発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選!

BY REIKO KUBO

東京国際映画祭で3冠達成。筒井康隆の原作を不穏な世界観の中で見事に映像化した『敵』

画像: 原作者の筒井康隆は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を評した ⓒ2023 TEKINOMIKATA

原作者の筒井康隆は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を評した

ⓒ2023 TEKINOMIKATA

 筒井康隆小説を映像化した名作は『時をかける少女』『パプリカ』など数々あるが、そこに新たに加わるのが映画『敵』だ。監督は、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督。主人公は大学を退官したフランス文学者の渡辺儀助、77歳。妻に先立たれた男やもめだが、祖父の代からの日本家屋で自ら料理し、コーヒー豆を挽き、晩酌を楽しむ丹精な暮らしを心がけている。出版社勤務の教え子らは今でも彼を慕って訪れ、行きつけのバーでは旧友やフランス文学専攻の現役女子大生に迎えられる。彼は退屈と欲望を飼い慣らし、貯金が底をつく頃にはこの世を去ると達観を口にしていたが、書斎のパソコンの画面に「敵がやってくる」という文字が現れて……。

画像: 東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞を獲得した長塚京三(左)。若手実力派として着実に存在感を増している河合優実(右)の演技にも注目 ⓒ2023 TEKINOMIKATA

東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞を獲得した長塚京三(左)。若手実力派として着実に存在感を増している河合優実(右)の演技にも注目

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 儀助の丹精な暮らしが少しずつぞんざいになり、穏やかな日常が静かに狂い出す。しかし、それは本当に「敵がやってくる」というメッセージが現れた日が境目だったのか? そもそも「敵」とは? 陰影深いモノクロの世界が不穏に揺らぎ、ホラーの様相さえ見せ始め、スリル満点。2024年東京国際映画祭の東京グランプリと最優秀監督賞に輝いた本作で、インテリ然とした元大学教授の老い、妄想、恐怖、オブセッションを赤裸々に表現してみせた長塚京三は同最優秀男優賞を受賞。元大学教授の自尊心をくすぐる女子大生に河合優実、教え子の編集者に瀧内公美、そして亡き妻に黒沢あすかと配役の妙も光る。その他の出演は松尾貴史、中島歩ら。

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『敵』
1月17日(金)テアトル新宿ほか全国公開
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トニー・レオン×アンディ・ラウ、香港2大スター20年ぶりの共演で胸熱!『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』

画像1: ©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved

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『インファナル・アフェア』シリーズ以来、トニー・レオンとアンディ・ラウが20年ぶりに共演を果たした『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』。『インファナル・アフェア』シリーズの脚本を務めたフェリックス・チョンが監督・脚本を務め、製作費70億円を投じて香港のバブル狂乱時代を再現し、一大エンターテイメント映画に仕上げた。時は中国返還が現実味を帯びてきた、1980年代の香港バブル経済期。身一つで香港に渡ってきたチン・ヤッインは違法取引を重ねてグループ企業を拡大し、資産100億ドルを稼ぎ出した。そんなチンの金融詐欺と汚職を摘発すべく、捜査官ラウ・カイユンは十数年をかけて彼を追う。

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 追われるチンをトニー・レオン。執念でチンを追う捜査官にアンディ・ラウ。香港の2大スターが『インファナル・アフェア』とは逆の立場でスリリングな攻防を繰り広げる。時に揉み手しながらヘラヘラし、時に情け容赦ない闇社会の凄みを効かせる天才詐欺師を生き生きと演じるトニー・レオンは香港電影金像賞で主演男優賞を受賞。絢爛豪華で痛快な金融エンターテインメントは同賞6部門で受賞に輝いた。

 しばらく元気のなかった香港映画だが、2022年頃から往時を感じさせるヒット作が続いている。現在、日本公開中の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』も背景は本作と同じ1980年代。10億円をかけた圧巻の九龍城砦セットを舞台に繰り広げられるアクション・ドラマと、血湧き肉躍る大エンターテインメントが立て続けに日本で公開されるのも楽しい!

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『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』
1月24日(金)TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開
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現代の生きづらさと丹念に向き合い、本年度の主要映画賞で期待が高まる話題作『リアル・ペイン〜心の旅〜』

画像: 本作でゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を受賞したキーラン・カルキン(左)、監督・脚本・製作・主演の一人4役をこなしたジェシー・アイゼンバーグ(右) ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

本作でゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を受賞したキーラン・カルキン(左)、監督・脚本・製作・主演の一人4役をこなしたジェシー・アイゼンバーグ(右)

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 デジタル広告会社勤務で妻と息子とブルックリンに暮らすデヴィッドと、今は無職のベンジー。従兄弟同士で幼い頃は兄弟のように仲が良かったけれど、近年は疎遠になっていた。そんな彼らが、ホロコーストを生き延びた祖母の遺言に従い、彼女の故郷ポーランドへツアー旅行に出かける。英国人の歴史ガイドが率いる史跡ツアーの一行は、デヴィッドとベンジーをはじめとしたユダヤ系5人と、ジェノサイドを経験後にカナダに移住し、ユダヤ教徒となったルワンダ出身の男性の計6名。生真面目なデヴィッドは、辛い過去を抱えた破天荒なベンジーをサポートするつもりでいたが、気づけばベンジーはツアー・メンバーやガイドの心を掴み、ツアーのムードメイカーともなっていて……。

画像: 『ゾンビランド』シリーズでアイゼンバーグと共演したエマ・ストーンが、彼の監督第1作『僕らの世界が交わるまで』と同様に、本作のプロデュースに名を連ねている ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

『ゾンビランド』シリーズでアイゼンバーグと共演したエマ・ストーンが、彼の監督第1作『僕らの世界が交わるまで』と同様に、本作のプロデュースに名を連ねている

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 ポーランドの作曲家ショパンの名曲が寄り添う本作は、『ソーシャル・ネットワーク』の演技でブレイクしたジェシー・アイゼンバーグが自らのポーランド旅行の体験をもとに紡ぎ出した監督第2作。ホロコーストの悲劇、従兄弟2人が探るアイデンティティと彼らが抱える生きづらさ、そして現代で繰り返し起こる紛争。地続きで描かれる傷みが静かに浮かび上がる一方で、凸凹従兄弟コンビが醸し出す寂しさと切なさ、ユーモアと互いを思いやる優しさが響き合い、観る者の心を震わせる。破天荒で孤独なベンジーをチャーミングに演じるキーラン・カルキンの演技にも魅了されずにはいられない。彼は本作でゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を受賞。監督・主演のアイゼンバーグとともに、本年度アカデミー賞ノミネートの呼び声も高い。

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『リアル・ペイン〜心の旅〜』
1月31日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
公式サイトはこちら

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