圧倒的な存在感で50年近くのキャリアを築いてきた俳優、ウィレム・デフォー。67歳にしてなお、チャレンジをいとわない素顔に迫るインタビューを全3回でお届けする第1弾

BY SUSAN DOMINUS, PHOTOGRAPH BY COLLIER SCHORR, STYLED BY JAY MASSACRET, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

画像: ジャケット・パンツ(ともに参考商品)/ボッテガ・ヴェネタ ボッテガ・ヴェネタ ジャパン フリーダイヤル:0120-60-1966  ブーツ¥225,500(予定価格)/プラダ プラダ クライアントサービス フリーダイヤル:0120-45-1913 タートルネック/スタイリスト私物 リング/デフォー私物

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 ウィレム・デフォーは、待ち合わせ場所である、マンハッタンのダウンタウンにあるレストランに、黒い革のジャケットを着て現れた。携帯電話を耳にあてた彼は、「超多忙な男が歩いてきた」というパロディを演じているように見えた。彼は、先にテーブルに着いていた私を見つけると、派手なジェスチャーで耳にあてた携帯を指さし、目玉をぐるぐる回しながら顔をしかめて、忙しくてやってられないよ、という態度を示した。数秒たつと、彼の申し訳なさそうな態度は、だんだん喜劇っぽく変容してきた。頭を揺らしながら、イタリア人がうんざりした感情を表現するときによくやるような感じで手を振っている。そしてそんな動きのすべてが素晴らしい即興劇のように見えた。

 彼が私たちのテーブルから数十センチ離れたところに佇んで電話を切ると、ジョージア風のカフェの店員が近寄ってきて、彼を温かく迎え入れた。もしかしたら、デフォーのパフォーマンスは店の宣伝にも一役買っているのだろうか? たとえそうだとしても、彼の態度にはわざとらしいところがない。彼は、ほかの客から身を隠さなければならないほど有名ではなく、ほぼ無意識のうちに自分の身体を使ってパフォーマンスしてしまう衝動を抑え込まなくていい程度には、自意識から解放されていた。演技するということは、デフォーにとっては職業というよりも、自分がこの世に存在するひとつの方法で、彼はどこに行くにしても演技をしないではいられないのだ。

 67歳のデフォーはセレブリティとしては珍しい部類だ。彼は恐らくこの世界中で最も有名な性格俳優でありながら、ニューヨークの実験的手法の前衛劇団出身で、舞台で研鑽を積んできた。そもそも、大衆に広く受け入れられることを期待する役者では決してなかったのだ。クリストファー・ウォーケンやレイフ・ファインズと同様、デフォーは映画でも舞台でも、ほかの俳優たちにとっては不快だったり、魅力のない役をあえて選ぶことで、自らを輝かせてきた。彼の場合、ある意味、役を選り好みしないことによって、多くの俳優とは違う際立った存在になることができたのだ。彼が初主演した映画は、キャスリン・ビグロー監督作の『ラブレス』(1981年)で、世間の荒波に揉まれてきたオートバイ乗りの若者を演じた。それ以来、150近くの映画に出演してきた。ヒット作も多かったが、なかにはアメリカ国内で一度も上映されたことがない作品もあり、その多くは若い監督が手がけたものだ。彼はそういった若い監督たちのことをほとんど何も知らなかったが、彼らが「いい感じ」だったから、出演を決めたのだと語る。

 デフォーは今年3月に公開された、46歳のギリシャ人映画監督、ヴァシリス・カツォーピスのデビュー作『Inside(原題)』で主演を務めている。複雑なセキュリティ・システムを擁するミニマリストな高級マンションの内部に閉じ込められた美術品泥棒の役で、生命維持に必要なライフラインがほとんどない危険な場所で生き延びる様子を演じている。カメラは90分間にわたって、ほぼずっとデフォーを映し続ける。この作品は、何カ月もの間、餓死寸前の状況に追い込まれた主人公が、外界から隔絶された究極の孤独に置かれ、室内のトイレすら機能していない状況で(これは重大問題だ)どうサバイバルするかを描いている。この役を演じるために、デフォーは家族や友人たちと離れて6週間「まるで僧侶のように」生活していたと語る。ドイツのケルンにある小さな賃貸アパートで自炊生活もした。この映画で彼は、身体的にも精神的にも素っ裸になり、真の意味で絶望の深淵に引きずり込まれ、さいなまれていく。その状態を、デフォーはのちに私に「天国にいる心地」だったと語った。

HAIR BY ADLENA DIGNAM AT BRYANT ARTISTS USING ORIBE, GROOMING BY AYA IWAKAMI, SET DESIGN BY ROBERT SUMRELL, PRODUCTION BY HEN’S TOOTH, DIGITAL TECH BY JARROD TURNER, PHOTO ASSISTANTS: ARIEL SADOK, DYLAN GARCIA, TERRY GIFFORD, SET ASSISTANT: ERIN TURNER, TAILOR: EUGENIO SOLANILLOS. STYLIST’S ASSISTANT: VERITY AZARIO

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