BY REIKO KUBO
ゼンデイヤとロバート・パティンソンが“愛する人を本当に知るとは?”を問う『ドラマなふたり』

© 2026 Dramatic Movie Rights LLC. All Rights Reserved.
イギリス人キュレーターのチャーリーは、ボストンのカフェで文芸編集者のエマに一目惚れ。恋に落ちた二人は2年の交際を経て、めでたく結婚へ――。甘いロマンティック・コメディ風に始まる『ドラマなふたり』だが、監督クリストファー・ボルグリといえば、『シック・オブ・マイセルフ』『ドリーム・シナリオ』で承認欲求や世間のまなざし、アイデンティティの揺らぎをブラックユーモアたっぷりに描いてきた鬼才。一筋縄ではいかない。結婚式を一週間後に控えた二人は、付添人を引き受けてくれた親友夫妻を誘い、式で出す料理の試食会へ。広いサロンにポツンと置かれたテーブルを囲み、ほろ酔いの4人は過去の愚行を告白するゲームを始める。それぞれの告白も、え!?と耳を疑うものだが、最後にエマが明かした過去は超弩級。その場を凍りつかせる。エマの不自由な耳の秘密にも戦慄が走る。

© 2026 Dramatic Movie Rights LLC. All Rights Reserved.
ロバート・パティンソンは、『ミッキー17』『DIE MY LOVE/ダイ・マイ・ラブ』にも通じるオロオロぶりで、エマを理解したい、でも彼女の闇が怖い――と動揺しまくるチャーリーを好演。一方、ゼンデイヤは、誰もが羨む魅力的な恋人から、大きな闇を抱えた脆さを覗かせる。アラナ・ハイム演じるレイチェルのエキセントリックな反応も二人の関係を追い込んでゆく。さて、どうする!? 結婚式は一週間後だ。
厄介な事態に動揺しまくるチャーリーをクスッと笑いながら、いつしか“愛する人を本当に知るとはどういうことか。過去の罪をどこまで許せるのか” と命題を突きつけられる。監督ボルグリのゾクゾクさせる挑発が冴える話題作だ。
8月21日(金)公開|映画『ドラマなふたり』本予告
youtu.be『ドラマなふたり』
8月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
公式サイトはこちら
サリー・ポッターの原点、伝説のフェミニズム映画『ザ・ゴールドディガーズ』

The Gold Diggers © 1983 Sally Potter, Rose English, Lindsay Cooper
バージニア・ウルフの小説をティルダ・スウィントン主演で映画化した『オルランド』や、主演も兼ねた『タンゴ・レッスン』などの映画で知られるイギリス人監督サリー・ポッター。その長編監督デビュー作にして、1980年代フェミニズム映画の金字塔として評価が高まる『ザ・ゴールドディガーズ』(1983)が、ついに日本で劇場初公開される。サリー・ポッター自らの怒りの歌声と、雪原をゆく一群の金鉱掘りのシーンで始まる映画の中心は、黒人女性セレステと、白人映画スターのルビー。トリュフォー映画『華氏451』等のジュリー・クリスティがルビー役、コレット・ラフォンがセレステ役を演じる。
銀行の単純な入力作業に飽き足らないセレステは、数字の意味を知ろうとするが、男性上司に必要ないと切り捨てられる。そして、美しく、無力な偶像として神輿に乗せられた女優ルビーと出会い、金、記憶、欲望、身体をめぐる旅へと向かう。そんな二人を捕らえようと、黒いスーツに身を包んだ銀行マンたちが追うが……。

The Gold Diggers © 1983 Sally Potter, Rose English, Lindsay Cooper
既成の映画表現と、男性中心の価値観を問い直すことに挑んだこの意欲作は、サリー・ポッター、前衛ロックグループ「ヘンリー・カウ」等で活躍したミュージシャンのリンジー・クーパー、そしてパーフォーマンス・アートの先駆者ローズ・イングリッシュによる共同脚本。荒野に建つ小屋での幼少期、ダンスパーティ、白馬と森、モノクロームの美しい闇を操りながら、女性二人の夢幻の旅を浮かび上がらせるのは、シャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1090 コメルス河畔通り』のカメラも務めたバベット・マンゴルト。
『ザ・ゴールドディガーズ』
『ナイトシフト』とともに8月22日(土)、渋谷ユーロスペースにて同時公開、ほか順次
公式サイトはこちら
女たちの欲望、孤独、階級を映し出す珠玉の3作『クロード・シャブロル傑作選 vol.2』

『ヴィオレット・ノジエール』(1978年) © 1977 – Filmel Production / Edition René Chateau.
ヌーヴェル・ヴァーグを代表する監督の一人として登場し、独特のサスペンスとフランスのブルジョワ社会への鋭い観察を結びつけたクロード・シャブロル。長いキャリアを通し、フランス家庭の奥に潜む欲望や秘密を描き続けた鬼才の、今に響く3作品が公開される。待望の日本初公開となる『ヴィオレット・ノジエール』(1978年)では、若きイザベル・ユペールが少女の無垢さと狡猾さ、欲望と孤独を併せ持つ謎めいた存在を演じ、初のシャブロルとの顔合わせを鮮烈に飾る傑作だ。ジョルジュ・シムノン原作の『ベティ』(1992年)では、マリー・トランティニャンがブルジョワ家庭から追放された女の危うさを体現し、ステファーヌ・オードランがベティを静かに見つめる側に立つ。そしてルース・レンデルのベストセラーを映画化した『沈黙の女』(1995年)は、家政婦ソフィー(サンドリーヌ・ボネール)と郵便局員ジャンヌ(イザベル・ユペール)が出会い、孤独と秘密を共有することで不吉な連帯を築いていく。ソフィーを雇い入れるブルジョワ家族は差別主義者でもなく、むしろリベラルで文化的な一家だが、彼らの無意識の階級意識が女たちの共謀をスリリングに刺激する。

『ベティ』(1992年) ©︎MK2
3作品を通し、女たちを追い詰めていく何気ない会話の亀裂や、日常に潜む抑圧を炙り出し、女優たちの繊細かつ不穏な演技によって、異常なのは彼女たちなのか、それとも彼女たちを排除する社会なのかと見る者に問い続けたクロード・シャブロル。その冷ややかな魅惑を堪能できる絶好の機会が到来する。
クロード・シャブロル傑作選 vol.2
『ヴィオレット・ノジエール』『ベティ』『沈黙の女』
8月28日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネマリス、Morc阿佐ヶ谷ほか全国順次ロードショー
公式サイトはこちら






