与えられた役柄、そして自分自身と真摯に向き合い、まだ見たことのない自分を求め続ける俳優・長澤まさみ。着飾ることも、取りつくろうこともなく、ただ一点を見つめる彼女の姿は、柔らかく、そして力強い。

BY SATORU YANAGISAWA, PHOTOGRAPHS BY KATSUHIDE MORIMOTO, STYLED BY KEITA IZUKA, HAIR BY KOTARO, MAKEUP BY SUZUKI

画像: 今回は「今まで見たことのない自分を見てみたい」という長澤まさみ本人の提案により撮影テーマが決定した。 トップス¥22,000/ベースレンジ エスメラルダサービスドデパートメント www.esdepartment.com

今回は「今まで見たことのない自分を見てみたい」という長澤まさみ本人の提案により撮影テーマが決定した。

トップス¥22,000/ベースレンジ
エスメラルダサービスドデパートメント www.esdepartment.com

画像: なめらかな肌と、シャープな印象をもたらすダークトーンの装いとのコントラストが、彼女が併せもっている柔らかさと強さ、その二面性を表しているかのよう。 イヤーカフ¥44,000/ジョージ ジェンセン ジョージ ジェンセン ジャパ TEL. 0120-637-146 その他/スタイリスト私物

なめらかな肌と、シャープな印象をもたらすダークトーンの装いとのコントラストが、彼女が併せもっている柔らかさと強さ、その二面性を表しているかのよう。

イヤーカフ¥44,000/ジョージ ジェンセン
ジョージ ジェンセン ジャパ TEL. 0120-637-146 
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画像: 淡いベージュのトーンとコットン生地が軽やかなオーバーコート。ゆとりのあるシルエット、そしてロングレングスによるプレーンな面持ちのコートをあえて無造作に、体を包み込むようにまとう。そんな感覚が自分らしさを生む。 コート¥230,000/ルメール エドストローム オフィス TEL.03-6427-5901 その他/スタイリスト私物

淡いベージュのトーンとコットン生地が軽やかなオーバーコート。ゆとりのあるシルエット、そしてロングレングスによるプレーンな面持ちのコートをあえて無造作に、体を包み込むようにまとう。そんな感覚が自分らしさを生む。

コート¥230,000/ルメール
エドストローム オフィス TEL.03-6427-5901
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画像: ヴィンテージライクなレザージャケットは、メンズのコレクションから。フライトジャケットをもとにしたマスキュリンなレザーアイテムを、キャミソールに羽織る。そんな自由な発想が、まだ見たことのない自分へといざなってくれる。 ブルゾン¥522,500/バリー バリー銀座本店 TEL.03-6263-9130 パンツ¥41,580/アモーメント cs@amomento.jp その他/スタイリスト私物

ヴィンテージライクなレザージャケットは、メンズのコレクションから。フライトジャケットをもとにしたマスキュリンなレザーアイテムを、キャミソールに羽織る。そんな自由な発想が、まだ見たことのない自分へといざなってくれる。

ブルゾン¥522,500/バリー
バリー銀座本店 TEL.03-6263-9130 
パンツ¥41,580/アモーメント cs@amomento.jp 
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画像: ブラックを基調としたタイトな服と相反するようにベッドに横たわり、安心しきったかのような表情で視線を向ける。相手との距離感が伝わる、"インティメイト"な世界。 トップス¥22,000/ベースレンジ エスメラルダサービスドデパートメント www.esdepartment.com 靴¥108,900/ジャンヴィト ロッシ ジャンヴィト ロッシ ジャパン TEL. 03-3403-5564 その他/スタイリスト私物

ブラックを基調としたタイトな服と相反するようにベッドに横たわり、安心しきったかのような表情で視線を向ける。相手との距離感が伝わる、"インティメイト"な世界。

トップス¥22,000/ベースレンジ
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靴¥108,900/ジャンヴィト ロッシ
ジャンヴィト ロッシ ジャパン TEL. 03-3403-5564 
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「演じるということに対して説得力をもった俳優になりたいし、だからこそ"実在感"みたいなものが大切だと思う」

画像: ジャケット¥170,500/バンブーロジャークォン エスメラルダサービスドデパートメント www.esdepartment.com その他/スタイリスト私物

