RECEPI BY TOMOKO NAGAO, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO HIROSE, TEXT BY MIKA KITAMURA
Vol.1 ガルビュール

フランス南西部から、フランスとスペインにまたがるバスク地方の郷土料理「ガルビュール」。透明なスープを白濁するまで煮込み、素材同士が渾然一体となった味を楽しむ
「スープさえあればーー」
「ご飯と味噌汁、スープとパン。どんなスタイルにしろ、主食と汁ものさえあれば、日々を生きぬいていける気がします。」と長尾さんは言う。
材料を入れて、煮込む。難しい技は必要ないが、おいしくて滋養があり、食べるとほっとする。そんなスープ作りはあなたの身のため、そして“生き抜く”ための助けになるはず。「そうそう、“息を抜く”ための助っ人にもなりますよ」と長尾さん。生き抜くために、息抜きはとても大切なこと。
バスク地方の郷土料理「ガルビュール」
「バスクに魅せられて通っていたころ、土地の料理でいちばん惹かれたのがこのスープでした。大鍋にたっぷり作り、朝ごはんに、お昼にと、煮込んでいくうちに味が変化していく。『子供の頃はうんざりしていたけれど、大人になってそのおいしさがしみじみわかるようになったんだ』とお会いした現地の方が話してくれたのを覚えています」と長尾さん。
本場のガルビュール作りに欠かせないのは、白いんげん豆とピマン・デスペレットと呼ばれる赤唐辛子粉、生ハムのすねの端っこ。これに季節の野菜を加える。どれもその土地の産物だ。「私たちは、白いんげん豆の水煮と粗挽き唐辛子粉、パンチェッタやベーコンを使って作りましょう」
作り方のポイントは、ひたすら煮込むこと。煮込み方が足りないと物足りなさが残るので、全体がしっかりとまとまるまで火を通すことが肝心。「白濁したら食べどきです。冬はかぶや大根で、春はグリーンピースや菜の花、そら豆、夏はパプリカやズッキーニを加えれば、季節ごとの味を楽しめます」(長尾さん)
<材料4〜5人分>
キャベツ 約1/3個…芯は薄切り、葉は2cm角
じゃがいも(メイクイン)4個…約2cm幅に切り分けたものを約4等分
玉ねぎ 大1/2個…1cm角
A にんじん 小1本…縦に4等分し、1cm幅に切る
かぶ 2個…くし形に切り、横半分に切る
白いんげん豆(水煮) 約150g…水気を切っておく
タイム 2本
にんにく 1片…縦2等分して芯を外し、横に薄切り
パンチェッタ(またはベーコン) 約120g…拍子木切り
塩 少々
植物油 大さじ2
Vol.2 長ねぎと牡蠣のスープ

長ねぎの甘みが生きた冬のスープ。調味料は塩と生姜、オリーブオイル。スパイシーな牡蠣を添えれば、贅沢な一品に
「長ねぎを丸ごと1本、無駄なく使う」
長ねぎと牡蠣のおいしい季節に作ってほしいスープ。長ねぎの青い部分も使い、1本丸ごと食べ切りましょう。
スープをおいしく仕上げるコツは、白い部分と青い部分を時間差で投入すること。長ねぎをぶつ切りにすることで食べ応えのある一品に。
「シンプルな仕立てだから三段活用も」
牡蠣を添えればメインディッシュに。さらにキヌアなどの雑穀を添えればボリュームのあるひと皿料理に。雑穀はもちきび、押し麦、大麦などお好みで。スープ、主菜、ひと皿料理とTPOに合わせて活用できる。
ターメリック、クミン、コリアンダー。お持ちではないかもしれない。「スパイスは何種類も持つ必要はないのですが、この3種類に赤唐辛子粉を足せば、カレーの基本の味になります。単独でもさまざまな料理に使えるので、この3種は揃えておくと重宝しますよ」
<材料4人分>
長ねぎ 2本 2.5cmのぶつ切り
牡蠣 12個 塩をもみ込み、流水で洗う
ターメリックパウダー 小さじ1/2
クミンシード 小さじ1/2
コリアンダーパウダー 小さじ1/2
生姜(すりおろし) 小さじ山盛り1
キヌア 約50g お湯に塩少々を加えて13分ほどゆでて水気を切る
オリーブオイル 約大さじ2
ローリエ 2枚
薄力粉 約大さじ2
塩 少々
Vol.3 にんじんのポトフ

