誰もがその名を知るヴァイオリンの傑作「ストラディヴァリウス」。現存する約600挺のうち21挺を集めてその奥深い魅力を多角的に“体験”する、かつてないイベントが開催される

BY SHOUKO FUJISAKI, PHOTOGRAPHS BY HIROMI NAGATOMO

 さらに画期的な試みは、無響室環境でとったサウンドデータを元に、科学の側面からストラディヴァリウスの実力を検証する展示だ。かつて王侯貴族のサロンで奏でられた楽器が、音楽の大衆化とともに巨大化したホールの隅々にまでその音を届ける性能を持ちえているのはなぜなのか。300年も前に“完璧な造形”によって至高のサウンドデザインを実現したストラディヴァリウスの秘密を、目に見える形で示すという。

画像: クレモナで活躍中の楽器職人、フランチェスコ・トト氏によるヴァイオリン製作風景 COURTESY OF TOKYO STRADIVARIUS FESTIVAL 2018

クレモナで活躍中の楽器職人、フランチェスコ・トト氏によるヴァイオリン製作風景
COURTESY OF TOKYO STRADIVARIUS FESTIVAL 2018

 また、見どころのひとつはアントニオ・ストラディヴァリの肖像画。広く流布しているのは後世に描かれたかっぷくのいい文学者然とした姿だが、今回はアントニオの実像により近いとされる肖像画が登場。痩身で背が高く、冬場は毛糸の帽子をかぶって製作に没頭したという巨匠の日常が垣間見える。アンドレア・アマティの孫ニコロに師事した時代、自分らしさを追求した挑戦期、そして黄金期などに分け、稀代のヴァイオリン作家の生涯を掘り下げる。そのほか、前述したヴァイオリンの始祖、アンドレア・アマティの手による作品や、クレモナから招いた職人によるヴァイオリンの製作デモンストレーションを間近に見ることができる。

画像: アントニオ・ストラディヴァリの実像に近いとされる絵 Alessandro Rinaldi “Stradivarius in his atelier” 1886 COURTESY OF MUSEO CIVICO DI CREMONA

アントニオ・ストラディヴァリの実像に近いとされる絵
Alessandro Rinaldi “Stradivarius in his atelier” 1886
COURTESY OF MUSEO CIVICO DI CREMONA

 フェスティバルに協力する東京藝大の澤和樹学長は、自らもヴァイオリニストとして20挺以上のストラディヴァリウスを弾いた経験をもつ。「例えるなら、女王さま。見た目にも音色にも近寄りがたいような高貴さがある。自分が弾いている音というよりも、楽器そのものの音が前面にくる」と語る。ちなみに、「アマティは高貴なお嬢さま。私がふだん使っているグァルネリは、自分をもっと出せる、愛する恋女房」だとか。

 クラシック音楽の歴史を形作ってきた“女王”ストラディヴァリウスの響き、あなたの耳にはどう届くだろうか。

「東京ストラディヴァリウス フェスティバル2018」

◆ストラディヴァリウス ソロイスツ コンサート
出演:三浦文彰(ヴァイオリン)、宮田大(チェロ)、ゲルゲイ・マダラシュ(指揮)、東京藝術大学・英国王立音楽院 日英名門音楽大学ジョイントオーケストラ
日時:2018年7月1日(日)開演14:00
会場:サントリーホール 大ホール
住所:東京都港区赤坂1-13-1
チケット:S席¥7,000,A席¥5,000、B席¥3,500
電話: 03(3264)0244(株式会社1002<イチマルマルニ>)

◆徳永二男 プレミアム・リサイタル
出演:徳永二男(ヴァイオリン)、坂野伊都子(ピアノ)
日時:2018年8月17日(金)開演19:00
会場:ヤマハホール
住所:東京都中央区銀座7-9-14
チケット:全席指定¥6,000
電話: 03(3264)0244(株式会社1002<イチマルマルニ>)

◆マキシム・ヴェンゲーロフ ストラディヴァリウス・リサイタル2018
出演:マキシム・ヴェンゲーロフ(ヴァイオリン)、ルスタム・サイトコーロフ(ピアノ)
日時:2018年10月1日(月)開演19:00
会場:サントリーホール 大ホール
住所:東京都港区赤坂1-13-1
チケット:SS席¥23,000,S席¥20,000、A席¥18,000、B席¥15,000、C席¥10,000、D席(学生)¥5,000
TEL. 03(3461)0501(ネオクラシカ)

◆ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展
会期:2018年10月9日(火)~15日(月)
会場:六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリー
詳細は公式サイトで順次発表

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