伝説的なアンティークディーラー、イヴ・ガストゥ。生涯を通じて世界各地を旅した彼は、稀代のコレクターでもあった。このたび、ヴァン クリーフ& アーペルがサポートするジュエリーと宝飾芸術の学校「レコール」によって、彼の蒐集した男性用のリング400点が、六本木の21_21 DESIGN SITEギャラリー3に展示される。あたかもガストゥの“驚異の部屋”のような圧巻のコレクションより、古代から現代の作品まで、見ごたえのあるリングが時空を超えて一堂に会す

BY T JAPAN

 古代メソポタミアやエジプト、中世、ルネサンスの権力者たちから1970年代のアメリカのバイカー、そして現在に至るまで、男性たちは指輪を身に着けてきた。あるときは力の象徴として、あるいは愛の証として、芸術の源泉としてー-。時の重なりと物語を宿すメンズ リングを、イヴ・ガストゥは長年にわたり探し求めてきた。ガストゥは、パイオニアにしてレジェンドと称されるアンティークディーラーだ。1980年代半ば、パリのボナパルト通りに彼が開いたギャラリーは当時、スキャンダルを巻き起こすほどエッジィで挑発的でもあったが、今では街のアイコニックな存在となっている。40年以上にわたり美術市場で重要な役割を果たしてきたガストゥはディーラーとしてその名を広く知られていたが、実は、世界のあちらこちらを旅しては作品の蒐集に情熱を注ぎ続けたトレジャーハンターでもあった。彼のコレクションは、2018年にパリの「レコール ジュエリーと宝飾の学校」で展覧会が催されるまでは、その存在を秘されてきた。このたび、前例のないコレクションが、東京と香港に巡回する。

画像: 7世紀から18世紀末まで都市国家・ヴェネツィア共和国の権力の最高峰であった元首(ドージェ)。ドージェが身に着けていたリングは、ベゼルを開くと封蝋を入れておく空洞があり、手紙を封印するシーリングスタンプとして使用することも可能。この空洞は、毒を隠し持つのにも用いられたという。カーネリアンに施された楕円のインタリオ(沈み彫り)には、葉とドージェの紋章を象ったモチーフがデザインされ、まさに権力の象徴を示している。このリングは、強大な権力の象徴でもあるルネサンス期のオリジナルをモデルとして、19世紀に作られたもの

7世紀から18世紀末まで都市国家・ヴェネツィア共和国の権力の最高峰であった元首(ドージェ)。ドージェが身に着けていたリングは、ベゼルを開くと封蝋を入れておく空洞があり、手紙を封印するシーリングスタンプとして使用することも可能。この空洞は、毒を隠し持つのにも用いられたという。カーネリアンに施された楕円のインタリオ(沈み彫り)には、葉とドージェの紋章を象ったモチーフがデザインされ、まさに権力の象徴を示している。このリングは、強大な権力の象徴でもあるルネサンス期のオリジナルをモデルとして、19世紀に作られたもの

 展示は、「歴史」「ゴシック」「キリスト教神秘主義」「ヴァニタス(空虚)」「幅広いコレクション」という5つのテーマで構成されている。『Bagues d‘homme(メンズ リング)』(Éditions Albin Michel)と題された本の内容を凝縮しており、それぞれが各章となって、一冊の小説を味わうようにコレクションを楽しめる仕立てだ。

 一つひとつのリングが、時代の背景や所有者、そして作り手の人生の物語を宿している。ガストゥは、ひとつのオブジェの誕生から現在に至るまでの諸相を通じて、歴史を発見することに喜びを見出していたという。鑑賞者は一方で、どのリングも、2020年に世を去ったガストゥの、子どもの誕生や愛の誓いをはじめ、情熱と愛に満ちた人生のひとひらを映し出していることに気づくであろう。

画像: 2点とも、亡くなった人を忍んで身に着ける哀悼の指輪で、18世紀後半から19世紀初頭のイギリスのもの。左は、オープンワークのゴールドにスカルを象るカメオが嵌められたリング。右のリングのベゼルには髪の毛があしらわれている。当時のイギリスでは、愛する人の死を悼み、その死を乗り越えるために、こうしたジュエリーが作られた。やがて“哀悼の指輪”はヨーロッパ大陸に広がり、故人の名が刻まれたり、時に遺髪や肖像画を入れたりして愛用された

2点とも、亡くなった人を忍んで身に着ける哀悼の指輪で、18世紀後半から19世紀初頭のイギリスのもの。左は、オープンワークのゴールドにスカルを象るカメオが嵌められたリング。右のリングのベゼルには髪の毛があしらわれている。当時のイギリスでは、愛する人の死を悼み、その死を乗り越えるために、こうしたジュエリーが作られた。やがて“哀悼の指輪”はヨーロッパ大陸に広がり、故人の名が刻まれたり、時に遺髪や肖像画を入れたりして愛用された

画像: オルゴールが組み込まれた非常に稀少なリングで、19世紀後半に制作されたもの。花モチーフに隠された歯車を回転させると音が鳴る仕組み。リングの肩の部分には男性と女性のカリアティード(人像柱)があしらわれている。オルゴールは18世紀後半、ジュネーブで発明された。当時、楽器を演奏できない人が音楽を聴くための唯一の手段であり、非常な人気を博した。1802年、スイス出身の時計職人、アイザック=ダニエル・ピゲが、オルゴールの装置をさまざまなジュエリーに取り入れた。ガストゥはさまざまな芸術家たちがつくる指輪にも関心を抱き、優れた審美眼をもって蒐集した PHOTOGRAPHS BY BENJAMIN CHELLY

オルゴールが組み込まれた非常に稀少なリングで、19世紀後半に制作されたもの。花モチーフに隠された歯車を回転させると音が鳴る仕組み。リングの肩の部分には男性と女性のカリアティード(人像柱)があしらわれている。オルゴールは18世紀後半、ジュネーブで発明された。当時、楽器を演奏できない人が音楽を聴くための唯一の手段であり、非常な人気を博した。1802年、スイス出身の時計職人、アイザック=ダニエル・ピゲが、オルゴールの装置をさまざまなジュエリーに取り入れた。ガストゥはさまざまな芸術家たちがつくる指輪にも関心を抱き、優れた審美眼をもって蒐集した
PHOTOGRAPHS BY BENJAMIN CHELLY

 小さな指輪が奏でる旋律やストーリーに耳を澄ますのは、心躍る体験だ。類い稀なコレクションのリングから想起されるのは、古今東西、人生の喜びや哀しみに、美の力を得て真摯に向き合おうとする、ひとの想いが紡ぐ物語である。同時に、エキシビションの通奏低音を成すのは、素晴らしいジュエリーが宿す文化的背景を読み解き、守り育み、次世代へ伝えようという志。百聞は一見に如かず。ぜひ会場を訪れ、琴線に響く“指輪物語”をお楽しみあれ。

エキシビション
『メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション』
会期:2022年1月14日(金)~3月13日(日) 会期中無休、予約不要
開館時間:10:00~19:00
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
問合せ:0120-50-2895 (レコール事務局)(平日11:00~19:00)
公式サイトはこちら

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