』予告編
© 2018 EPIPHANY FILMS.ALL RIGHTS RESERVED.

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『はちどり』
6月20日(土)より、ユーロスペースほか 全国順次公開
公式サイト

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