スペイン、バスク地方の天才料理人、エネコ・アチャ・アスルメンディが主演するドキュメンタリー映画が公開中だ。「すきやばし次郎」の主人、小野二郎さんを訪ねる旅を追った映画について、そして自らの料理について聞いた

BY MIKA KITAMURA

 ミシュラン・三ツ星レストランのオーナーシェフ、エネコ・アチャ・アスルメンディ。2012年、当時スペイン史上最年少の35歳で三ツ星を獲得。現在、6年連続で三ツ星を保持している天才料理人として、世界の注目を集めている。

 エネコシェフが料理の真髄を極めるためにたどり着いたのが「和食」の世界。彼が日本を旅し、有名鮨店や日本料理店などを訪れるようすを追いながら、世界最高峰のレストランの裏側に迫ったドキュメンタリー映画『世界が愛した料理人』が現在公開中だ。映画の公開に合わせて来日した彼に、料理哲学と映画の見どころを尋ねた。

画像: 自らの名を冠したスペイン、バスク地方のレストラン「アスルメンディ」で(左がエネコ・アチャ)。伝統的なバスク料理をベースにした独創的な料理を求めて、世界から多くの人が訪れる

自らの名を冠したスペイン、バスク地方のレストラン「アスルメンディ」で(左がエネコ・アチャ)。伝統的なバスク料理をベースにした独創的な料理を求めて、世界から多くの人が訪れる

 レストラン「アスルメンディ」は、スペイン・バスク地方の西の中心・ビルバオ郊外にある。海外で修業して独立するシェフが多い中、エネコシェフは生まれ故郷であるバスク地方のみで修業し、27歳で独立。バスクの料理人であることにプライドと自信を持ち続けている。

 彼のルーツであるバスク地方は、ピレネー山脈をはさんだフランス南西部からスペイン北東部一帯を指す。9世紀にはバスク国家が誕生し、17世紀になってフランスとスペインに分割されながらも、独自の言語と文化を保ち続けてきた。特にスペイン・バスクは美食エリアとして有名だ。四国ほどの狭いエリアに、ミシュラン・ガイドの三ツ星レストランが現在、4店ある。

画像: 六本木「エネコ東京」の「オマール海老 コーヒー風味バター」。海老をソテーし、エネコ風アメリケーヌソース(海老のソース)を合わせ、甲殻類の甘みを凝縮させたひと皿。オブラートにアメリケーヌソースを塗ってさっと揚げて、パリパリッとした軽い食感をプラス。泡のソースはエスプレッソの香りのバターソース PHOTOGRAPH BY YASUYUKI TAKAGI

六本木「エネコ東京」の「オマール海老 コーヒー風味バター」。海老をソテーし、エネコ風アメリケーヌソース(海老のソース)を合わせ、甲殻類の甘みを凝縮させたひと皿。オブラートにアメリケーヌソースを塗ってさっと揚げて、パリパリッとした軽い食感をプラス。泡のソースはエスプレッソの香りのバターソース
PHOTOGRAPH BY YASUYUKI TAKAGI

 バスク人と土地の料理とはどんなものか。エネコ・アチャに尋ねた。

「海と山のあるバスクは、自然に恵まれた美しいところです。バスク人は働き者で真面目。初めて会うバスク人はシャイに見えるかもしれませんが、一緒に食卓を囲めば陽気な人々だとわかってもらえます。バスク人はお昼ごはんを食べながら晩ご飯のメニューを相談する、という笑い話がありますが、食べることに情熱を傾ける人が多い。食いしん坊ですね! 私もそうです(笑)。私の遺伝子には祖母と母の味が組み込まれています。料理でいちばん大切なことは『オリジナリティ』。それは料理人の人柄や、育った土地の味から生まれてくるもの。私にとっては、祖母や母の味が料理の源です」

画像: 「アスルメンディ」外観。豊かな緑に包まれ、テーブル席に座ると、なだらかな丘が続く田園風景に溶け込むよう

「アスルメンディ」外観。豊かな緑に包まれ、テーブル席に座ると、なだらかな丘が続く田園風景に溶け込むよう

 バスクには四季があり、それぞれの季節、豊かな食材が食卓を彩る。日本ととても似ているとエネコ・アチャは言う。「バスク料理は一見地味に見えるかもしれませんが、とても力強く、個性的です。日本料理もそう。シンプルですが、食材の味が際立っています」

 映画の中で、彼は料理に込めるべき「Soul(魂)」を追い求めて日本へ。そして銀座の名店「すきやばし次郎」を訪ねた。「私にとって旅は学びの場。今回訪れた日本は発見だらけでした。『すきやばし次郎』で見た鮨は、シンプルな姿形ですが、そこに至るまでの下ごしらえはとても複雑で手間がかかったものでした。小野二郎さんと私は、キャリアも料理分野もまったく異なりますが、料理へのアプローチはとても似ていると感じました」

 

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