時代を超えたもの。独自の表現であること。そして、常に革命的であること。石岡瑛子はそれを自分に課して、闘い、美を創造し、勝利した。それぞれの角度から彼女を見た3人が語る

BY YOSHIO SUZUKI, EDITED BY JUN ISHIDA

 そして、今回の東京都現代美術館での展覧会。担当した学芸員の藪前知子に、今なぜ、石岡瑛子なのか、から話を聞いてみる。
「石岡さんの活動は実に多岐にわたり、それぞれ本当に重要な仕事をされているんです。既存の文化の枠組みではなかなか捉えづらい存在ですが、石岡さんという存在を取り上げることで、それぞれのジャンルの中にある知られざるネットワークのようなものが見えてくるのではないか、そこに興味をもちました。そして、これほど素晴らしい仕事をされた方なのに、特に日本ではその総体が語られてこなかったこと。若い世代の人たちや、美術関係の人たちもほとんど知らなかったりするという状況を見ていて、石岡さんという存在をきちんと紹介することが必要だと思いました」

画像: 石岡瑛子 映画『ミシマ・ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(ポール・シュレイダー監督、1985年)プロダクションデザイン MISHIMA © ZOETROPE CORP. 2000. ALL RIGHTS RESERVED. / © SUKITA

石岡瑛子 映画『ミシマ・ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(ポール・シュレイダー監督、1985年)プロダクションデザイン
MISHIMA © ZOETROPE CORP. 2000. ALL RIGHTS RESERVED. / © SUKITA

 石岡と巨匠たちとのコラボレーションも詳細に語られるのだろう。
「日本の仕事をともにしたパルコの増田通二さんや角川春樹さんもいわば表現者なんですね。当時から石岡さんは、デザインというのは社会に対するメッセージなのだという思いを強くもっていました。自分と一緒に新しい価値観を作ろうという経営者なり、クライアントじゃないと仕事はしたくないとはっきり書いている。その後、コッポラをはじめ、いろいろなクリエイターと出会っていきますが、石岡さんは、『私』という人間を求めてくれる、ときにはタブーに挑戦するような、勇気をもった表現者であることを相手に求めたのです」

画像: 石岡瑛子 映画『ドラキュラ』(フランシス・F・コッポラ監督、1992年)衣装デザイン © DAVID SEIDNER / INTERNATIONAL CENTER OF PHOTOGRAPHY

石岡瑛子 映画『ドラキュラ』(フランシス・F・コッポラ監督、1992年)衣装デザイン
© DAVID SEIDNER / INTERNATIONAL CENTER OF PHOTOGRAPHY

 タブーに踏み込む? 人を巻き込む?
「タブーがあっても挑戦できる勇気。石岡さんは常に、今まで見たことのない表現しか作りたくないと言っています。だから、自分と一緒に挑戦できる、そういう熱意のある人としかやらないのだと。NIKEのコマーシャルで世界的なCMディレクターとして人気のあるターセム・シンも、映画を撮るなら石岡さんと、と考えていました。彼は学生時代から『Eiko by Eiko』(『石岡瑛子風姿花伝』英語版)をバイブルにしていたと言います。石岡さんにしてみたら、全然知らない監督だったけれど、そこまで熱意があるのならと一緒にやってみた。そこまで自分に対してすべてを捧げてくれるような、そういう表現者ならと。石岡さんは常に彼女なりの挑戦をクリアに設定し、それに懸けていました。確固たる強い核をもち、その核と相手の核のぶつかり合いによって新しい化学反応を起こす、そういうイメージで毎回仕事をされていたのだと思います」

画像: 石岡瑛子 映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)衣装デザイン ターセム・シンの2作目。石岡のパートナー、ニコ・ソウルタナキスが脚本で参加 © 2006 GOOGLY FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

石岡瑛子 映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)衣装デザイン
ターセム・シンの2作目。石岡のパートナー、ニコ・ソウルタナキスが脚本で参加
© 2006 GOOGLY FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

画像: 石岡瑛子『北京夏季オリンピック開会式』(チャン・イーモウ演出、2008年)衣装デザイン © 2008 / COMITÉ INTERNATIONAL OLYMPIQUE(CIO) / HUET, JOHN

石岡瑛子『北京夏季オリンピック開会式』(チャン・イーモウ演出、2008年)衣装デザイン
© 2008 / COMITÉ INTERNATIONAL OLYMPIQUE(CIO) / HUET, JOHN

 振り返れば、あまりにも大きい石岡瑛子の功績。展覧会では何が見えるのか。最大限に発揮させた才能か。成し遂げた仕事とそこに至るまでの信念と奮闘か、あるいは逡巡か。彼女の血と汗と涙。そのすべてを凝視したい。

『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』
会期:2020年11月14日(土)~2021年2月14日(日)
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
開館時間:10:00~18:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(2021年1月11日は開館)、12月28日〜2021年1月1日、1月12日
入場料:一般¥1,800、大学生・専門学校生・65歳以上¥1,300、中高生¥700、小学生以下無料
電話:03(5777)8600(ハローダイヤル)
公式サイト
※ 新型コロナウイルスの感染・拡散防止のための入場制限等は、公式サイトをご確認ください

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