器に煮込んだ具材を盛り、スープは別のボウルに盛ってこしょうを挽きかける。マスタードは2種類を同量ずつ混ぜ合わせて、切り分けたパンと共にテーブルへ
「にんじんは、やわらかく煮てから皮をむく」
丸のまま煮込まれたにんじんが主役。春先のやわらかいにんじんでまず作ってみよう。煮込んでから、まだ温かさが残るうちに皮をむくのがポイント。にんじんの皮がこんなに薄く、スルッとむけることに驚くはず。薄皮をむいただけで、にんじんはつるんと、ツヤツヤ。鮮やかなオレンジ色に輝く。
「具材とスープは別々に盛って楽しむ」
ポトフといえば、数種類もの肉や野菜を煮込むことが多いが、今回、にんじんの存在感を際立たせるために、鶏肉、セロリだけのミニマルな材料で作っている。「だしがよく出るよう、鶏肉は骨付きを選ぶとよいでしょう。今回は手羽元と骨付きもも肉を使いましたが、手羽元の代わりに手羽先でも」と長尾さん。
にんじんの煮汁も無駄なく全て利用して作ったスープも美味。皮ごと煮たにんにくは、皮をはずし、具材と一緒に食べても。「スープはたっぷり作って、翌日、残った野菜を小さく切って朝やお昼のスープにしてもいいでしょう」。
<材料4人分>
にんじん 大小合わせて6~7本 たわしでよく洗う
鶏骨つきぶつ切り肉 約500g 塩を全体にまぶす
鶏手羽元 4〜5本 塩を全体にまぶす
鶏用の塩 鶏肉の重量の3%
セロリ 大1本 葉を摘み、茎は筋を取り、約4cm長さに切る
ローリエ 2枚
にんにく 1片
塩、こしょう 各少々
粒マスタード 約大さじ1~11/2
練りマスタード 約大さじ1~11/2
好みのパン 適量
Vol.4 新ごぼうのポタージュ

ベーコンのクミンシード炒めは小さい器に入れて食卓に。それぞれがポタージュにのせていただく
新ごぼうは粗めに仕上げて、食べ応えのある一品に
春は新ものが出回る季節。新ごぼう、新玉ねぎ、新じゃがなどの春野菜には寒い時期、体内に溜まった余分な脂肪や毒素を排出する効果があり、大いに食べたいもの。
「新ごぼうはアクが強くなく、軽やかな印象ですが、味に存在感がありますから、じゃがいもと牛乳、生クリームを加えるだけで、充分おいしいポタージュになります」と長尾さん。
「フードプロセッサーでごぼうをピュレ状にするとき、少し粗目に仕上げれば食べ応えのある一品になります」。ポタージュがとてもシンプルな味わいなので、仕上げにベーコンとクミンシードを炒めて加える。スパイシーな香ばしさとのコントラストで重層的な味わいに。
旬の野菜を食べれば、身体が整う。「ピュレを冷凍しておけば、それをお鍋に入れて牛乳などでのばしてすぐに食べられます。多めに作って常備すれば、忙しいときの助けになるはずです」。余分なものが入っていない野菜だけのポタージュは、お年寄りにも赤ちゃんの離乳食にもおすすめ。その場合は、ピュレをなめらかになるまで攪拌してもいい。
このポタージュにパンを添えれば、満足な食に一食に。今回は、シンプルなクイックブレッドの作り方を紹介。ごぼうを煮る間に生地を仕込み、焼きたてのアツアツをスープと一緒に召し上がれ。
<材料3〜4人分>
新ごぼう 2本 包丁の背で皮をこそげ、1cm長さに切る
じゃがいも(男爵)2個 皮をむき、8等分に切る
牛乳 150ml
生クリーム 200ml
塩 少々
ベーコン スライス4枚 細切りにする
クミンシード 小さじ2
オリーブオイル 小さじ1
Vol.5 夏のココナッツスープ