ジャケット¥170,500/バンブーロジャークォン
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「今まで見たことのない自分を見てみたい」
このファッション・ストーリーに取り組むにあたり設けられたミーティングの席で、長澤まさみはそんなことを口にした。

「仕事を始めたばかりの頃、スクリーンに映った自分を初めて見たときの記憶がいまだに残っているんです。『私ってこんな声なんだ』から始まり、『こういう表情をするんだ』とか、初めて知る自分がそこにいました。鏡に映る自分は反転していますよね? 本当の姿って、実は見られないんです。私が初めて自分の姿をまじまじと見たのは、スクリーン上だった。自分が作品のなかで動いている、生活している姿を見たときの"あの感覚" が、俳優を続けていくうえで大切なものなのかなって思っていて。やっぱり作品ごとに違う自分を見ていたいし、見たことのある自分を見たくない。変わっていく自分を知りたいし、どんな自分になるのかもすごく興味深い。だからこそ、"見たことのない自分" というものを探している気がします」

 そんな彼女が、ふと発したキーワードが"インティメイト(intimate)"。"親しい""親密な" と訳される言葉だが、それは見る者と見られる者の間に漂うムードであり、撮る者と撮られる者の距離感にもあてはまる。

「お芝居については、もう条件反射的にカメラを意識することはありませんが、そういう部分で言うと、静止画はまだ自分のなかでは不得意分野。でも、せっかくの機会をいただいているわけですから、スチール撮影も楽しみたいという気持ちが、最近ちょっとずつ湧き上がってきて。じゃあ、自分が好きな写真ってなんだろう、どんな写真に対して『いいな』って思うんだろう、というヒントを探しに写真展に行ったり、写真集を見ていたりしたなかで、たまたま目にしたのが荒木経惟さんが奥さまの陽子さんを撮影した写真だったんです。その写真のなかに生活がある、はっきりと実在している、そんな感覚を覚えました。そして、あんなふうに相手との距離感が伝わる写真は、これまで私が撮っていただいたもののなかでも、そんなに多くはなかったと感じたんです。写真集もそのたぐいに入るのかもしれませんが、私の場合、20歳の頃に撮った写真集くらいかなという印象があって。だから、初めてスクリーンで自分を見たときの自分を思い出すように、そういう自分を久々に見てみたくなった。今の自分って、どんな自分なのか、ということが気になったからだと思います」

 それはある意味、原点に立ち返る時期ということなのかと水を向けると、「つねに原点回帰しなければならないと、俳優業をやっていると思うことがあります。なので、その先に行きたいっていう思いが強いです。今まで積み重ねたものをもっと伸ばして、苦手なものとも向き合って、よくしていく。自分をもっともっと育てたい」と言いきる。

「演じるということに対して、もっと説得力をもった俳優になりたいですし、だからこそ"実在感" みたいなものがすごく大切だと思っています。それには、普段の生活から自分の感性をどう育んでいくか。生き方って大事ですよね。せっかくの命というか人生を、もう余すことなく使いたい。自身と向き合う時間を大切にしながら、とにかく自分にフォーカスして生きていきたいですね」

 この4 月からは、森山未來との14年ぶりの共演も話題の舞台作品、Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』に出演。そして6 月には、人形をめぐるミステリーを描いた主演映画『ドールハウス』の公開も控えている。

「監督の矢口史靖(しのぶ)さんは、とにかく観客を驚かせたいという思いで作品づくりをされていて、"見たことのない自分" というものが矢口さんの作品にはある気がして。何が正しいのかわからなくなるような錯覚がどんどん生まれていって、コントロールされちゃう怖さというか、今までに感じたことのない不思議な世界に私自身も引き込まれていきました」

 彼女が求めた"インティメイト" とは、自分自身との距離感でもあるのかもしれない。これからも長澤まさみは、まだ見ぬ自分と適切な距離で向き合いながら、観る者の心を動かしてくれるだろう。

画像: 「演じるということに対して説得力をもった俳優になりたいし、だからこそ"実在感"みたいなものが大切だと思う」

長澤まさみ(ながさわ・まさみ)
1987年静岡県生まれ。2000年に俳優としてデビューし、多くの映画やドラマ、舞台に出演。森山未來とのダブル主演による舞台、Bunkamura Production 2025『おどる夫婦』が4月10日からTHEATER MILANO-Zaほかにて上演。初夏には主演映画『ドールハウス』の公開も控える(6月13日公開)。

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