これからの時代、自分の食べるものは自分の手で心地よく調えられるほうがよい。料理はあなたの身のため、そして誰かのためにも。たんぱく質も野菜もたっぷりのスープは、身体と心と日々の暮らしを無理なく楽しく整える

RECEPI BY TOMOKO NAGAO, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO HIROSE, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: フランス南西部から、フランスとスペインにまたがるバスク地方の郷土料理「ガルビュール」。透明なスープを白濁するまで煮込み、素材同士が渾然一体となった味を楽しむ

フランス南西部から、フランスとスペインにまたがるバスク地方の郷土料理「ガルビュール」。透明なスープを白濁するまで煮込み、素材同士が渾然一体となった味を楽しむ

「スープさえあればーー」

「ご飯と味噌汁、スープとパン。どんなスタイルにしろ、主食と汁ものさえあれば、日々を生きぬいていける気がします。」と長尾さんは言う。
 材料を入れて、煮込む。難しい技は必要ないが、おいしくて滋養があり、食べるとほっとする。そんなスープ作りはあなたの身のため、そして“生き抜く”ための助けになるはず。「そうそう、“息を抜く”ための助っ人にもなりますよ」と長尾さん。生き抜くために、息抜きはとても大切なこと。

バスク地方の郷土料理「ガルビュール」

 「バスクに魅せられて通っていたころ、土地の料理でいちばん惹かれたのがこのスープでした。大鍋にたっぷり作り、朝ごはんに、お昼にと、煮込んでいくうちに味が変化していく。『子供の頃はうんざりしていたけれど、大人になってそのおいしさがしみじみわかるようになったんだ』とお会いした現地の方が話してくれたのを覚えています」と長尾さん。

 本場のガルビュール作りに欠かせないのは、白いんげん豆とピマン・デスペレットと呼ばれる赤唐辛子粉、生ハムのすねの端っこ。これに季節の野菜を加える。どれもその土地の産物だ。「私たちは、白いんげん豆の水煮と粗挽き唐辛子粉、パンチェッタやベーコンを使って作りましょう」

 作り方のポイントは、ひたすら煮込むこと。煮込み方が足りないと物足りなさが残るので、全体がしっかりとまとまるまで火を通すことが肝心。「白濁したら食べどきです。冬はかぶや大根で、春はグリーンピースや菜の花、そら豆、夏はパプリカやズッキーニを加えれば、季節ごとの味を楽しめます」(長尾さん)

<材料4〜5人分>

キャベツ 約1/3個…芯は薄切り、葉は2cm角
じゃがいも(メイクイン)4個…約2cm幅に切り分けたものを約4等分
玉ねぎ 大1/2個…1cm角
A にんじん 小1本…縦に4等分し、1cm幅に切る
 かぶ 2個…くし形に切り、横半分に切る
 白いんげん豆(水煮) 約150g…水気を切っておく
 タイム 2本
 にんにく 1片…縦2等分して芯を外し、横に薄切り
 パンチェッタ(またはベーコン) 約120g…拍子木切り
塩 少々
植物油 大さじ2

画像: 大きめの鍋に油とにんにくを入れて弱火にかける。キャベツとかぶ、白いんげん豆以外のAの材料を入れ、タイムはちぎって散らす。軽く塩を振り、木べらなどで混ぜながら炒める

大きめの鍋に油とにんにくを入れて弱火にかける。キャベツとかぶ、白いんげん豆以外のAの材料を入れ、タイムはちぎって散らす。軽く塩を振り、木べらなどで混ぜながら炒める

画像: 全ての材料が馴染んできたら、キャベツを加えて軽く炒め合わせる。材料がかぶるまで水を加え、火を強めて軽く煮立つくらいの火加減で20分ほど煮込む。この時点でスープは透明

全ての材料が馴染んできたら、キャベツを加えて軽く炒め合わせる。材料がかぶるまで水を加え、火を強めて軽く煮立つくらいの火加減で20分ほど煮込む。この時点でスープは透明

画像: 材料がやわらかくなり、煮汁が少し濁ってきたら、かぶと白いんげん豆を加えて軽く混ぜ、さらにことこと20分ほど煮込む。野菜がやわらかくなり、スープが白濁してきたら出来上がり。素材の一体感がこのスープの魅力

材料がやわらかくなり、煮汁が少し濁ってきたら、かぶと白いんげん豆を加えて軽く混ぜ、さらにことこと20分ほど煮込む。野菜がやわらかくなり、スープが白濁してきたら出来上がり。素材の一体感がこのスープの魅力

画像: スープを器に盛り、好みで赤唐辛子粉を振る。無塩バター(写真は約100g)に、レモンの皮を1/3個分すりおろして塩を少々振る。レモンの皮の爽やかさとほのかな苦味を添えたバターをパンにたっぷりのせて、スープと一緒に召し上がれ

スープを器に盛り、好みで赤唐辛子粉を振る。無塩バター(写真は約100g)に、レモンの皮を1/3個分すりおろして塩を少々振る。レモンの皮の爽やかさとほのかな苦味を添えたバターをパンにたっぷりのせて、スープと一緒に召し上がれ

「家庭の味は物足りないくらいでいい」と、長尾さんは言う。味を決めすぎず、足りなければお好きに加えてね、というくらいがいい。無理なく作れて気軽に楽しめ、じんわりと滋味深い、そんな旬のスープをぜひ自分の味方に。

画像: 長尾智子 フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/)も好評。 公式サイトはこちら 公式インスタグラムはこちら

長尾智子
フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/)も好評。
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