夏に合う味わいだが、あくまで滋味深く優しいスープ。器に盛る際は、具材を盛ってから香菜を散らし、スープを注ぐとよい
「ナムプラーとココナッツミルクでアジア風の味わい」
これからの季節に食べたい、アジアンテイストな魚介のスープをご紹介。「ナムプラーをひと振りするだけ、さらにココナッツミルクを加えれば、アジアの雰囲気が漂い、夏らしい味になります。魚介のかわりに鶏や豚肉でも」と長尾さん。ココナッツミルクは疲労回復に、赤唐辛子は食欲増進効果も。「いつもの料理の目先が変わるので。夏の食材として魅力的です。ココナッツミルクをスープに加えたら、分離しないよう、煮立たせずに弱めの火加減で温めてくださいね」
ふだんは捨ててしまう玉ねぎの皮と香菜の根元の部分も、だしとして活用する。あさりとえび、ナムプラーの旨みも加わり、自然な味わいに。「赤唐辛子は丸ごと、玉ねぎの皮や香菜の根元と一緒に煮込んで辛味をスープに移し、引き上げてしまってもいいでしょう。今回はもう少し辛みが欲しかったので、刻んで鍋に戻しました。赤唐辛子の辛みは、ココナッツミルクの甘みと相性がいいんです」
優しいスープの味は、エスニックテイストに抵抗がある方にも食べやすい。スープ作りと同時進行で炊いたおこわをむすんで添えれば、夏を乗り切るパワースープになるはずだ。
<材料4人分>
えび 12尾/殻をむき、背に沿って浅く切り込みを入れて背わたを除き、ボウルに入れて塩をもみ込んでから水洗いしてぬめりを取る
あさり 約300g/塩水に浸けて砂抜きする
もやし 1袋/ひげ根を取る
玉ねぎ 1個/皮をむき、薄切りに。皮は洗ってとっておく
筍の水煮 小1本/縦半分に切り、5〜6mm幅に切る
香菜 2〜3株/根元を切り、2cm長さに切る。根元は太い部分は縦半分に切り、適当な長さに切る
赤唐辛子(生または乾燥) 1本/ヘタを切り、種を出す
ココナッツミルク 200ml
ナムプラー 約大さじ2
塩 ひとつまみ
Vol.6 トマトの味噌スープ

トマトは湯むきし、つるんとした口当たりに
身体が重だるくなったり、食欲が落ちたりする梅雨の時期。すっきり味の温かいスープで元気をチャージしてほしい。今回は和の食材を重ねて、旨みマシマシのトマトの味噌スープをご紹介。旨みはまず昆布水で。水に約20分浸けておくだけなので、帰宅後でも着替えたり、料理の下ごしらえをしている間で充分。
旨み成分たっぷりのトマトと味噌、昆布、かつお節、干し椎茸の「旨み五重奏」。すっきりときれいな味に仕立てるには、だしに味噌を溶き入れてから、網で濾すのがポイントだ。
「トマトは湯むきすると、優しい口当たりになるので、小さいお子さんやお年寄りにもいいですね。お湯に投入したら、すぐに引き揚げて。そのほうがするっときれいに皮がむけます」と長尾さん。ちょっとしたひと手間でぐんとおいしくなるので、トマトの皮の湯むきはぜひ。ただ、朝の慌ただしい時間には大変なので、朝食べるなら、前日にたっぷり作って用意しておこう。「翌朝、弱火で静かに温めて召し上がってくださいね」
トマトを湯むきした後の皮は、だしに加えて利用する。レシピでは紹介していないが、だしをとった後のトマトの皮とかつお節は、低温のオーブンで乾かすように焼いてパリパリに。状態にもよるが、140℃のオーブンで30分が目安。「途中、焦げるようなら取り出して冷ましつつ、パリパリになるまで焼いてください。これに、ごまや焼き海苔を加えてふりかけに。ご飯が進みます」
<材料4人分>
小さめのフルーツトマト 8個/ヘタを取る
ミニトマト 8個/ヘタを取る
味噌 約大さじ2
昆布水 昆布約8cm角1枚+水1ℓ/20分おく
干し椎茸 第1枚/ひたひたのぬるま湯で戻す
鰹節 軽くひとつかみ
大葉 3〜4枚/縦半分に切り、細切りにする
スナップエンドウ 1袋/筋を取る
塩、こしょう 各少々
ごま油 約小さじ2
Vol.7 サラダ風ガスパチョ

