パリを拠点に、世界各地で活躍中のパティシエ・長江桂子さんが、家庭で楽しむお菓子づくりを特別指南。パリで培ったレシピは、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深いのに食べ心地は軽やか。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめる提案も。作りやすく簡単なのに、奥深く、これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのシンプルレシピを、丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE,PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: お菓子の土台になるベーシックな生地・ジェノワーズ。日本ではスポンジケーキと呼ばれるもの

お菓子の土台になるベーシックな生地・ジェノワーズ。日本ではスポンジケーキと呼ばれるもの

 洋菓子といえば頭に浮かぶ、ショートケーキ。私たちに馴染みのある、ふんわり、しっとりのスポンジ生地を使ったお菓子ですね。実はこれらは日本特有のお菓子ということ、ご存知ですか? フランスでは、軽い食感のスポンジ生地は「ジェノワーズ」と呼ばれています。

 「フランスでは、いちごと合わせて『フレジェ』というお菓子を作ったり、ガストロノミーレストランでは、ジェノワーズにシロップをたっぷり打ち、クリームやナッツ、アイスクリームなどを添えたデザートに仕立てたりします」。

 ジェノワーズとは「ジェノバ風」という意味です。フランス料理が洗練されていったのは、1533年にアンリ2世とカトリーヌ・ド・メディチが結婚したのがきっかけといわれています。フィレンツェのメディチ家からカトリーヌが嫁いだ際、お抱えの料理人や給仕人をはじめ、多彩なレシピと調理道具、フォークなどのカトラリーやグラスなどの食器類、さらには食事作法までもが持ち込まれ、当時手づかみで食事をしていたフランス宮廷に、イタリアの食文化が花開きました。
 ですから、フランス料理のベースになる技術はイタリア経由のものも多く、名前にイタリア名が付いていることがあります。

 さて、「ジェノワーズは、パティシエにとって、基本の基本の生地」と長江さんは言います。全卵を泡立てて作る「共立て」と呼ばれる方法で作ります。ちなみに、白身と黄身を分けて泡立てる方法を「別立て」と呼び、ビスキュイ・ア・ラ・キュイエールというさっくりと軽い生地になります。

 ふっくら、しっとり、卵の風味を感じられるジェノワーズが焼ければ、お菓子作りの腕はかなりのものと言われています。「コツは、全卵と砂糖をきめ細かく泡立てること。ハンドミキサーを使うとよいでしょう。クリーム状に泡立てた卵に気泡がたくさん入り、しっかり泡立てられれば、気泡は簡単にはつぶれないので、粉をしっかり混ぜることができます。きめの細かい気泡のおかげで生地全体が持ち上がり、ふんわりと口溶けのよい食感になります」
 次回はこのジェノワーズを使って、お馴染みのショートケーキやフランスのいちごケーキ、フレジェを仕立てるためのクリームを習います。

画像1: パリのパティシエ
長江桂子さんにお菓子を習う
Vol.4 ジェノワーズ

材料(作りやすい分量)

(直径15㎝のケーキ型もしくは12cm角の正方形の型1台分)
卵 2個
グラニュー糖 75g
薄力粉 65g
無塩バター 15g
牛乳 25g

下準備

・薄力粉はふるう。
・オーブンは180℃に予熱する。
・型の側面と底に敷紙を当てる(下の写真を参照)

画像: 下準備

作り方

画像1: 作り方

1 牛乳、バターを合わせて湯煎にかけて溶かし、そのまま保温しておく。あまり熱いとバターが分離してしまうので、人肌程度の温度でよい。

画像2: 作り方

2 ボウルに卵とグラニュー糖を入れ、泡立て器で混ぜながら湯煎する。約40℃になるまで絶えず混ぜる。40℃になると、重く感じていたものが軽くなり、透明感が出てくる。

画像3: 作り方

3 ハンドミキサーを高速にして、2を3〜4分、白く、もったりするまで泡立てる。泡立ては、写真のように深さのある計量カップやボウルへ移すと撹拌しやすい。

画像4: 作り方

4 ハンドミキサーを低速にし、3をさらに3〜4分泡立てる。シルキーなツヤ感が出て、持ち上げてすーっと落ちていくくらいになるとよい。ここでキメを整えることで生地がきめ細かくなる。

画像5: 作り方

5 4をボウルに戻し、薄力粉を一気に加える。片手でボウルを回しながら、ゴムベラを中心から外側にすくい上げて落とすように混ぜる。この段階では粉が混ざりきらなくてよい。

画像6: 作り方

6 1を5に加え、5と同様にさらに混ぜる。バターが入ることでツヤが出てくる。

画像7: 作り方

7 6の生地を型に流し入れ、型ごと2〜3回、軽く落として気泡を抜く。180℃のオーブンで20〜25分焼く。

画像8: 作り方

8 きれいなキツネ色に焼けたら、型ごと台に2回ほど落とし、蒸気を抜いて型から取り出す。網の上に逆さまに置き、粗熱が取れたら、元の向きに戻して冷まし、敷紙をはずす。
*生地は前日に焼き、ラップをして保存しておいてもよい。冷凍も可能。その場合自然解凍で。

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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