長年の経験に裏打ちされた確かな演技力で、本国フランスでは国民的女優として確固たる地位を築いているカトリーヌ・フロ。このたび彼女が主演する映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』の日本公開にともなって行われたスペシャルインタビューで、演じることへの深い想いを語った

BY KURIKO SATO

 カトリーヌ・フロと聞いて、すぐにその代表作が浮かぶ方は、フランス映画通と言えるかもしれない。フランス女優のなかでは、もうひとりのカトリーヌ(・ドヌーヴ)や、同世代のイザベル・ユペールに比べると、彼女は下積みが長く脇役を演じることが多かったからだ。だが本国では庶民的な人気を誇る大女優。映画から演劇まで、その出演作は毎回、話題にのぼる。

 女性シェフの先駆けとなるような、フランス官邸の女性料理人に扮した『大統領の料理人』(2012年)は、日本でもヒットを記録した。『偉大なるマルグリット』(2015年)では、自分が音痴であることに気付かない、歌うことが大好きな貴族のマダムに扮し、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞の主演女優賞に輝いた。近年では、ドヌーヴと共演した『ルージュの手紙』(2017年)が記憶に新しい。スター然としたオーラではなく、親しみやすくチャーミングな魅力の彼女が幅広い層に支持されるのも頷ける。

画像: カトリーヌ・フロ(写真左)はフランスで最も栄誉あるセザール賞でこれまでに10回ノミネートされ、2度受賞している実力派 THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

カトリーヌ・フロ(写真左)はフランスで最も栄誉あるセザール賞でこれまでに10回ノミネートされ、2度受賞している実力派
THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

 新作『ローズメイカー 奇跡のバラ』のピエール・ピノー監督にとっては、そんな彼女こそがヒロイン、エヴにぴったりだったと言う。
「僕にとって、彼女はどこかフランス的なエスプリを体現する人なのです。彼女の佇まい、喋り方、そして人間味。さらにコミカルな演技からシリアスなドラマまで自在に演じられる、幅広い演技力も魅力でした。この物語にはちょっと荒唐無稽なところがありますから、真実味を持って演じられる彼女のような女優が必要でした」

 世界に名高いフランスのローズメイカー、ドリュ社の全面協力を得て撮影された本作は、父親のバラ園を受け継ぎ、その天賦の才で新種のバラを開発し成功を収めながらも、いまは破産寸前にある主人公が人生を立て直す物語だ。社員を雇う余力もないなか、苦肉の策で職業訓練所から来た3人の素人の手を借りることで、思いもよらない転機が訪れる。本作の魅力をフロはこう語る。
「これは感情の交流を描いた美しい物語です。ひとりでは八方塞がりでも、人と連帯することで道が開ける。この物語の場合は赤の他人が集まって、結果的にそれぞれにとって未来への希望が見えてくる。そこに心を動かされました」

画像: バラにしか関心を持ってこなかったエヴ(カトリーヌ・フロ)が、バラの素人3人との出会いを経て友情や愛情、人を信頼することに目覚めていく THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

バラにしか関心を持ってこなかったエヴ(カトリーヌ・フロ)が、バラの素人3人との出会いを経て友情や愛情、人を信頼することに目覚めていく
THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

 両親に捨てられたフレッドは、エヴのもとで自分に特別な嗅覚が備わっていることに気づき、新たな一歩を踏み出す。かたやバラに人生を捧げ、父なき後は天涯孤独に自分の世界に籠っていたエヴは、フレッドにより再び人を信頼する心を取り戻す。
「エヴは母親にはなれなかったけれど、フレッドを通して母性にめざめる。それによって彼女自身の閉ざされた心の扉が開くのです」

 本作にはまた、大企業対、職人技にこだわる個人企業という現代社会に顕著なテーマも含まれている。エヴのバラ園は、大量生産の巨大企業によって次第に居場所を追われ、借金が嵩んでいくのだ。
「残念ながらそれは、今の世の中の風潮ですね。大企業がつねに大量生産によりもっと安く、もっと売ることを目指すなかで、エヴのような職人気質の人々は商売がやりづらくなっている。でも彼女にとって、バラは単なる商品ではありません。人生であり、ポエジーです。エヴは不可能な闘いに挑む戦士なのです。抵抗することをあきらめない。そんな彼女のキャラクターにも、とても共感します」

画像: 今作への出演にあたってはバラの育成や交配などさまざまなことを学んだという THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

今作への出演にあたってはバラの育成や交配などさまざまなことを学んだという
THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA

 カトリーヌ・フロのキャリアを振り返れば、彼女もまたある意味で戦士だったことがわかる。映画界では遅咲きの感があるフロだが、早くから演劇に目覚め、19歳で友人たちと自身の劇団を立ち上げる。フランスの名門、コメディ・フランセーズ(パリの国立劇場)の入団試験を受けるものの、不合格になったことがきっかけだった。ちなみにこのとき、最後まで競って入団したのはイザベル・アジャーニだ。

「権威あるところに所属することを望んでいた両親は、失望しました。とくに父はわたしに対して批判的で厳しかったので、とても辛かった。でも却ってやる気が起きました。それでわたしは両親のもとを早くに離れて劇団を始めた。もともと内向的で控え目だったのですが、演劇を通して自分を開放することに喜びを覚えたのです」

 彼女の努力はやがてゆっくりと実を結ぶ。演劇仲間の縁で知り合ったアラン・レネの監督作、『アメリカの伯父さん』(1980)で映画デビュー。1985年、『C階段』が高く評価され、1996年、セドリック・クラピッシュの『家族の気分』でセザール賞助演女優賞を受賞し、広くその実力が認められる。

 現在もスクリーンから舞台まで、自在に活躍を続ける彼女だが、俳優の醍醐味について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「この仕事で好きなところは、演技を通してさまざまなことを学べる点です。この映画ではバラのことはもちろん、その交配についても学びました。バラの交配のシーンを演じるために、ドリュ社のドリュ夫人が直々に手ほどきをしてくれました。彼女の仕事は美の探求。信じられないくらいに繊細な世界であると知って感動しました。

 わたしの職業は<フリ>をすることです。本当は良く知らないのに即席で覚えて、さも専門家のように振る舞う(笑)。でもそのたびに好奇心を刺激され、まるで旅をするように異なる領域を訪れることができるのは、とても恵まれたことだと思います」

 我々、観客の好奇心も満たしてくれる彼女の旅は、これからも続いて行く。

画像: 映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』予告編 配給:松竹 youtu.be

映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』予告編
配給:松竹

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『ローズメイカー 奇跡のバラ』
2021年5月28日より全国公開

※ 上映劇場の状況は、公式サイトの劇場情報をご確認ください

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