BY KAORU SAITO, PHOTOGRAPHS BY SAKI OMI(MODELS), SATOSHI YAMAGUCHI(OBJECTS), MAKEUP BY MICHIRU, HAIR BY KOICHI NISHIMURA, STYLED BY YUKARI KOMAKI, MODEL BY EIMI KURODA, SAKI NAKASHIMA, EDITED BY TERUNO TAIRA
「20歳の顔は自然からの贈り物。50歳の顔はあなたの功績」ココ・シャネルの言葉である。世界最強のキャリアウーマンの言葉には、時を超える説得力がある。それは、男性よりも女性の成功者のほうが、むしろ顔が強くなっていく傾向までを示唆していた。鏡を見る回数も、顔への執着の度合いもまるで違う。その上に、メイクがのっていく。大人のメイクほど自信や主張をのせていくから、何かを成し遂げた女性の顔が強くなるのは、もう自然の摂理と言ってもよかった。
一方リンカーンの「男は40歳を過ぎたら、自分の顔に責任を持て」は、“顔が好きでないこと”を理由に、ある人物の登用を拒んだときの言葉。行いや人格が顔に映し出されるのも自明の理とすれば、男社会で闘い勝ち抜いていく女性の顔が、柔和なわけがない。意志の強さ、負けん気の強さ、すべて威圧感に置き換わる。こればかりは永遠の法則に思えていた。

「眉やまつ毛などに、締め色の黒を使わない。それだけでまなざしの印象が穏やかになります」とメイクアップアーティストのMICHIRUさん。眉はブラウンやアッシュなどでトーンアップ、マスカラやアイライナーはボルドーやネイビー、カーキなどのニュアンスカラーを用いてみる。“締める”というより、ソフトに“なじませる”アイカラーにはシルバーを選び、アイラインは上まぶたのキワにはカーキ、下まぶたにはピンクを使用。調和のとれた色使いが、知性と品性を感じさせる。「肌が生命力を感じさせるツヤをたたえていることも重要です」。ファンデーションはリキッドタイプを。そのツヤを消さないよう、チークカラーも粉タイプではなく、ウォータリーなリキッドタイプを選ぶ。リップにはスキントーンになじむベージュを。健やかなツヤ肌に柔らかなまなざしは、向き合う人をホッとさせる、やさしい顔づくりの原則だ
ワントーンの装いに、バロックパールのオーガニックな形と光沢が華やかさを添える
カーディガン(参考商品)、中に着たドレス¥547,800/ブルネロ クチネリ
ブルネロ クチネリジャパン
TEL. 03(5276)8300
バロックパールの白蝶ネックレス¥297,000、同イヤリング¥170,500/マダマ
マダマ 伊勢丹 新宿店
TEL. 03(3226)8889
バングル¥120,000/ブチェラッティ
TEL. 03(4461)8330
ところが昨今ふと見回せば、リーダーたる女性たちの顔が明らかに変化しつつある。企業のトップや成功者の顔が何だか柔らかく穏やかなのだ。いったい何が起こったのか? 象徴的なのが、アメリカの副大統領カマラ・ハリス氏。これほど顔に険のない女性政治家はいなかった。また香港民主化の若きリーダー周庭(アグネス・チョウ)氏は、厳しい状況の中にあっても表情と物腰は柔和であった。本誌掲載の『日本ワインに革新をもたらす女性たち』に登場する4人のリーダーたちの穏やかなたたずまいを見ても、その流れが裏付けられているように思える。
「やさしい顔」演出の要、肌&眉づくりに役立つアイテムを厳選

(左より)<P1,P2のメイクに共通で使用>
カネボウ スマイル パフォーマー<33ml× 4枚>¥6,050
ベースメイクの前にシートマスクで潤いをたっぷりチャージ。肌全体を下から持ち上げる2本のバンドつきシートで頰と口角を笑顔の位置へ
カネボウインターナショナルDiv. フリーダイヤル:0120-518-520
インテンシブ スキン セラム ファンデーション SPF40(PA++++) 全17色<30ml>¥8,140
細胞内のエネルギー生成を高める美容成分、冬虫夏草を従来品の10倍配合。生き生きとした印象に欠かせないツヤ肌に
ボビイ ブラウン ナビダイヤル:0570-003-770
アイブロウマスカラ マイクロ Almond ¥3,080
うぶ毛までキャッチする小ぶりのブラシ。赤みブラウンで眉毛をトーンアップ
アイブロウリキッド マイクロ Almond ¥2,750
極細の筆が毛の一本一本を再現。直線ぎみの太眉に整えるには眉の下側を描き足して
プレスド デュオ アイブロウ Almond Duo ¥2,750
自然になじむ濃淡2 色のパウダータイプ
ADDICTION BEAUTY フリーダイヤル:0120-586-683
アートエクスプレッショニストマスカラ X02 ¥4,400(限定発売)
日本人の黒いまつ毛に軽さをもたらすカラーマスカラは、若い世代だけでなく、軽やかさが欲しい大人の目もとにも。まずは目尻側だけに使うことから始めて
THREE フリーダイヤル:0120-898-003
大人の肌も目もともくすませない、優秀ニュアンスカラーを厳選

(左より)<P1のメイクで使用>
ルージュ ディオール バーム 200 ¥4,950
見た目は濃色でありつつ、唇にのせると驚くほどナチュラル。95%自然由来の色つきのリップバーム。マットな質感でありながら透ける発色が新しい。肌なじみ抜群のベージュブラウンが肌の透明感も引き立てて
パルファン・クリスチャン・ディオール TEL.03(3239)0618
レ ベージュ オー ドゥ ブラッシュ インテンスコーラル ¥7,260
ウォーターベースのチークカラーは指先でなじませるとバブルが弾けて顔料が均一に広がる設計。ファンデーションのツヤを消さずに自然な紅潮感が得られる
スティロ ユー ウォータープルーフ N 56 ¥3,520
涙、湿気、皮脂に強いウォータープルーフのアイライナー。メタリックなカーキでアイメイクがぐっと今っぽく変化
シャネル カスタマーケア フリーダイヤル:0120-525-519
MiMCミネラルリキッドリーシャドー 07 ¥3,630
みずみずしくフィットして濡れ感ある輝きを放つシルバーグレー。裏色として仕込まれたラベンダーの補正効果でくすみがちな大人の目もとをトーンアップする効果がうれしい
MIMC TEL. 03(6455)5165
メズモライジング パフォーマンス アイライナーペンシル TS01 ¥3,300(限定発売)
ホワイティなピンクで白目を澄んだ印象に。柔らかな芯で滑らかに線が描ける
THREE フリーダイヤル:0120-898-003
こうなる要因には、3つのベクトルが見て取れる。ひとつは、やはり社会における女性の進出。ジェンダーフリーの激流に乗って、ことさらに女性を強調しなくていい風潮が生まれ、顔だちのこわばりも取れつつある。これまでの女性政治家は定番ピンクのスーツで男社会の求めに応じながらも、他方で男に勝つため、闘う顔にならざるを得なかった。その矛盾自体が、社会の未熟さの表れだったが、露骨な性差の呪縛がとけつつある今、ピンクも怖い顔も要らなくなるはずなのだ。
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