野菜を刻むだけ。ビタミンたっぷりの食べるサラダ
スペイン生まれの冷製スープ、「ガスパチョ」。フードプロセッサーでなめらかなピュレ状に仕立てることが多いが、角切りにした野菜を食べるタイプもある。今回、ご紹介するのは角切り野菜のガスパチョだ。
「サラダのように食べてほしいので、野菜を粗く刻む作業がこのスープづくりの肝です。スープといっても、野菜を刻めば出来上がります」と長尾さん。きゅうりとセロリ、なすは、縦に切り分けて太いマッチ状にしてから端から切れば、うまく角切りにできる。「トマトの水分がスープになりますから、トマトを刻んでいるときに出てくる水分は捨てずに大事にとっておきましょう。また、トマトの皮は湯むきすると、ぐんと舌触りがソフトになります。このひと手間を惜しまないでくださいね」。
アクセントになるのが、オリーブオイルで炒めたなす。油を多めに入れてこんがりするまで炒め、塩加減はしっかり強めに。このなすをのせれば、味にメリハリがつき、グッと味が締まる。
「夏のガスパチョには、クミンシードでエキゾチックな風味を、パプリカパウダーでトマトのコクを際立たせます。好みで赤唐辛子粉を少し振ってもいいでしょう」。スパイス使いの名手・長尾さんらしい控えめな使い方で、上品で粋な味わいに。
刻んだ野菜類を冷蔵庫で冷やしておけば、朝昼晩、どんなシチュエーションでも楽しめる。野菜たっぷりの食べるスープ。夏の疲労回復にもおすすめだ。
<材料4人分>
トマト 大4個/皮を湯むきし、7〜8mmの角切りにする
玉ねぎ 小1個/皮をむき、3〜4mmの角切りにする
きゅうり 1本/5〜6mmの長方体に切る
セロリ 細め1本/筋を取り、3〜4mmの角切りにする
なす 大2本/ヘタを取り、1cm角に切る
パプリカパウダー 小さじ1/2
クミンシード 小さじ1
にんにく 小1/2片
白ワインビネガー 大さじ1
オリーブオイル 大さじ2+小さじ1
塩 少々
レモン 1個
Vol.8 ゴーヤと豆腐のすり流しと

