歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十五回は、新しい生活様式の中で歌舞伎を未来へつなげる、市川猿之助さんの挑戦

BY MARI SHIMIZU, PHOTOGRAPHS BY KEIKO HARADA

 明けて2021年新春。猿之助さんは歌舞伎座「壽初春大歌舞伎」の第一部に出演する。今度は底抜けに明るい舞踊劇『悪太郎』だ。狂言の題材をモチーフに日本舞踊の常識にはなかった三拍子のリズムを取り入れて、大正末期に新作舞踊として初演された作品である。

画像: 『悪太郎』市川猿之助 PHOTOGRAPH BY YOSHIHIRO SAITO

『悪太郎』市川猿之助
PHOTOGRAPH BY YOSHIHIRO SAITO

「高祖父(初代市川猿翁)が独自の着想で創作した舞踊劇のひとつです。うちにはこうした珍しいものがせっかく伝わっているのですから、この機会にお見せしようということです。お正月ですし、何もかも忘れておおいに笑っていただきたいですね」
 酒好きでその名の通り傍若無人な暴れ者の一挙手一投足から目が離せない、ユーモアたっぷりの一幕となっている。

 8月の公演再開後、歌舞伎座は一演目ずつの四部制公演を続けてきたが、2021年1月は二演目ずつの三部制となる。
「まさに正体不明のウィルスの動向は予測がつきませんから、今後どうなっていくのかは誰にもわかりません。今はすべてにおいて転換期にありますが、我々にはここで歌舞伎を絶えさせてはいけないという強い思いがあります。引っ越しに例えるなら先人から受け取った荷物を次世代へきちんと渡さなければいけない。それは歌舞伎に携わる人間みんなの思いです」

画像2: 「歌舞伎への扉」Vol.15
『弥次喜多』×パンデミック。
市川猿之助が仕掛ける
令和の歌舞伎とは

 日本の伝統をことごく否定した明治の欧化政策、日本国中至るところが焦土と化しそれまでの価値観が覆った敗戦、歌舞伎はこれまでも幾度となく存続の危機に直面してきた。それを乗り越えて来たのは、“荷物”と共に託された歌舞伎への深い思いがあってこそだろう。
「大切なのは荷物を受け取った者が時代の空気を感じながら、古いものも新しいものも吟味して取捨選択していくことです。一表現者としての肉体はやがてなくなりますが、伝承は生き続けます。そしてそこからまた新たな創造が生まれていくのです」

 400年を超える歌舞伎の歴史が、転換期を生きるヒントを示唆している。

図夢歌舞伎『弥次喜多』
配信開始日:2020年12月26日(土)
配信時間:111分
配信元:Amazon Prime Video(国内独占レンタル配信)
レンタル料:¥1,900(税込)
作品ページはこちら
※ Prime Video内作品ページの“レンタル”のタブをクリックすると作品のレンタルが開始。レンタル期間は30日間、一度視聴を開始すると48時間でレンタルが終了。

監督・脚本・演出:市川猿之助
原作:前川知大「狭き門より入れ」
構成:杉原邦生
脚本:戸部和久
監督:藤森圭太郎
製作:松竹株式会社
出演:松本幸四郎、市川猿之助、市川中車、市川染五郎、市川團子/市川猿弥、市川笑三郎、市川寿猿、市川弘太郎(声の出演)

壽初春大歌舞伎
第一部 壽浅草柱建(ことほぎてはながたつどうはしらだて)
    猿翁十種の内 悪太郎(あくたろう)
第二部 夕霧名残の正月(ゆうぎりなごりのしょうがつ)
    仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)祇園一力茶屋の場
第三部 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)車引(らくだ)
上演期間:2021年1月2日(土)~27日(水)
休演日:1月12日(火)、19日(火)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥15,000、2等席¥11,000、3階A席¥5,000、3階B席¥3,000、1階 桟敷席¥16,000
※4階幕見席の販売はなし
公式サイト
<チケットの購入は下記から>
電話: 0570-000-489(チケットホン松竹)
チケットWEB松竹

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