BY HARUMI KONO
ジャヌ東京が3月13日にオープンしてからおよそ1ヶ月半。毎日足繁く通うゲストもいるほどだ。東京で海外のラグジュアリーホテルの進出が進む中、異彩を放つジャヌ東京の人気の秘訣を総支配人 田中紀子氏へのインタビューを通して紐解く──。
ジャヌは世界のラグジュアリートラベラーを魅了するアマンの姉妹ブランド。両者の関係を例えると静と動。静かにプライベートな時を過ごすリゾートをコンセプトに掲げるアマンとは対照的に、躍動感に満ちた雰囲気で人やものとのつながりを通してラグジュアリーホスピタリティを提供している。
ここジャヌ東京は、122の客室、8つのレストラン&バー、ボクシングやスピニングバイクを含む5つのムーブメントスタジオ、スイミングプールなどを完備した総面積約4,000㎡の広さを誇るウェルネス&スパ施設を擁する。いずれの設備も都内最大級のレベルだ。このホテルで様々な国籍、異なるポジションに従事する総勢400名のスタッフを束ねる総支配人・田中紀子氏は新しいブランドを率いることにどのような思いがあったのだろうか。
「世界初となるジャヌを任されることに対して高揚する気持ちを強く感じました。まずジャヌというブランドを自分自身で解釈し、それをスタッフと共有しました。ただ、現実的には2022年の着任から開業までの期間が1年半ほどでしたので、時間との戦いでした。もちろん重圧も感じました」
開業準備からオープンまでの間、高揚感と迫り来る時間、理想と現実の狭間に身を置いた田中氏。ジャヌ東京が大切にしていることの一つに「つながり」があるが、スタッフ同士のつながりはジャヌというブランド醸成をしたことで一層強いものになった。
「開業にあたり、すでにこれまで何らかの形で関わりのあったスタッフが4割ほどいましたので、オペレーションを行う上で、どのようなつながりを持ちたいかを念頭に全員が意見を出し合い、サービスの方向性を定めてゆきました」
現在も毎日行われるミーティングでは、マネジメントレベルの人材の中から数人が交代で一つのテーマに対する意見を述べることで個々の考え方を確認している。
ホテル内の8つのレストラン&バーのうち、6つの店舗ではオープンキッチンを配したことでキッチンスタッフとゲストの距離を縮め、スタッフとゲストのつながり、ひいてはゲスト同士のつながりにも功を奏している。オープンキッチンは料理しているところを実際に見たい、躍動感溢れる雰囲気を感じたいという好奇心旺盛なゲストに好評だ。
これらレストラン&バーの総席数は600席。一人でも大人数でも、その日、その時の気分によりいずれかの店舗を利用することが可能で、選択肢の多さもジャヌ東京がアピールできる強みだ。「例えば、今日は『ジャヌ グリル』で肉料理を、明日は『ジャヌ メルカート』の屋外テラスで愛犬と一緒に食事を、というようにレストランをご利用いただけます。開業から1ヶ月経ちますが、この1ヶ月で25日間、毎日レストランに通って下さったお客様もいらっしゃいます」
なぜこれほどジャヌ東京はゲストを惹きつけるのか。ゲストとジャヌ東京のつながりが生まれる背景には麻布台ヒルズというコミュニティが深く関わっている。「麻布台ヒルズは30年もの歳月をかけて作られたものです。東京の街中、麻布台ヒルズというコミュニティで人と人とが行き交い、挨拶を交わし、つながってゆく。そこにジャヌ東京があります。ジャヌ東京が地域と共生することを大切にすることが、このコミュニティに不可欠であると感じていただけたのではないでしょうか。将来は同じ敷地内や近隣の学校に通う子供たちに、ホテルを身近に感じてもらえるような職業体験なども展開したいと考えています」
コミュニティを通して人との交流や文化が生まれる。ジャヌ東京はコミュニティと渾然一体となることで、ホテルという領域を超えてラグジュアリーなサードプレイスとして重要な存在となり得ている。普段は下から見上げることが多い東京タワーもジャヌ東京の客室からは正面に見える。当たり前のことだが新鮮だ。いつも見ている景色を違う角度で見ることで、新しい価値観を生み出しているのだ。
レストラン&バーのダイニング・エクスペリエンスが注目されるジャヌ東京で、ホテル滞在の楽しみについて田中氏は時間の大切さを語る。「多くのことを詰め込むのではなく、今日はこれを楽しもう、とひとつのことに時間をかけて過ごしてみて下さい。余白の時間を作るということでしょうか」
今後、サウジアラビア、モンテネグロ、トルコ、モルジブなど世界12箇所に展開するジャヌ。その指針となるジャヌ東京の将来を世界が注目する。「ジャヌ東京は誕生したばかりなので今後、様々なことが変化してゆく面もありますが、”ここに来ればきっと何か面白いものがある”、そして”新しいものに触れることができる”と感じていただけるホテルになるように、そして人と人とのつながりの強いホテルにしてゆきたいと思います」
世界で唯一、アマンとジャヌが存在する東京は日々、多種多様なカルチャーを生み出している。その東京の今を映すジャヌ東京で、魂(ジャヌ)に訴えかける時間を過ごしたい。
ジャヌ東京
住所:東京都港区麻布台1-2-2
TEL. 03-6731-2333
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TEL. 050-1809-5550 (9am-9pm)
メール:janutokyo.fbres@janu.com
髙野はるみ(こうの・はるみ)
株式会社クリル・プリヴェ代表
外資系航空会社、オークション会社、現代アートギャラリー勤務を経て現職。国内外のVIPに特化したプライベートコンシェルジュ業務を中心にホスピタリティコンサルティング業務も行う。世界のラグジュアリー・トラベル・コンソーシアム「Virtuoso (ヴァーチュオソ)」に加盟。得意分野はラグジュアリーホテル、現代アート、ワイン。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
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