TEXT BY CHIKAYO TASHIRO
恋の相手は人じゃない⁉
【1】『マイ・デーモン』本当の悪魔と悪魔のような女性の恋
このドラマはなんと悪魔が主人公。ある理由から、人間の欲望を叶える代わりに10年後、その人物の命を奪うという取リ引きを繰り返しながら200年以上生きています。一方、両親を亡くすも、両親のビジネスパートナーだった財閥会長に溺愛され、若くして女性経営者になっているヒロイン。彼女は見た目はかわいいけれど、エルメスを着た悪魔と異名をとるほど、恐れられている存在です。そんな悪魔のような女性と本当の悪魔が繰り広げていくファンタジーラブストーリー。悪魔が出てくるとなると一見不気味ですが、ラブコメの王道設定がいくつも出てくる見目麗しい作品になっています。
ある出来事がきっかけで悪魔の能力の源となるタトゥーがヒロインの手首に移ってしまい、能力が失われてしまったことから、とにかくヒロインの手首をつかんで充電が必要となり、だからこそ財閥家の相続問題で命を狙われている彼女を守るためにボディーガードをする羽目になり、さらには契約結婚にまで至っていきます。
『トッケビ』へのオマージュなのか、『トッケビ』を思わせるシーンがあちこちに出てくるのですが、なんといっても悪魔を演じるソン・ガンの人間離れした超絶な美しさやスタイルの良さと、ヒロイン役のキム・ユジョンの硬質な愛らしさというビジュアルの魅力がこのドラマの真骨頂。二人の丁々発止のやり取りがテンポが良くて愉快だし、背景が財閥と財団なのでゴージャスだし、ファンタジードラマにふさわしくキラッキラな画面演出で、とにかく目の保養になります。そんな風に楽しく見ていくと、朝鮮時代に端を発する二人の悲しい因縁がわかってきて、そこから切ない展開になるのが韓国ドラマチックですね。美男美女の現代劇と時代劇のそれぞれの美しさが堪能できるドラマです。
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【2】『星から来たあなた』異星人とトップ女優の極上のおとぎ話
こちらは宇宙からやってきた異星人がトップ女優と繰り広げていくロマンチック・ラブコメディーです。朝鮮王朝実録に書かれていた400年前の未確認飛行物体に関する記述を基に脚本家がイメージを膨らませて書いたお話。異色の題材でありながら、荒唐無稽と思うまもなく、すっとドラマの世界に引きこまれてしまう、極上のおとぎ話です。
元いた星に帰る日を3ヶ月後に控えた期間限定の恋愛がどうなっていくのか、という、切なさを伴った、胸キュンの笑えるラブコメディですが、そこにサイコな殺人者が絡んでくることによって、サスペンスの緊張感も加わります。宇宙人らしくスーパーな能力を持つ男が、その能力でヒロインを守っていくところも女子目線としては魅力です。宇宙人を演じるキム・スヒョンは、400年生きてきて、達観して浮世離れした感じが、まるで高尚な両班のよう。目元のアップが何度も出てきて、かすかな眼差しの変化で微妙な心情を表現。ヒロインに向けるちょっとあきれた顔や彼女が気になってしかたがない顔など、普段は無機質な彼の見せる、ふとした表情の変化に持っていかれます。
そして、チョン・ジヒョン演じるヒロインが、子役時代から人気者という設定で、傍若無人で、言いたい放題の、少々はすっぱな女性なんですが、本当にかわいい!コメディエンヌぶりを存分に発揮していて、恋に落ちずにはいられないキュートさを見せています。壊れた姿もすごく笑えますし、クルクルと動く表情を見ているだけで幸せで、女性でもそのキュートさにメロメロになってしまいます。
とにかく、主人公ふたりのやりとりを見ているだけで眼福で、顔がニマニマしてしまいます!ドラマを見ているあいだじゅう、夢を見せてくれて、終わった後もしばらく、ふんわりと包み込まれたような幸せな後味が残ります。
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【3】『キミはロボット』人口知能ロボットと人間の女性の愛
こちらは人工知能ロボットが主人公で、ロボットと人間の女性との愛を描いたファンタジー・ラブストーリーです。ロボット研究の博士が引き離された幼い息子恋しさに作り上げた、息子そっくりの人工知能ロボット。息子の成長に合わせるように改良を重ねて、どこから見ても人間そっくりの青年ロボットなんです。そんな時、本当の息子が事故に会い重傷を負ってしまうので、御曹司である息子の居場所を維持するために、母親と息子の側近は一致団結して、ロボットを息子の代わりに会社に送り込むことに。そこに息子のボディーガードをしていた女性が絡んでくるのです。最初は傍若無人な息子を嫌っていたボディーガードの女性が、ロボット相手に心を痛め、どんどん惹かれていくのですが、果たしてこの恋はどうなってしまうのかというのが大きな見所です。
このドラマはソ・ガンジュンが、ひねくれて育ってしまった人間の息子と素直で純真なロボットの一人二役を演じているのですが、このロボットがとっても魅力的。人間が泣いていたら抱きしめるのが原則で、手を握れば嘘を見抜けて、災害時には災害モードが働いてスーパーマンのように助けてしまう。優しくてかっこよくて無邪気で可愛くて。それでいて人間の身代わりだということを知っているからどこか不憫なんですね。さわやかで邪気のない、口角をきゅっと上げた微笑みはあどけなくて、とっても愛おしく思えます。またソ・ガンジュンのロボット演技が素晴らしくて、人間そっくりなんだけど、細かいところでもうロボットにしか見えません。
