BY T JAPAN
古都ならではの風情ある軒並みが美しい京都・姉小路通り。11月21日、HaaTの新たな店舗が誕生した。風格ある建物の入り口に、桜色に染められた麻ののれんが清々しい。

約150年前、明治初期に建てられた京町家の屋根や構造のみを継承し、吉岡徳仁がファサードから建築までを新たに設計した、HaaTの新たな店舗。
「春になると町を染め、ひとの気持ちも浮き立たせる桜のように、ワクワクとしたときめきを大切に届けたいと思ったのです」。トータルディレクターの皆川魔鬼子は、この空間のキービジュアルを桜色に決めた理由について、そう語る。

桜色のアルミニウムが華やいだ空気を醸す。右側の空間はギャラリーの機能も備える。
町屋の建築と空間設計を手がけたのは、吉岡徳仁。既存の屋根や構造を継承しながら、新たな建築として設計。桜色のアルミニウムが、歴史と現代のコントラストを生み出している。見上げれば、どっしりとした木材が幾重にも高く組まれ、その頂きに天窓が設けられている。四角く切り取られた青空から注がれる柔らかな光が、店内に軽やかな影を躍らせる。店の奥の窓の向こうには、“借景”だという枯山水の坪庭。眺めるうちに、こちらの息も不思議と調う気がする。

店内の壁や棚も、ほんのり淡い桜色。手仕事の温もりと現代的な無機質さ、伝統と革新、相反する要素が融合し、共存する空間
PHOTOGRAPHS: © ISSEY MIYAKE INC.
Architecture and Space design: TOKUJIN YOSHIOKA + TYD
Photography: Masaya Yoshimura (Copist)
気持ちのよい空間にゆったりと並ぶ服は、生地そのものにすこやかな息遣いが感じられるよう。京都で生まれ育った皆川が、夏の風物詩であるステテコから着想を得た「京ちぢみ」、愛知県の有松絞りのひとつ「蜘蛛絞り」、インドの刺し子の「カビラ」、どれもHaaTのシグネチャーとなるテキスタイルである。国内外各地の職人による伝統的な手技に、時代の先端の空気感とテクノロジーを織り込んで仕上げられた素材は、軽やかでありながら趣き深く、唯一無二のたたずまい。
長年、京都の職人とものづくりを行ってきたHaaT。古いものを活かしながら、同時に常に新しいものを取り入れ、融合し、新たな価値観を生み出してきた京都。「そんな街に共鳴し、職人たちの貴重な手仕事を守りながら、新しいものづくりを発信していきます」。この桜色に染まる空間から始まる物語が楽しみだ。
HaaT/ KYOTO
住所:京都府京都市中京区姉小路通柳馬場東入菊屋町569
営業時間:11:00〜20:00
TEL. 075-748-1153
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