「既存の枠組みを飛び越え、今までになかった表現に調整したい」。迫りくるグルーヴ感と多彩な音色を響かせ、新天地を切り拓く箏奏者・LEO。話題のアーティストに直撃インタビュー

PHOTOGRAPH BY YUSUKE ABE

画像: ショーを見たりデザイナーの考えなどについて調べたりするほど、ファッションが好きだというLEO。写真の装いはすべてリック・オウエンスのもの(本人私物)。ステージ衣装は動きやすさ、生地が揺れたときに美しく見えることを大切にしている。よく選ぶのは、日常でも愛用しているヨウジヤマモト

ショーを見たりデザイナーの考えなどについて調べたりするほど、ファッションが好きだというLEO。写真の装いはすべてリック・オウエンスのもの(本人私物)。ステージ衣装は動きやすさ、生地が揺れたときに美しく見えることを大切にしている。よく選ぶのは、日常でも愛用しているヨウジヤマモト

 13本の絃で紡ぐ箏の音は、雅みやびで繊細だ。音量が小さく、音は鳴った途端に減衰していくため、パワーで勝る西洋楽器と一緒に奏でると、ともすれば埋没してしまう。だが、ピアノやチェロなどとアンサンブルを重ね、独自の新しい表現を追求してきた箏アーティストのLEOは、「そうした制約は足かせではなく、プラスに変えられる」と言う。「たとえば急に箏が主役の旋律になり、ほかの楽器は伴奏にまわる瞬間に、引き込まれるような弱音が響くと、耳を澄ませたくなる。西洋楽器だけの編成ではできない魅力的な表現が、箏が入ることで可能になるんです」

 最新アルバム『GRID//OFF』では、実験的ともいえるアプローチを用いて、今まで誰も体験したことのない箏の世界へ聴く者を誘う。エフェクターを使ったり、演奏したフレーズを加工・編集してサウンドをコラージュしたり。インスピレーションの源は、ジャズからエレクトロニック・ダンス・ミュージックまで多種多様だ。「ジャンルや楽器の枠(grid/グリッド)を飛び越え、『グルーヴのある音楽』というテーマのもとに、僕がいま表現したいものを集め、やりたいことをやっちゃいました」。収録曲には彼自身のオリジナル曲に加え、坂東祐大や網守将平が書き下ろした作品や、敬愛する坂本龍一、ティグラン・ハマシアン(アルメニア出身のジャズピアニスト)の作品も含まれる。

 箏との出合いは9歳のとき。通っていたインターナショナルスクールでは全員が音楽の授業で箏を習った。上級生が演奏する沢井忠夫の『甦る五つの歌』を聴いて「かっこいい」と思い、練習に明け暮れた。中学時代、流行(はや)りの曲を大音量で演奏する軽音楽に憧れ、ギターやドラムも習得してバンドに参加したが、やがて「箏のほうがしっくりくる」と感じ、箏をやると決めた。16歳のとき、権威ある邦楽コンクールを最年少で制した。

 LEOはつねに「いい音」を出すことに心を砕く。彼が考えるいい音は、自分にしかない魅力をもつ音だ。「それが出せないと『もう一度聴きたい』と思ってもらえる演奏にはならない。ひとつひとつの音に意思が込められているか、一番いい音を出せているか、厳しく自分に問い続けています」─原賀真紀子

LEO(レオ)
1998年横浜生まれ。カーティス・パターソン、沢井一恵に師事。2014年くまもと全国邦楽コンクール史上最年少最優秀賞および文部科学大臣賞受賞。2017年メジャーデビュー、東京藝術大学音楽学部邦楽科入学。「LEO 箏リサイタル2023 -GRID ONGRID OFF-」大阪公演(2023年6月9日)、東京公演(2023年8月27日)。
公式サイトはこちら

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