さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第8回はショコラティエのジャン=ポール・エヴァンさん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 かつて日本において、チョコレートは“甘いもののひとつ”にすぎなかった。その地位を高め、チョコレート文化を花開かせ、浸透させることに大きく貢献したのが、ショコラティエ(チョコレート職人)のジャン=ポール・エヴァンだ。彼がつくり出すチョコレートの美しさ、香り、味わい、余韻はまるで“食べる芸術作品”。2002年に上陸して以来、日本のチョコレートの世界を極彩色に塗り替えてきた。

 その天賦の才のルーツを探るべく、幼少期について尋ねてみた。「僕はフランスの田舎生まれで、父は果樹の栽培家。母はその手伝いをしたり、牛や山羊の世話を担っていました。母はとても料理上手で、特にマドレーヌは思い出の味です。甘いもの好きが高じて、僕自身も父が栽培した果実を使って、リンゴのタルトなど伝統的なスイーツを作るようになりました。最初は母のレシピを参考にしていたけれど、そのうち我流で作るようになり、お菓子の本を読んできちんと作るようになったのはそのあと。父と母がすごく喜んで食べてくれたのが、子ども心にただただうれしくてね」

画像: (左より)「フィナンシェ ショコラ」、「マドレーヌ オランジェ」各¥292(税込) 食べる直前にオーブンでほんの少し温めるのがエヴァンの食べ方。表面はカリッ、中はふわふわ。手で割ると、よりバターの香味が立ちのぼるのだそう ジャン=ポール・エヴァン 伊勢丹新宿本店 TEL.03(3352)1111(代表) www.jph-japon.co.jp

(左より)「フィナンシェ ショコラ」、「マドレーヌ オランジェ」各¥292(税込)
食べる直前にオーブンでほんの少し温めるのがエヴァンの食べ方。表面はカリッ、中はふわふわ。手で割ると、よりバターの香味が立ちのぼるのだそう
ジャン=ポール・エヴァン 伊勢丹新宿本店
TEL.03(3352)1111(代表)
www.jph-japon.co.jp

 パティシエ街道まっしぐらかと思いきや、「学生時代は電子工学を学びたいと思ったんだけど、なかなかうまくいかなくて」と言う。「改めて、『自分が楽しいことって何だろう?』と追求した結果、ふと思い浮かんだのがお菓子の世界。18歳でパリのインターコンチネンタルで働き始めた頃は、チョコレートよりもガトーと呼ばれるケーキのほうに興味があって、そちらに注力していました」

 チョコレートに魅了されたのは、その後しばらく経った24歳の頃。「原料であるカカオの味わいに衝撃を受けて。当時は、今ではポピュラーになった単一農場のカカオを使ったチョコレートはほとんど存在せず、いろいろな産地を混ぜ合わせたものしか出回っていなかった。どんなカカオがあって、産地ごとに味はどう違うのか? もっと自分のレシピの精度を上げるには、どのカカオを使うべきか? 知れば知るほどカカオに対しての探究心が湧き、その魅力に取り憑かれていきました」。62歳になった今もカカオへの情熱は冷めやらず、変わらずレシピを考案し続けている。「朝からしっかり取り組んで考える日もあれば、手を動かしているうちにふと、『何かできるんじゃないか』とひらめくことも。レシピを生み出すシーンはいろいろ」だと語る。

 

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