滋養強壮。たんぱく質たっぷりの穏やかな味わい
「すり流し」をご存知ですか? 野菜や魚介類をすりおろし、だしでのばしたしみじみおいしい汁物のこと。今回は、豆腐のすり流しに鶏挽き肉とゴーヤをトッピング。料理名を聞くと敷居が高そうだが、実は意外に簡単。長尾流はさらに合理的な調理法で作るので、夏の暑いキッチンに立つ時間は短い。
「だしをとらなければと思うと億劫になりますが、これは鶏挽き肉を昆布水で2〜3分煮るだけ。しかも、鶏挽き肉はトッピングとして食べてしまうので、捨てる部分がありません。昆布水は前の晩から昆布を水に浸しておくだけ。冷蔵庫で1週間ほど持ちますから作っておくと便利ですよ」と長尾さん。
この鶏挽き肉で作る簡単スープ、ぜひ覚えておきたい。今回は、豆腐をすってクリーム状にしてすり流しにしたが、鶏挽き肉を入れたまま(アクは取って!)、賽の目に切った豆腐を加えたり、卵を溶き入れたりと、このスープは幅広くアレンジできる。
「すり流しのトッピングは、ゆでた枝豆やそら豆、細かく刻んだり、すりおろしたりしたきゅうりでもいいんです。ゴーヤは生のままだと苦味や青っぽさが際立つので、必ず湯通ししてくださいね」。
沖縄でゴーヤーは、「ヌチグスイ(命薬)」「クスイムン(薬モノ)とも呼ばれ、独特の苦味が食欲増進効果にもなり、古くから夏バテ防止の食材として重宝されてきた。スープは温めてもおいしい。途中で山椒粉や一味唐辛子を振って味変するのもおすすめ。猛暑が続き、疲れがたまってくるこの頃、ヌチグスイの力も借りて、元気をチャージしよう。
<材料4人分>
ゴーヤ 1本/長さを半分に切り、縦に2等分し、種とわたを除き、4〜5mm厚さに切る。
もめん豆腐 1丁(約300g)/キッチンペーパーに包み、重石をして水切りする
鶏ひき肉 約150g
昆布水 800ml/10cm角の昆布を一晩浸ける
醤油 小さじ1/2
塩 少々
ごま油 少々
Vol.9 冬瓜と豚肉のスープ

猛暑で疲れた体を整えるのに黄金の組み合わせ、冬瓜と豚肉を
暑さがまだまだ続くこの頃。夏バテ対策にはカリウムをはじめ、カルシウムや食物繊維、ビタミンCも豊富な冬瓜がおすすめ。淡白な味わいを活かして、肉や魚、だしと組み合わせれば、素材の旨みが際立つ。
「この時期だけのものなので、いま食べておきたい野菜です。青くささを消すために下ゆでしてから調理することが多いのですが、私はそのまま火を入れていきます」と長尾さん。
豚肉を合わせて味わいと量にボリュームをつけたスープは、メインディッシュにもなりそう。「沸騰したスープに加えると豚肉が硬くなってしまうので、弱火にしてさっと煮るだけに。もしくは火を止めてから豚肉を加えてもいいでしょう。ゆらゆらと菜箸で動かして、色が変わったら火が通った証拠です」。
生姜の絞り汁にオリーブオイルを加えた「生姜オイル」は、淡白な味わいのスープに味のメリハリを付けてくれる。少し多めに作って、冷奴や和えものなどにも。長期保存はできないので、3日ほどで食べ切って。
枝豆がなければ、ズッキーニや万願寺とうがらし、ゴーヤーなどを小さめに切って加えても。夏の名残りの味を楽しみながら、秋に向けてのパワーを蓄えましょう。
<材料3〜4人分>
冬瓜 1/4個/ひと口大の扇形に切る
バラ肉薄切り 200g/3等分に切る
枝豆さやつき 約250g
生姜のすりおろし 小さじ山盛り1
醤油 小さじ1弱
塩 少々
オリーブ油 少々
昆布 10cm角1枚
Vol.10 秋のデザートスープ

りんご、さつまいも、そして白きくらげ。シナモンの効いたほの甘いスープ
猛暑が去り、心地よい涼しさに包まれてほっとしている方も多いことでしょう。赤や青のりんごが店頭を賑わせ、さつまいもも食べごろだ。
「りんごをスープにと驚かれるかもしれませんが、りんごに火を入れることでさらに深みのある味と香りが生まれ、生とは異なる魅力を見せてくれます」と長尾智子さん。
白きくらげは中医学で「肺と肌に潤いを与える食材」として、女性に人気。かの楊貴妃も好んで食べたとか。シナモンは体を温めてくれ、代謝が上がるなどの効能があり、りんごやさつまいもはビタミンも食物繊維も豊富。風邪をひいたり、咳が出たりする人が増えてくるこの時期、甘いスープは養生のための一品になり、弱った身体を癒してくれる。
このスープの肝は「シナモンだし」。「シナモンをなるべく細かく割ってお湯で煮出し、風味をしっかりつけるのがポイントです。シナモンをゆっくり煮出して作るシナモンティーをヒントにしました」。シナモンにクローヴを足して煮出してもいいし、だしは甘みを加えてからフルーツをマリネしても。
さつまいもにまず火を通し、りんごを加えたら、弱めの火加減で煮込むのがコツ。煮崩れず、色鮮やかな皮の色はそのまま、きれいに仕上げられる。
「りんごにはレモンをかけておきます。変色を防ぐのと同時に、酸味が加わり、スープの味がキリッと締まります」。
デザートにもよいが、朝の一膳にも。ほのかな甘みで穏やかな一日のスタートになるはずだ。
<材料4人分>
りんご 1個
さつまいも 中1/2本
白きくらげ(乾燥)約15g
てん菜糖 40g
メープルシロップ 大さじ2
レモン 1/2個
シナモンスティック 2本
Vol.11 お米と魚介のスープ

