TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
京都に来た友人からの食のリクエストで一番多いのは、やっぱり和食。今回は、2023年1月16日にオープンしたばかりの和食の最新アドレス「ととよし」を紹介。
京都・御所南「ととよし」

¥13,000のコースは水物を含む10品前後。炭火で焼いた香ばしさと柚子の香りが鼻をくすぐる、カマスの柚庵焼
三条新町のバー「酒陶 柳野」の新展開となる「ととよし」。「バーが開いた和食店!?」と驚かれるかもしれないが、「酒陶 柳野」は奥の厨房に料理人が控えているバーである。カウンターには酒瓶ひとつなく、土壁には花一輪が掛けられた、まるで茶室のようなミニマルな空間ながら、「きずし(鯖の酢〆)が食べたい」、「今日のお勧めの天ぷらを」などと言うと、奥から運ばれてくる。さらに予約すればコース料理をいただくことも。「ととよし」は、「酒陶 柳野」で10年以上勤めた料理人、杉井雄大さんが店長を務めている。

カウンター6席のみのプライベート空間。町家を改装し「酒陶 柳野」同様、京都の割烹や飲食店を手掛ける木島徹さんによる設計
“和食”と一口に言っても、雅やかな懐石料理もあれば、イノベーティブ系日本料理もあり幅広いが、「ととよし」は毎年その時期が来たら京都で食べたくなる旬の料理と食材を大切にした正統派和食店だ。

¥13,000のコースは水物を含む10品前後。蕪をすりおろし、卵白と合わせ、中にぐじ(甘鯛)を忍ばせて蒸し上げた京都の冬のご馳走、かぶら蒸し
「冬になったらかぶら蒸し、夏が来たら鱧が食べたなるでしょ。奇をてらわず、旬の食材をシンプルな調理法で、素材のおいしさを伝えていきたいです」と、杉井さん。

杉井さんの実家の鮮魚店「魚よし」の屋号にあやかり、店名は「ととよし」に
さくっと軽い色白の衣をまとった天ぷらや、絶妙な火入れの魚や肉の炭火焼きなど、コースでは、派手さはないがしみじみおいしい料理を小ポーションで品数多く提供。
杉井さんの実家は錦市場の鮮魚店「魚よし」であり、淡路島や明石など瀬戸内で採れたお造りも自慢だ。〆にはおにぎりと味噌汁が登場。ふっくら柔らかめに炊かれたごはんでふんわりにぎられていて、心とおなかをほっこりと満たしてくれる。本店のバーは、ナチュラルワインを得意としていて、こちらでも食事のお供に楽しむことができる。

ふっくら柔らかく握られ、米の甘みを感じるおにぎり
地元の大人たちが、気負わず、ちょこちょこおいしものを食べたい夜に訪れる一軒。京都旅をした際の和食の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。

34歳の料理人、杉井雄大さん。料理は1人で切り盛り。現在はコースのみだが、今後はアラカルトも提供予定
ととよし
住所:京都市中京区竹屋町通寺町西入ル甘露町666
営業時間:17:00~22:00
定休日:水曜、他不定休あり
TEL. 075(741)6434

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント