2024年度「世界のベストホテル50」の第1位に選ばれたカペラ バンコクを擁するカペラ ホテルズ&リゾーツのブランド、パティーナホテルズ&リゾーツ。日本初上陸となる「パティーナ大阪」は、2021年オープンのモルディヴに続き「トランスフォーマティブ・ラグジュアリー」がコンセプト。パティーナ大阪の滞在で感じることができる「トランスフォーマティヴ(変容)」とはどんなものなのだろうか?

BY HARUMI KONO

画像: 大阪城と難波宮跡に隣接する「パティーナ大阪」は20階建てで、建物すべてがホテル。スイートルームを含む全221の客室、5つのレストラン&バー、リスニングルーム by OJAS、スパ&ウェルネス、ボールルームを備え、事前問合せが必要だがペット同伴の宿泊も可能

大阪城と難波宮跡に隣接する「パティーナ大阪」は20階建てで、建物すべてがホテル。スイートルームを含む全221の客室、5つのレストラン&バー、リスニングルーム by OJAS、スパ&ウェルネス、ボールルームを備え、事前問合せが必要だがペット同伴の宿泊も可能

 パティーナホテルズ&リゾーツは、シンガポールを拠点に世界中に展開するカペラホテルグループのブランド。同グループでは、2024年度の「世界のベストホテル50」において、カペラ バンコクが第1位に、カペラ シンガポールが第33位にランクイン。さらに、アメリカの「Travel + Leisure」誌による「ワールドベストアワード」で、2023年から2025年の3年連続でカペラホテルズ&リゾーツが最優秀ホテルブランド第1位に選出され、2026年には日本初となる「カペラ京都」の開業を控える、今勢いのあるホテルグループだ。そのカペラホテルグループが手がけるパティーナ大阪は、「トランスフォーマティブ・ラグジュアリー」をコンセプトに掲げ、5月1日にオープンした。

 トランスフォーマティブとは、時間の経過と共に美しく変容する様子。ロゴマークは蝶をモチーフにしており、青虫からサナギ、そして蝶へと変化する成長の過程を象徴し、ホテルの進化と変化への姿勢を表現している。またデザインにはPerspective(視点)、Place(場所)、Pace(ペース)、Patina Spirit(パティーナスピリット)を表す4つの「P」が組み込まれており、それぞれにホテルの理念が込められている。

画像: 自然素材でできたコースターとチャームのような木製のルームキー。4つのPを組み合わせたパティーナホテルズ&リゾーツのロゴがモチーフ PHOTOGRAPH BY HARUMI KONO

自然素材でできたコースターとチャームのような木製のルームキー。4つのPを組み合わせたパティーナホテルズ&リゾーツのロゴがモチーフ

PHOTOGRAPH BY HARUMI KONO

画像: パティーナ大阪 総支配人エレン・フランケ氏(Ellen Franke) ドイツ出身。欧米、中国、マレーシアのラグジュアリーホテルに勤務し、25年以上のキャリアを持つ。2018年、「ザ・リッツ・カールトン・ランカウイ」の総支配人に就任し、手腕を発揮。「当時のアジア圏では女性の活躍が少なかったので、マレーシアで総支配人の経験ができたことは大変貴重な経験でした」という。その後、カペラホテルへ移籍。2024年にパティーナ大阪の総支配人として大阪に拠点を移す。パティーナ大阪でパティーナ・エッセンシャリスト(パティーナでのスタッフの呼称)と共に、世界のラグジュアリートラベラーと向き合っている

パティーナ大阪 総支配人エレン・フランケ氏(Ellen Franke)

ドイツ出身。欧米、中国、マレーシアのラグジュアリーホテルに勤務し、25年以上のキャリアを持つ。2018年、「ザ・リッツ・カールトン・ランカウイ」の総支配人に就任し、手腕を発揮。「当時のアジア圏では女性の活躍が少なかったので、マレーシアで総支配人の経験ができたことは大変貴重な経験でした」という。その後、カペラホテルへ移籍。2024年にパティーナ大阪の総支配人として大阪に拠点を移す。パティーナ大阪でパティーナ・エッセンシャリスト(パティーナでのスタッフの呼称)と共に、世界のラグジュアリートラベラーと向き合っている

 大阪というデスティネーションの中の特別な目的地、「パティーナ大阪」。ここではそれぞれのペースで、新たな視点から自身と物事を見つめ、まだ見ぬ自分に出会い、ポジティブな変容を新たな発見を通して認識することが「トランスフォーマティブ・ラグジュアリー」だ。パティーナ大阪では、ウェルビーイング、ニュートリション(栄養)、カルチャーといった分野から、感情に響く新たな価値観をもたらす様々な体験プログラムを提供している。

画像: ホテルの4階ワンフロア全てを「パティーナ・ウェルネス」が占める。高気圧酸素&水素セラピー、クライオセラピー、遠赤外線サウナなど日本のホテルでは初となるヘルステック機器を完備

ホテルの4階ワンフロア全てを「パティーナ・ウェルネス」が占める。高気圧酸素&水素セラピー、クライオセラピー、遠赤外線サウナなど日本のホテルでは初となるヘルステック機器を完備

 ウェルビーイングでは単に疲れを癒すだけではなく、日本初となるヘルステック機器を使って積極的な健康促進をうながす。ニュートリション(栄養)では、日本の暦七十二候を基にしたシグネチャーレストラン「P72(ピーセブンティートゥー)」で旬の食材にフォーカスし、季節の味覚を味わうことに加え、フードロスの観点から発酵やピクルスなどの保存食作りのワークショップも開催されている。カルチャー面では館内のアートや建築について学ぶデザイン・イマージョンツアーが行われていて、総支配人エレン・フランケ氏自らが、作品や建築について解説する。また、世界のオーディオマニア垂涎のデヴォン・ターンブル(OJAS)氏が監修するスピーカーを完備した「リスニングリーム by OJAS」も設置されていて、至高の音楽空間に身をゆだねることができる。

画像: 20階のSONATA BAR & LOUNGE。日本製のヴィンテージスピーカーによるアートウォールが目を引く。DJテーブルではレジデントDJがアナログ盤から選曲し、音楽を通して人と人とを結びつける。SONATA BAR & LOUNGEとは別に「リスニングルーム by Ojas」があり、パティーナ・サウンド――音に対するパティーナのこだわりが伝わってくる

20階のSONATA BAR & LOUNGE。日本製のヴィンテージスピーカーによるアートウォールが目を引く。DJテーブルではレジデントDJがアナログ盤から選曲し、音楽を通して人と人とを結びつける。SONATA BAR & LOUNGEとは別に「リスニングルーム by Ojas」があり、パティーナ・サウンド――音に対するパティーナのこだわりが伝わってくる

 さらに、世界的アーティストであるVERDY氏とのパートナーシップが、パティーナ大阪のカルチャーシーンを一層盛り上げる。ストリートカルチャーに精通したVERDY氏とラグジュアリーとは一見相反するもののようだが、これについてフランケ氏はこう語る。「今はラグジュアリーのコンセプトが変わってきています。以前は物質的に恵まれていること、煌びやかなシャンデリアと磨かれた大理石の床といった、豪華な空間に身を置くことがラグジュアリーでした。今は品質(クオリティ)、空間(スペース・場の雰囲気や人との距離感)、そしてそこで過ごす上質な時間、その三つがラグジュアリーであると私は考えています。品質の面では、VERDYが手がけるプロダクトはクオリティが高く、彼が得意とするストリートカルチャーとパティーナ大阪のラグジュアリーな空間とが見事に融合します。そして物質的な観点だけではなく、生まれ育った大阪を心から愛するVERDYの人間味溢れる魅力も、パティーナ大阪と精神的に深い部分で共鳴するのです」。

画像: 1階にあるシグネチャーレストラン「P72」の天井に飾られている作品は「ルーツ(根)」をテーマにしたもので、ホテルの1階で根を張るという思いと、自然とのつながりや持続可能性への取り組みを象徴している。テラス席では愛犬と共に食事やお茶を楽しむことができる PHOTOGRAPH BY GEORG ROSKE

1階にあるシグネチャーレストラン「P72」の天井に飾られている作品は「ルーツ(根)」をテーマにしたもので、ホテルの1階で根を張るという思いと、自然とのつながりや持続可能性への取り組みを象徴している。テラス席では愛犬と共に食事やお茶を楽しむことができる

PHOTOGRAPH BY GEORG ROSKE

 パティーナ大阪は難波宮跡と大阪城に囲まれた歴史を紡いできた場所に建つ。ホテル内には水、土、石、銅の素材が多く使われており、難波宮跡公園の自然、水と土、大阪城の石や銅でできた屋根との繋がりが意識されている。20階のレセプションには土(泥)で作られたアート作品が、レストラン階の19階には大阪城の石垣と同じ産地の石のインスタレーションが飾られているが、これはどちらもゲストが“必ず目にする場所”だからだ。また、シグニチャーレストラン「P72」の天井に飾られた木製の作品は地元の廃材木を用い、「永遠の自然美」をテーマに制作された全長52メートルのサステナブルアート。難波宮の木の根と土に着想を得て、天井からダイナミックに吊り下げられている。