材料全てがだしに。 米のとろみでやさしい仕上がり
日本のお米の行末が心配なこの頃だが、新米の季節到来です。炊き立ての新米とお味噌汁は心に染み入る日本人のソウルフードだが、「お米をスープ仕立てにするのもおすすめです」と長尾智子さん。
長尾流お米のスープは、「リゾットでもスープでもない、イタリアとスペインの米料理のいいとこどりをしました。スペインには”アロス”で始まるお米料理がたくさんあります。中でも『アロス・カルドソ』に近い味かもしれません」。 スペイン語の「アロス」は「米」、「カルドソ」は「スープがたっぷりの」という意味。つまり「汁気の多い米料理」。パエリヤよりリゾットに近く、スープと米を一緒に味わう料理だ。「イタリアのリゾットと同様に、他の食材と共に米も炒めてから煮込みます。煮汁は多めですが、少しずつ溶け出た米のでんぷん質でとろりと仕上がります」。米の存在感を際立たせ、とろみのついたスープがポタージュのようなまろやかさに。好みで水分をもっと多めにしても。
えびとあさり、野菜のだしがたっぷり出るので、市販のブイヨンなどは不要。「トマトピュレは頼りになる調味料です。だしの土台になってくれます。トマトピュレやトマトペーストなどのトマト系の調味料は充分に旨みがありますから、常備しておくことをおすすめします」。
今回はすっきりと食材の味だけで仕上げたが、ローズマリーやタイムなどのハーブ類、ごく少量のカレー粉、シナモンなどで風味づけしても。
<材料4人分>
米 1/3カップ
えび(ブラックタイガーなど)6尾
あさり 約250g
玉ねぎ 大1/4個/粗みじん切り
ブロッコリー 約1/3株/ひと口大に切る
にんにく 小さめ1片/粗みじん切り
トマトピュレ 約大さじ4
塩、こしょう 各少々
オリーブオイル 大さじ1
ローリエ 2枚
赤唐辛子粉 少々
レモン 約1個/くし形に切る
Vol.12 鶏肉と野菜のグラタンシチュー

