味は世に連れ、世は味に連れ――。日々進化する日本の美食の最前線から、明日を読む。ベテランのフードジャーナリストが、いま注目するレストランを厳選して紹介する。第4回は五ツ星ホテルの王道フレンチ、「オークラ東京」の「ヌーヴェル・エポック」へ。

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

五ツ星ホテルの王道フレンチ「ヌーヴェル・エポック」であふれるホスピタリティを

画像: 特注で製作したワゴンには全25〜30種類のデザートがずらり。全種完食した方もいるとか。

特注で製作したワゴンには全25〜30種類のデザートがずらり。全種完食した方もいるとか。

 華やかな彩りのケーキやゼリー、香ばしく焼き込まれたマドレーヌからボンボンショコラまで。満艦飾のデザートワゴンが運ばれ、「お好きなものをお好きなだけどうぞ」。心躍る瞬間だ。

「オークラ東京」のメインダイニング「ヌーヴェル・エポック」。日本のホテルフレンチの象徴だった「ラ・ベル・エポック」が店名を変えて再スタートしたのは2019年。伝統を大切にしながら、料理の技法や素材使いを時代に即したものに進化させてきた。今秋、料理長は山下亮一に代わり、シェフパティシエを荒木貴志が担うことに。デザートワゴンもこの機に誕生。

画像: 前菜「みやぎサーモンのミキュイと柿のマリネ リコッタチーズに奈良漬のアクセント」。

前菜「みやぎサーモンのミキュイと柿のマリネ リコッタチーズに奈良漬のアクセント」。

 山下料理長は日本の食材を大切に、体に負担のないよう、料理を軽快に仕上げる。前菜のサーモンはミキュイ(半生)に。添えた柿はカルダモン入りのトニックウォーターでマリネ。しっとりなめらかな魚を、スパイスの爽やかな香りとトニックのほのかな苦味をまとった柿が引き立てる。荒木シェフパティシエは、食後のデザートも最後まで楽しんでいただけるようにと、動物性の油脂の使用を極力減らす。「香りは食べ手の記憶や感情を掘り起こしてくれるから」と、コーヒーゼリーにエチオピア産の浅煎りコーヒーを、マンゴープリンには甘酒をしのばせる。

画像: 主菜「備長炭で炙った金華豚と秋茄子のソース甘酸っぱい紅はるかとごぼう」。野菜のピュレをソースにして軽快な肉料理に。

主菜「備長炭で炙った金華豚と秋茄子のソース甘酸っぱい紅はるかとごぼう」。野菜のピュレをソースにして軽快な肉料理に。

画像: 五ツ星ホテルの王道フレンチ「ヌーヴェル・エポック」であふれるホスピタリティを

 陽の光がたっぷり入る和モダンの空間は、建築家の故・谷口吉生(よしお)の設計。オーセンティックな極上の心地よさと喜び。それは変わらないために変わり続ける真摯な姿勢と取り組み、その努力のたまものなのだ。

画像: 山下亮一料理長(左)は和の食材にも関心が高い。荒木貴志シェフパティシエは料理人の経験も豊富で、料理に共鳴するデザート作りの達人。

山下亮一料理長(左)は和の食材にも関心が高い。荒木貴志シェフパティシエは料理人の経験も豊富で、料理に共鳴するデザート作りの達人。

ヌーヴェル・エポック
住所:東京都港区虎ノ門2 の10の4  オークラ東京 オークラ ヘリテージウイング5F
TEL.03-3505-6073
デザートワゴンランチ(平日限定)¥18,000 前日までの要予約
公式サイト

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