一方人間の息子は母親の愛を知らずに育っているので生意気で傲慢で屈折していますので、この本物の息子が目覚めてから事体は複雑になっていきます。自分そっくりのロボットが自分よりも優秀で人々から愛されていたらどうなるのか?その複雑な感情から、まるで善と悪の対決のようになっていくので、そんな二役演技をお楽しみください。
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“音楽”が奏でる物語
【1】『マエストラ』天才女性指揮者が抱える秘密とは……
世界にたったの5%しかいないとされる女性指揮者が主人公のドラマです。
このヒロイン、世界で活躍してきて20 年ぶりに母国の韓国に戻り、ちょっと落ちぶれているオーケストラの指揮者に就任するところから始まります。有名人だし、天才なのでカリスマがあふれていて態度も大きいというか性格もきつくて、強烈です。
しょっぱなから、コンサートマスターを変えたり大胆な提案をするので楽団員たちは文句たらたら。でも一回演奏を指揮しただけで音の外れ方とか細かいところまで指摘して団員達を黙らせるずば抜けた能力を持っています。ここまでの流れは『ベートーベン・ウィルス ~愛と情熱のシンフォニー』や『ストーブリーグ』的な、落ちこぼれ集団にエッジのきいた存在が入ってきて紆余曲折を経ながら立て直していくドラマかなと思わせるのですが、この作品はそういうヒューマンドラマではないんですね。主人公には抱えている秘密があって、そこに関するミステリーや、夫や昔の恋人との愛憎などが複雑に絡み合い、さらに楽団員の殺人事件なども入ってきて、このドラマはどの方向に向かうんだろうと目が離せなくなります。
その中で、ヒロインが若いころに出会った元恋人で投資会社代表の自由気ままに生きている男が、ヒロインに向ける屈折した愛情がツボです。彼女を意のままにしたくてオーケストラまで買い取ってしまったり、彼女を離婚させようとしたり、飄々とした顔でネチネチと彼女に執着していくんですが、その一途さがいい。なんだかんだ言ってヒロインへの純情を貫き通している姿にホロリときます。
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【2】『密会』20歳のピアノ青年と年上女性の情愛
40代の女性と20歳の天才ピアニストの愛を描いた、情感あふれるラブストーリーです。ヒロインは、芸術財団の企画室長として、財団のオーナー一族のお世話をしたり、不正の手伝いにも手を染めたりしながら、したたかに優雅に暮らしています。彼女の周りはみんな高尚ぶっているけれど、仮面の下では出世欲、おべっか、嫉妬、不正と汚いものが渦巻いています。そんな世界で生きてきたヒロインが、ある日、純粋で、きらめくピアノの才能を持つ青年に出会ってしまうんですね。20歳も年が離れているのに、一緒にピアノの連弾をした時から感性が触れあい、魂が共鳴しあっていくのです。
一見すると、堂々たる女神と野性味のある子犬のようなカップルなのですが、年下男子が何も恐れずにまっすぐにヒロインに向かっていく切実な姿が、ズシンと胸に響きます。ヒロインも、そんな彼を最初は毅然と制しているものの、感性豊かな年下男の熱い気持ちに理性がどんどん崩され、彼女の生き方そのものまでもが大きく揺さぶられていきます。
そして音楽が大きなポイント。ドラマで終始流れるクラシカルなピアノの調べが官能の響きとなってふたりを激しい恋に導いていきますが、ピアノを連弾するシーンはそのへんのベッドシーンよりも官能的で、見ていて照れてしまうほど。上流階級の表の優雅さと、その裏側に内在しているドロドロとした醜さと、純粋な愛という3つの局面をこっそりと覗き見しているような、人物たちの秘め事を見ている気分にさせられます。
肌にまとわりつくような独特な質感を持っているドラマで、そのなんとも言えない雰囲気に絡み取られるように引きこまれるでしょう。不思議な余韻に満ちたドラマです。
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【3】『ブラームスは好きですか?』天才ピアニストと学生バイオリニストの青春
音楽大学を舞台にした、孤高の天才ピアニストとバイオリン専攻の女子学生が繰り広げる青春ラブストーリーです。
タイトルのブラームスは、ブラームスが、恩師であるシューマンの妻クララを愛していたという三角関係をモチーフにしているところから来ています。
このドラマのヒロインは、バイオリンの魅力に遅まきながら気が付いて、4回のチャレンジの末、26歳でようやく音大に入学したという女性。一方の、ピアノの天才として知られる青年はピアノを弾いていてもちっとも幸せを感じなくなっている孤独な心の持ち主です。音楽の才能という点で対照的なふたりは、それぞれに片思いの相手がいながら、一緒に時間を過ごすうちに少しづつ心を通わせていくようになります。
天才ピアニストを演じるキム・ミンジェの端正な顔立ちが孤高の芸術家の雰囲気にぴったりでとっても素敵。パク・ウンビン扮する女子学生との、距離感を保ちながらのふたりのやり取りがこそばゆいくらいですが、微笑ましくて、このふたりの丁寧な気持ちの通い合いがとってもいいんです。でも想いが高まるにつれ、抑えきれない想いがあふれてきて激情に駆られる場面もあって、お似合いのふたりのしっとりした恋のはぐくみにじんわり来ます。いくら好きなことでも自分の才能とどう折り合いをつけるのか、美しいメロディーを背景に、若き音楽家たちが才能と残酷な現実のはざまで傷ついていく姿や、音楽の世界に生きる者同士の繊細で情感あふれた気持ちの紡ぎあいが見どころのドラマです。
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