カリッ、とろり。
一皿で、グラタンとシチューを同時に楽しめる
寒さがぐんと深まってきた慌ただしい年の瀬。料理する時間が惜しいほどの忙しさのなか、たっぷり作っておいたスープがあれば、次の日も機嫌よく乗り切れる。今回は長尾流グラタン風シチューをご紹介。「シチューにチーズとパン粉を散らしてグラタンのように焼き上げます。焼き目のカリッとした部分をシチューと一緒にまず楽しみ、次にとろりとした熱々のシチューをいただきます。このような料理はもともとないので、私は勝手に『グラタンシチュー』と呼んでいます」と長尾さん。
今回は大きな耐熱容器で作ったが、一人分ずつ焼いてもよいし、翌日、しっかり焼き直せば正真正銘のグラタンになる。一度作って二度おいしい、ありがたいスープ。しかも、鍋でコトコト煮る場合はキッチンから離れられないが、オーブンに入れてしまえば、その間はお風呂に入ることだって可能だ。オーブン料理は敷居が高いと思われがちだが、オーブンでスープを作る方法は便利なので覚えておきたい。
「ゆでたほうれん草をのせるのがポイント。根菜類に葉野菜を加えると、食感や風味の幅が広がります」。今回は鶏肉、玉ねぎ、じゃがいもの組み合わせだが、鶏肉を豚肉(生姜焼き用を半分に切る)に、じゃがいもをかぶや里いもに、玉ねぎを長ねぎに変えれば、目先が変わるので毎週登場させても飽きない。もうひとつのポイントは、ホワイトソースを作らず、バターと小麦粉を合わせて練った「ブールマニエ」を使うこと。フランス語で「ブール」は「バター」、「マニエ」は「練る」という意味。料理の仕上げに溶いて加えるだけで、簡単にこくととろみをプラスできる。
ご馳走感のある一品なので、シンプルなサラダとお気に入りのパンを添えれば、週末に友人を招いてのメインディッシュにもぴったりだ。
<材料4〜5人分>
鶏もも肉 小さめ2枚/ひと口大に切り、塩、胡椒をする
玉ねぎ 中1個/皮をむき、ひと口大に切る
じゃがいも(メイクイン)3個/皮をむき、ひと口大に切り、水にさらす
ほうれん草 1束
パセリ 1本/粗みじん切り
にんにく 1片/薄切り
白ワイン 100ml
ハードチーズ(パルミジャーノ、グラナパダーノなど)約50g
牛乳 200ml
ブールマニエ
薄力粉 15g
無塩バター 15g
塩 少々
オリーブオイル 大さじ1
パン粉 適量
Vol.13 ビーツのポタージュ

ミネラル、ビタミン、ポリフェノールと栄養素が豊富なビーツ。鮮やかな色合いに心躍るスープは、いつもの食卓に彩りを添え、おもてなしのテーブルでは歓声が上がるはず
ビーツのポタージュに、牛ひき肉をトッピング。心身が活性化する一皿
鮮やかなルビー色のビーツのポタージュ。栄養価が高く、カリウム、鉄、葉酸などのミネラルやビタミン、ポリフェノールが豊富で、高血圧など予防、血行促進、貧血予防など、「奇跡の野菜」「食べる輸血」とも言われるほどの効能がある。やさしい甘みが口に広がり、土の香りがかすかに漂う。赤かぶと見た目が似ているが、ほうれん草と同じヒユ科アカザ亜目フダンソウ属の野菜で、甜菜糖の原料になる甜菜の仲間。ビーツは、ウクライナ発祥といわれ、ロシアや東欧の伝統的な料理であるボルシチでお馴染みの野菜でもある。
「このスープはそのボルシチを再構成したもの。美しい色合いを生かすよう、ビーツはポタージュに。牛肉は挽き肉を使い、野菜と一緒に炒めてトッピングします。姿と食感を変えるだけで、気分が一新されるでしょう? 牛肉でボリュームアップされ、一日のどこで食べてもおいしいスープです」と長尾智子さん。
「ビーツは大きめのもの1個、もしくは小さめを2〜3個、『ゆでる』もしくは『ロースト』で下ごしらえしておけば、スープやサラダがあっという間に出来上がります。ビーツを扱うとき、手が赤く染まるので、気になるようなら調理用ビニール手袋をして皮をむき、刻むまでをすませるのもおすすめです」。
<材料4〜5人分>
ビーツ 中1個(約300g)
じゃがいも(男爵)2個/皮をむき、小さめの角切り
玉ねぎ 中1/2個/皮をむき、小さめの角切り
にんじん 中1/2本/皮をむき、小さめの角切り
トマトピュレ 約100g
オリーブオイル 小さじ1
牛ひき肉のトッピング
・牛ひき肉(もも)約250g
・マッシュルーム 4〜5個/粗みじん切り
・パセリ 大きめ1本/粗みじん切り
・赤ワインビネガー 大さじ3
・ウスターソース 大さじ3
・植物油(米油、太白ごま油など)小さじ2
塩、こしょう 各適量
ヨーグルト 約200ml
バゲットなど好みのパン 適宜

長尾智子
フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/) も好評。
公式サイトはこちら
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