 客室のクローゼットに架けられた布製のハンガー、ドライヤーやヨガマットを入れたグリーングレーの袋も廃棄された布から作られている。袋はアップサイクルには見えない高級感があり、こういったところも含め、サステナビリティとラグジュアリーの見事なバランスが保たれている。

画像: ラグジュアリーホテルでは珍しいバスク料理のレストラン「IÑAKI(イナキ)」。写真は12名まで利用可能なプライベートルーム。木目の天井からコパー色のドアの取手にいたるまで落ち着いた雰囲気が漂う。宿泊ゲストはここで、大阪城と大阪市内を見ながら朝食がいただける

ラグジュアリーホテルでは珍しいバスク料理のレストラン「IÑAKI(イナキ)」。写真は12名まで利用可能なプライベートルーム。木目の天井からコパー色のドアの取手にいたるまで落ち着いた雰囲気が漂う。宿泊ゲストはここで、大阪城と大阪市内を見ながら朝食がいただける

画像: 部屋のタイプに合わせてしつらえた畳のスペース。こちらはパティーナスイート

部屋のタイプに合わせてしつらえた畳のスペース。こちらはパティーナスイート

 パティーナ大阪には日本の生活文化を宿泊のゲストが体験できる場所がある。それはスイートルームを含む全221室の客室に設けられた畳のスペースだ。「寝そべったり、ヨガをしたり、お茶を飲んだり、子供たちが遊んだり。自由に使ってほしいですね」とフランケ氏。夕刻のターンダウンサービス後のベッドサイドには「快適な室温に設定する」、「夜遅くのカフェイン摂取を控える」と書かれた小さなメモがそっと置かれている。知っているつもりでいても、このメモを読むと改めて環境や身体について考え、新たな気づきを得ることができる。

画像: ゲストフロア最上階にあるパティーナスイートのリビングルーム。備えられた高品質のスピーカーとレコードプレーヤーで貴重なレコードコレクションから好みの曲を鑑賞したい

ゲストフロア最上階にあるパティーナスイートのリビングルーム。備えられた高品質のスピーカーとレコードプレーヤーで貴重なレコードコレクションから好みの曲を鑑賞したい

画像: こちらはデラックススイート。客室は落ち着いた木目調が特徴。ベッドボードには日本らしさを感じる和紙のアートが。部屋の写真右側は畳のスペースになっている

こちらはデラックススイート。客室は落ち着いた木目調が特徴。ベッドボードには日本らしさを感じる和紙のアートが。部屋の写真右側は畳のスペースになっている

 パティーナ大阪に滞在する前と後で自分に起こった変化や気付き。それらがどのように進化していくのか。季節ごと、一年ごとなど、それぞれのペースで、定期的にパティーナ大阪で自分を見つめるパーペチュアル・ジャーニー(終わりなき旅)を続けてみてほしい。

画像: 最上階20階のレセプションに飾られた「空と土」をテーマにしたハタノワタル氏の作品。パティーナ大阪の敷地から採取した土と、和紙、こんにゃく、柿などの植物由来の素材を用いて制作されている。施設内のアート作品からもサステナビリティと土地への敬意を感じる PHOTOGRAPHS: COURTESY OF PATINA OSAKA

最上階20階のレセプションに飾られた「空と土」をテーマにしたハタノワタル氏の作品。パティーナ大阪の敷地から採取した土と、和紙、こんにゃく、柿などの植物由来の素材を用いて制作されている。施設内のアート作品からもサステナビリティと土地への敬意を感じる

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF PATINA OSAKA

パティーナ大阪
住所:大阪府大阪市中央区馬場町3-91
公式サイトはこちら

髙野はるみ(こうの・はるみ)
株式会社クリル・プリヴェ代表
外資系航空会社、オークション会社、現代アートギャラリー勤務を経て現職。国内外のVIPに特化したプライベートコンシェルジュ業務を中心にホスピタリティコンサルティング業務も行う。世界のラグジュアリー・トラベル・コンソーシアム「Virtuoso (ヴァーチュオソ)」に加盟。得意分野はラグジュアリーホテル、現代アート、ワイン。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。
公式サイトはこちら

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